2006年に来日、日本で最初に食べたラーメンは1杯180円。「アメリカで食べていたインスタントラーメンのようで、美味しくなかった」と、都内で英語講師を務めるブライアン・マクダクストン氏(37)は笑う。
来日してしばらくの間は、寿司や天ぷら、お好み焼きなどに魅了され、ラーメンには特に興味がわかなかった。ところが2008年、池袋のラーメン店で濃厚な豚骨ラーメンの美味しさに衝撃を受けた。以来、週に5~10店を訪れている。
「ラーメンのすごいところはスープ。食べた後に口の中にウワーッと広がるスープの風味が素晴らしい」(マクダクストン氏)
これまで制覇した店は1000以上。英語で発信するブログ「ラーメンアドベンチャーズ」では700店以上を紹介する。読者は海外と在日の米国人が大半だが、日本人のラーメン通からも評価が高い。コメントでは「白湯」「無化調」「背脂」といった専門用語を使い、多様なラーメンの個性を見事に表現している。
「日本には美味しい食べ物がたくさんあるけど、ラーメンというジャンルが一番面白い。バリエーションがあって、自由な発想でニューウェーブが次々と登場するから奥が深いです」(同前)
写真で紹介しているのは、マクダクストン氏が注目するラーメン店のひとつ「Japanese Soba Noodles 蔦」(東京・巣鴨)の「味玉醤油そば」だ。マクダクストン氏はその魅力を、次のように解説する。
「タレは3種の醤油から作られ、メインの醤油は香りのよい小豆島産。ほかにも低温殺菌されていない茨城産と和歌山産の生醤油が使われている。スープにはイタリア産の黒トリュフオイルも加えられていて、その味わいは衝撃的。わずかに甘みが感じられる。このラーメンはあっさりだけど味わいが深く、醤油ラーメンの完成形だ」(同前)
つけ麺やまぜそばも大好きで、地方出張でもラーメンを食べ歩く。マクダクストン氏のラーメン行脚はまだまだ続くのだ。
撮影■小松潤
※週刊ポスト2015年9月11日号