これまでの安全保障上のタブーをことごとく改めることで日本が東アジアで中心的な役割を担う存在となり、インド、豪州、ニュージーランドと戦略的な連携を強化して、ASEAN諸国をも惹きつけて、アジア・太平洋地域の安定に寄与してもらいたいと期待している。
だが、安全保障で指導的な立場に立つには、経済の再建がカギになる。女性の社会進出を促し、出生率を高め、ロボットや人工知能など科学技術を駆使して、日本が科学技術のセンターになるべしという論旨が展開されている。
『JAPAN RESTORED』は単純に「日本称賛論」として読むのではなく、力衰えたアメリカの現状を映しだす鏡としての「日本復興論」として読まれるべきなのだ。アメリカの影響力が衰えつつあることを認めながら、これまで以上の影響力を保持する一種の処方箋なのである。それが彼の「日本復興論」である。
日本は外の世界からどう見られているか、他人の評価をひどく気にしてきた。かつて米国の社会学者エズラ・ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』がベストセラーになった。しかし、いまや日本叩きの本が出ても、もう過剰に反応しなくなった。日本の世論もぐんと成熟してきた。
そこに未来の逞しい日本の姿を見出したい。外部からの評価を気にする日本人は概してこうした書物が好きだった。
※SAPIO2016年5月号