モサドの次なる標的とは(右はモサド長官のダビデ・バルネア氏、左はネタニヤフ首相/共同通信社)
イランとイスラエルの戦闘を巡っては、米国のトランプ大統領が停戦合意を明らかにしたものの、イスラエル側がイランからのミサイル発射への報復として、テヘラン近郊のレーダー設備を攻撃するなど、依然として緊迫した状況が続いている。そんななか、「世界最強諜報機関」と呼ばれるイスラエルの組織・モサドへの注目が高まっている。イラン軍高官や核開発要人などを相次いで「狙い撃ち」してきたモサドは、この戦闘にどう絡んでいるのか、また次なる標的はどこに定めているのか──国際ジャーナリスト・山田敏弘氏がレポートする。
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6月24日、イスラエル政府は6月13日にはじまったイランに対する軍事作戦の成功を告げる声明を発表した。
「昨夜、ネタニヤフ首相は、国防大臣、IDF(イスラエル国防軍)参謀総長、モサド長官とともに安全保障内閣を招集し、イスラエルが対イラン『ライジング・ライオン作戦』の目標をすべて、想定以上に達成したことを報告した」
この発表の中に、イスラエルが世界に誇る対外スパイ組織「モサド」(諜報特務庁)の長官という記述がある。今回の作戦に限らず、イスラエルが国外で実施するさまざまな作戦にはモサドが深く関わっているのだ。
今回のイランに対するコードネーム「ライジング・ライオン」作戦も、モサドが入手したイランの「イスラエル殲滅」計画を食い止めることが最大の目的であった。
モサドが2018年にスパイ工作で得たインテリジェンスによれば、イランは核兵器を製造して2027年にイエメンの武装組織フーシ派に核弾頭と弾道ミサイルを提供してイスラエルを攻撃。
同時に、南部からはイランの軍事支援を受けるイスラム組織ハマスが、北部からはレバノンのシーア派組織ヒズボラがイスラエルへの攻撃を仕掛け、イランが長年主張してきたように「イスラエルを地図上から消し去る」という目的を実行する計画があったという。