「総理としては批判は望むところではないか。『4島一括返還』の建前にこだわっていつまでも領土が返ってこないのがいいのか、まず歯舞、色丹だけでも返還させて交渉を前に進めるべきかを国民に問うことができる。

 新聞の世論調査では6割以上が柔軟な対応を望んでいるから、北方領土交渉を争点にすれば勝算は十分あると踏んでいる」(官邸筋)

 前回の解散で消費税増税先送り反対派の批判を封じ込めたのと同じ手法であり、“増税しない解散”の次は、“北方領土返ってくるぞ解散”というわけである。

 領土問題を掲げることが選挙の大義になり得るのか疑問が残るが、選挙で自分に有利な争点を掲げるのが安倍首相の「勝利の方程式」だ。政治評論家・有馬晴海氏が指摘する。

「安倍政権のこれまでの解散に果たして大義名分があったでしょうか。消費税では国民に増税を認めてもらうために解散するならわかるが、現状のまま増税しないことを大義に解散して大勝した。とても解散する理由になっていないが、勝てるなら口実は何でもいい。国民が反対しにくい北方領土返還なら申し分ないでしょう」

 外交の行き詰まりを打開するためにプーチン大統領と「2島返還」で手を打ち、それを口実に来年1月に衆院を解散、3月党大会で一気に総裁任期延長を承認させて「明治維新150周年事業」(※総裁任期後の2018年10月に山口県で行われるイベント)を首相で迎え、歴史に名を残す。そんなシナリオが動き出そうとしている。

※週刊ポスト2016年10月7日号

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