介護疲れだけでなく、貧しさゆえに将来を悲観し、殺害に至るケースも少なくない。2015年1月17日、千葉・野田市で77歳の妻が72歳の夫を刺殺した事件では、介護施設への入所費用の捻出が引き金となった。
「夫婦は息子家族と同居していたが、夫を介護施設に入れるための費用がなく、自宅を売却しなければならないと考えていた。そのことで息子夫婦との仲が悪化したことも、妻を追い詰めたようだ」(大手紙記者)
2014年12月には東京・大田区で、77歳の夫に睡眠薬を飲ませ、バットで殴った80歳の妻が殺人未遂容疑で逮捕。事件を招いたのは、無職の長男の存在だった。
「夫の状態が悪化していくことに加え、収入は年金だけなのに無職の長男の金遣いが荒かった。さらに自身の体調も不調だったことから、将来を悲観し、夫を殺して自分も死のうと決意したようです」(同前)
2015年7月8日に大阪・枚方市で起きた事件では、逆に親を支えていた71歳の息子が92歳の認知症の母を小刀で刺し殺した。息子は大阪地裁での裁判員裁判で、「体にムチ打ってアルバイトをしても、貧困から抜け出せなかった」と、老後破産と老老介護の凄まじい実態を吐露した。
※週刊ポスト2016年7月15日号