喪主はかつて長男が務めるものだったが、戦後、家制度がなくなり、故人のいちばん身近な人が務めるものに変わっている。配偶者、親…大切な人の死には、誰しも気が動転するだろう。しかし、悲しみに浸っている暇は喪主にはない。喪主はとにかく忙しいのだ。
まず病院で亡くなると、数時間以内に遺体を外に運ばなくてはいけない。エンディングデザインコンサルタントの柴田典子さんはこう話す。
「葬儀社の大切な役割の1つが遺体を安置するということです。葬儀社を決めていないと、病院に紹介される会社に決めて、そのまま葬儀までお願いしてしまうケースが多いです」(柴田さん)
ポータルサイト運営会社『鎌倉新書』の調査(※)によれば、葬儀社の決定は、死亡から4時間未満に行う人が約半数。この短い時間で大切な人を見送るパートナーを決めなければいけない。
※(株)鎌倉新書「いい葬儀/第2回お葬式に関する全国調査」(2015年)より。2015年12月に2年半以内に葬儀を行った経験のある全国の40才以上の男女にインターネットで調査したもの。有効回答数は1851件。
「できれば、生前に決めておきたい。元気なうちに葬儀社を見学しましょう。その際、事務所が整理整頓されていないところはおすすめできません。そういう葬儀社は、施設全体だけでなく遺体安置所の清掃も行き届いていない可能性があります」(柴田さん)
そして、何より心配なのが葬儀費用だろう。前出の調査によると、全国の平均的な費用は、約119万円。それこそ上は数百万円から下は数十万円までピンキリ。請求書を見て仰天という事態も珍しくないのだ。
まずは複数の葬儀社に見積もりを出してもらおう。
「その際のNGワードは『お任せします』です。どんな葬儀をしたくて予算はいくらなのか決めておく。葬儀社の言いなりには決してならない。あとで揉める原因になります。また、見積もりの中には、最低限の金額だけが含まれていて、後から別精算を求められることもあります。どんな料金が含まれているか詳細を確かめてください。特にお花代は含まれていないことが多いので要注意です」(葬想空間スペースアデュー代表取締役・白井勇二さん)
見積もりの際は、必ず「別精算なしにすべて含めた費用を出してください」とはっきりお願いしよう。
「もし生前に決まっていなかったら、遺体搬送までは病院に紹介された業者にお願いして、葬儀は別の葬儀社を探しましょう。複数の業者に見積もりを出してもらう時間はありますから」(柴田さん)
※女性セブン2016年4月28日号