「この問題では朝日をはじめ多くの新聞は軽減税率を導入したくない財務省サイドに取材して報道した。だが、読売だけは財務省案を初めから徹底的に批判した。本音は“財務省案では新聞への軽減税率適用が実現しなくなるから”だったにせよ、官邸は早い段階で公明党の主張を受け入れて軽減税率導入はやむを得ないと判断しており、読売と方向が一致していた。読売の見通しと報道が正確で、財務省に踊らされた朝日が“誤報”になった」
それだけ読売が官邸の情報源に食い込んでいることを示し、逆に朝日の政治報道は、「朝日が書けば朝日嫌いの安倍総理が方針を変える」と見られている。
国際的に注目された安倍首相の戦後70年談話をめぐる報道がそうだった。朝日が「安倍談話、閣議決定しない方針」(2015年6月23日付)と書けば、安倍首相は談話を閣議決定し、朝日が「安倍談話『おわび』盛らず」(同8月9日付)と報じると、談話におわびは盛り込まれた。
理由は朝日記者の取材不足による「誤報」なのか、それとも朝日の観測記事を読んだ安倍首相が意地になって「誤報」にしたがるのかはともかく、永田町で「朝日が書けば政治は逆に動く」といわれるのはそうした“実績”があるからなのだ。
※週刊ポスト2016年6月3日号