とりあえず安上がりに空腹を満たそうと、「おにぎりとカップ麺」または「パンとカップ麺」といった組み合わせを選ぶ人も少なくない。
もともと米や麦(パン、麺の原料)などの炭水化物は安いコストでカロリーを摂取できるという利点があって、世界中で主食として普及してきたのだから、当然といえば当然の成り行きではある。
ただし、こうした炭水化物と炭水化物の“重ね食べ”は、タンパク質やビタミンが不足する上に、糖分と塩分を摂りすぎてしまう。非正規雇用者に肥満や糖尿病が多いことの原因にこうした食生活があるとみられている。
2013年には、お金に余裕のない人が低価格の牛丼チェーンに駆け込むことから、“日本の企業がお金をかけずに食事というサービスを提供している”として、「牛丼福祉」という言葉が話題になった。
ただし、「牛丼福祉」には、負の側面もある。牛丼が安いのには理由があり、その1つが“ほとんどが炭水化物”という点にある。一般的な牛丼チェーンでは重量の7割以上を炭水化物が占めている。
「サラダや味噌汁などのサイドメニューは値段のわりに満足感がなく、もったいないので、ほとんど注文しません」(39歳男性・工場勤務)といったケースが必然的に増える。
野菜を食べずに炭水化物ばかりを食べていては、低栄養によって骨粗鬆症リスクも上がる。
お金がないなら、自炊すればいいじゃないか──そう考えるかもしれないが、「非正規で夜勤のシフトにも入っているから、自炊している時間があったら、そのぶん眠りたい」(50歳女性・運送会社勤務)というライフスタイルになっていく。
糖尿病リスクが上がれば、「死に方」も大きく変わってくる。合併症で腎臓を患うことになれば、長期の通院を強いられ、老後を楽しむどころか生活に大きな制約が生まれる。
また糖尿病によって認知症リスクが上がることも指摘されている。認知機能が衰えれば、在宅生活が難しくなり、施設入居を考えなくてはならなくなる。十分な蓄えがなければ、入居先が見つからず“難民化”しかねない。所得の違いから生まれる食生活の差によってどうしようもない死に方の格差が生まれていく構図がある。
※週刊ポスト2016年10月7日号