6日の朝刊時点では生産者の声にまったく触れていなかった産経新聞が、翌日刊で「関税は致し方ないが、『食の安心・安全』や『投資家と国家の紛争解決(ISDS)条項』など、非関税障壁の部分の具体的な内容が分からず、脅威を感じる」という神奈川県の畜産農家の声を紹介していた。

 例えば「食の安心・安全」については、各国間で異なる添加物や残留農薬の基準をどうするか、自給率についてはどう考えるのか、いまだ十分な検証・説明はされていない(ちなみに「ISDS条項」とは、自由貿易協定を結んだ国家間で不当に外国の企業に対する差別が行われた場合、企業が他国の政府に賠償請求の訴えが起こせるよう、定めた条項を指す)。

 TPP全31の分野のなかでも「食」にまつわる分野は消費者にとっても身近な話だ。衆目は集まる。そのなかで何がどうなるか、具体化された検討項目や課題について、建設的な議論を積み重ねる。国民の合意形成はその先にある。

 中国の『史記』には「忠言耳に逆らう」という言葉がある。「忠告の言葉は、とかく聞く人の感情を害して受け入れられにくい」(大辞林)という意味だ。だが、アメリカでケネディ及びジョンソン政権時代に国務長官を務めたディーン・ラスクはこんな言葉を残しているという。

「人を説得する最良の方法のひとつは、自分の耳を使うこと――つまり、相手の言うことに耳を傾けるのだ」と。

 誰が誰の話を聞き、誰を説得するのか。TPPはここからが本番だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン