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「ABCDショック」去り日本株は反転攻勢の時期に

【A:米国リスク】
 11月8日の米大統領選でトランプ大統領が誕生すれば、政策の不透明さから米国経済が落ち込む。また、保護主義や裏付けのない減税でインフレが進み、ドル安・円高の流れが強くなる危険性があると見られていた。

 だが野村證券は、最近のTV討論会や世論調査の結果から、「クリントン大統領誕生」をメインシナリオとしている。

「クリントン氏が大統領に就任すれば、米国はグローバル経済に配慮した政策に転換されるでしょう。ドルが買われて円安基調になり、日本企業に追い風となる」

 米国経済が回復基調にあることも朗報だ。

「米国の4~6月期の実質GDPは予想を下回ったが、雇用や個人消費は堅調。また9月に見送られた利上げも12月には実施される見込みで、今後の米経済はさらに上向くでしょう」(同前)

【B:英国リスク】
 6月23日に国民投票によって決定された英国の「EU離脱」は、全世界で驚きをもって迎えられた。これにより英国および欧州の景気が下振れし、世界経済の足を引っ張るとの懸念が生まれていた。だが、竜沢氏は「心配はいらない」と見ている。

「英国経済自体は投資不振のため、来年には景気後退に陥る可能性が高い。ですがこの問題に対して、主要国当局は連携しており、金融危機は回避できるはず。またユーロ圏の消費は堅調であり、底堅く推移するでしょう」

【C:中国リスク】
 昨年、中国経済にブレーキがかかる「チャイナ・ショック」が発生し、急激な円高が日本経済を直撃した。

 今年に入っても中国の景気悪化が伝えられ、「爆買い」中国人の来日が減少するなど、不安は根強かったが、この状況も「好転した」ようだ。

「現在、中国経済は設備投資主導から消費主導への構造転換を順調に進めています。中国政府が発表した8月の『主要経済統計』は市場予想を上回り、個人消費も伸びています。その波に乗って日本企業では特に高品質な消費財企業が好調です。中国の中間層の拡大を捉えれば大いに成長の余地がある」(同前)

【D:ドイツリスク】
 今年8月、市場関係者を震え上がらせたのが、「ドイツ銀行ショック」だ。ドイツ銀行が、住宅ローン担保証券の不正販売に絡んでいたことが発覚。米国司法省から140億ドルの支払いを命じられ、ヘッジファンドとの取引停止が報じられるなどの影響で株価が低迷した。一時はリーマンショックの再来も懸念されたが、この問題にはどのような見解を示すのか。

「重大なリスクに備えてECB(欧州中央銀行)が準備を重ねており、信用収縮の連鎖という最悪の事態は避けられるはず。また、ユーロ圏の経済回復は、銀行の貸し出し額が伸びているためではないのでリーマンの再来は考えにくく、景気への悪影響は限定されます」(同前)

※週刊ポスト2016年10月28日号

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