クリスチャンである川崎氏の現在の日課は、書斎でラテン語の聖書を静かに読むことだという。キリスト教に対する厚い信仰心と健康長寿は無縁ではないと語る。
「信仰心を持つことで平和やゆとりが生まれました。大病を患った頃は100歳まで生きられるなんて思いもしませんでしたが、こうして元気で研究にも邁進できている。『生きている』のではなく『生かされている』と強く思うようになりました。
生かされる命である以上、自分の使命は何か常に考えます。年老いたからといってサボったり、健康これ幸いとただ漫然と日々を過ごしたりしたくはありません」
前述した新著は『日本史』の要点をまとめた1部と、現代の日本社会に対して感じたことを綴った2部で構成されている。
「フロイスの眼を借りて見た戦国期の日本は、殺伐としており殺生も繰り返され、さらにいえば江戸時代までキリスト教徒は迫害され惨殺されてきた。信仰の自由があり、戦争のない日本がどれだけ幸せなのかを我々日本人に伝えたいという思いがありました」
100歳の人生は、研究を「好き放題」してきた人生。そこから得ている教訓とは何だろうか。
「私は60歳から新しいことを始めた。それが40年もの時間をかけられるほど熱中できることだったんです。人生に遅すぎるということはないのだなあ、と感じました。もう60歳だから、70歳だからと嘆く必要はなく、生かされている命には必ず意味があると思います。失敗したとしても、またそこから始めればいいだけだと思いますよ」
今後も命ある限り、執筆活動を続けて人の役に立ちたいと願う。信仰心に裏打ちされたその思いこそが長寿の要かもしれない。
※週刊ポスト2015年11月20日号