もしも深セン税関がこれを密輸と見なすことにでもなれば、OSZに科せられる罰金は「最大で数百億円(オリンパスの試算では4億5300万ドル)」に上る懸念があった。加えて、部材を輸入する際の通関手続きでは取引信用等級を引き下げられてしまい、通関に無駄な手間と日数がかかる事態になる。処分は何としても避けねばならなかった。
OSZは、深セン税関の担当者との間に人的コネクションを持つ深センの外商投資協会や弁護士などの協力を取り付けるため、2007年6月からそれぞれに契約料として億円単位のカネを支払っていたことが、OSZ関係者の作成した内部資料に細密な相関図とともに詳しく記されている。具体的な役回りについて内部資料には、「税関に対する表側の工作を外商投資協会が、裏側の工作を弁護士事務所が担当」と記されている。
「裏側の工作」が具体的に何を意味するか、資料には書かれていないが、何らかの鼻薬が用いられた可能性は排除できまい。こうした協力者には税関幹部の元上司や元同僚がおり、中には元国家主席の秘書の娘(全人代代表委員)など、中央政府に影響力を持つ人物も名を連ねている。
在庫問題の解決は当初こそ円滑に処理が進んでいたが、税関の担当部局に引き継がれるとその後数年にわたって膠着状態が続いた。