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春の天皇賞 角居厩舎が回避するケースが多い理由

 天皇賞(春)は長距離レースなのに高速馬場の京都で、名物の“淀の坂”を二度上り下りする。メンバーも多彩で思いきった戦術をとる馬がいて、力勝負に持ち込めないときもある。フロックで負けて、馬が疲弊して傷つく危険性もある。その結果として種牡馬価値が下がることがある。それは避けたいところなのです。

 しかし、そのおかげで多様性が出てきました。クラシックでは活躍できなくても、長距離適性がありそうな馬を使えるようになったように思います。天皇賞(春)が初の重賞勝ちなんていう馬も出ています。みんなに愛される馬をつくろうという考え方が許されれば活躍の場も広がる。

 デルタブルースは種馬にはなれなかったものの、いまはノーザンホースパークで乗馬馬になって訪れる人に可愛がられています。熱い声援や厳しい叱咤はなく、優しい言葉ばかりをかけられますから、馬体も目の色もピカピカと輝いています。こういう人生(馬生)もあるのです。

 とはいえ、他人事として(笑い)今年の天皇賞は面白い。昨年の菊花賞を勝ったキタサンブラックに注目しています。

 スプリンターだったサクラバクシンオーの血を持つ馬が3200メートルを勝ったら素晴らしい。それこそ種牡馬としての価値が出てきます。バクシンオー産駒はスピード豊かなだけではなく、ジャンプして長距離を走れるスタミナがあるので、時計が遅くても、障害馬として大成することがある。競走馬引退後は、乗馬界での評判もいい。動きがしなやかで身体が柔らかいのです。

 サクラバクシンオーの血統が3200メートルを走る……これも新しい天皇賞(春)の多様性です。

◆すみい・かつひこ:1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後14年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。競馬の他、引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者競馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。

※週刊ポスト2016年5月6・13日号

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