一方、複雑な利害関係が交錯する狭い地域の中で、声を上げられない事情もある。多くのクラスメートを亡くした大川小の卒業生たちは、それぞれの大人たちの心中や事情も理解しながら、自分の思いに向き合い続けてきた。
「すべては、命あってのもの。伝えたいんです。わざわざ遠くから大川小に来て手を合わせてくれる人がいるのに、何も伝えられないまま帰っていく。広島の原爆ドームのような感じで伝われば、なるほどと思って帰った先で広まっていく。こういうことがあった時、どうすればいいか考えようと話してもらえば、すぐに避難するという防災に役立ってもらえる」
凄惨な経験をしたからこその言葉には、防災の専門家よりもはるかに伝わってくる説得力がある。
「子供の意見をもっと聞いてほしい。そのためにも校舎をぜひ見に来てもらいたい。何か感じるものがあるかもしれないし、こういう仕事に就いて頑張りたいという、きっかけにもなるかもしれない」
子供の目線でつくる防災。それを実現する周囲の大人の役割はとても重要だ。
「ここまで来ないと思っていたから、大川もああなった。もしものときは、大人も子供も関係なく、常に自分の第一感に従ってほしい。大切なのは、恐怖をどう伝えるか。百聞は一見にしかず。100回映像を見せるよりも、その場所に1回連れて行った方が、想像できると思う。
子供がおかしいと言っても、大人はダメ。子供に謝らない。自分がどう思っているのか正直に従っていたら、あの時も山に逃げていたかもしれない。6年生が山に逃げましょうと言っていたとき、5年生も便乗して逃げましょうと言っていたら、先生も心動かされて変わっていたかもしれない。子供の意見を聞くって、本当に大事だと思う」
【集中連載第3回/全4回】
※女性セブン2016年3月24日号