もともと保育園・幼稚園の“商圏”は狭い。だいたい半径3~4km。お互いに顔を見て接する範囲である。顔を見ながらケアすることは、基本的に家族やコミュニティが最優先で取り組むべきであり、国が全国一律に指示することではない。コミュニティが住民のニーズに応じたコミュニティらしい解決策を、できる範囲でやればよいのである。
地方によっては乳幼児がごく少数しかいない町や村もあるだろうし、逆に都心部ではタワーマンションが次々と建ったために乳幼児が急増した地域もあるだろう。コミュニティによってニーズは全く異なるから、それぞれ個別対応が必要なのである。この原則に基づかない限り、待機児童問題は解決できないと思う。
具体的には、株式会社をはじめとする民間で取り組むべきだと私は考えている。保育園と幼稚園、認可と認可外といった定義に関係なく、民間が厚労省や文科省の基準に縛られずに、自由に特色を出していけばよいのである。
たとえば、英語や中国語を教えてくれる保育園があったら、希望者が殺到するに違いない。バレエや音楽などのレッスンも人気を集めるだろう。地域に評判のいい先生がいたら、その人を自治体がインストラクターとして各施設に1週間ずつ派遣するというような方法も考えられる。
あるいは、土曜日や日曜日に仕事が休みであっても預かってくれるとなれば、親が自分の時間を確保できるから、魅力を感じる人は多いはずだ。もちろん、土日が仕事で平日が休みの親は大歓迎するだろう。
園児の安全や保育の質を確保するのは当然の上で、そういった多種多様なサービスを提供する民間の保育施設を、自治体の裁量で増やせるようにすべきなのだ。場合によっては保育料が高額になってしまうところも出てくるだろうが、それを払うだけの価値があるかどうかは、親が判断すればよいのである。
※週刊ポスト2016年5月20日号