大村氏の前掲書によると、税務署員の間には〈「結婚するなら年末にしろ」という言葉〉があるという。年に1日でも婚姻関係にあれば1年分の「配偶者控除」を受けられるからで、同様に「離婚するなら年初にしろ」ともいえる。

 他にもよく使われるのが医療費控除だ。確定申告に馴染みが薄いサラリーマンにはあまり知られていないが、対象となる医療費は意外に幅広い。

 病院での窓口負担以外にも、通院の往復交通費のほか、レーシック(視力矯正手術)や不妊治療代、介護サービス代、市販薬の購入費、老人用おむつ代なども算入でき、家族分も合算できる。年収600万円の人の場合、医療費総額が仮に30万円だとすると、10万円を引いた20万円が控除額になり、節税メリットは3万円ほどになる。

 一つ一つの節税額は大きくなくても、塵も積もれば山となる。税をよく知る税務署員であれば、控除制度を最大限に利用していて不思議はない。

※SAPIO2015年12月号

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