平さんを見ていてふと、思い出すキャラクターがある。手塚治虫の『鉄腕アトム』等で時々顔を出す「ヒョウタンツギ」だ。深刻な場面で突然現れては、ふっと笑いを誘う奇妙な存在。漫画のコマの中にヒョウタンツギの顔がいきなり割り込んでくる瞬間、本筋の緊張感がふっと緩み、物語世界はぐっと楽しく幅を広げる。物語が平板にならないよう、バランスをとる重要な役割も果たす。
現時点の平さんのキャラは、そんな手塚漫画のヒョウタンツギにも似て、『あさが来た』のドラマ世界を遊び心によって広げてくれている。
笑いというものは、思ったよりも難しい技。特に、朝ドラのように何千万人が見る王道ドラマは、えてして真面目で中庸的、優等生的になりがち。そこに、ぴりっとスパイスのようにギャグを効かせる、平さんの存在。この笑いの成功は、朝ドラにとって大きな収穫だろう。ドラマが娯楽コンテンツとして一段と成熟してきた証、と言っていいのかもしれない。
『あさが来た』も残すところ1か月と少し。クライマックスへ向かう間、平さんが今度はいよいよ官僚上がりの有能ぶりを発揮して、劇的な役割を果たしそうな予感。メリハリが効いた大団円を楽しみにしたい。