≪映画の最後に、年老いたタオがたくさんの餃子を一人で作るシーンがある。一人暮らしの老女が心で願っているのは、便りも途絶えた息子の帰りに違いない。遠く離れたオーストラリアに暮らす息子も、かすかな母との思い出を抱えながら、「故郷」への帰りを望んでいるが、その答えは映画では示されない。
果たして、母と息子の邂逅はあり得るのだろうか。≫
ジャ:そうあって欲しいと思います。しかし……難しいでしょう
≪その言葉は、中国が「金銭」という価値観から立ち戻れるかどうかという問いに対する監督の本音を思わず漏らしたように聞こえた。≫
■撮影/五十嵐美弥
●ジャ・ジャンクー/1970年、中国山西省生まれ。北京電影学院の卒業制作で、出演者すべて素人の『一瞬の夢』が1998年のベルリン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞。以降、『プラットホーム』『青の稲妻』『長江哀歌』などで国際映画祭を席巻。前作は中国で起きた4つの暴力事件を描いた『罪の手ざわり』。
※SAPIO2016年6月号