【将棋界との違い】
将棋界と大きく違うのは、コンピュータの性能だ。将棋はパソコン、スマホの機能を使えば、トッププロと少なくとも同等レベルのソフトを利用することができる。
一方、囲碁はそんなわけにはいかない。元世界チャンピオンの李世ドル九段をディープランニング社のAI(人工知能)ソフト「アルファ碁」が破る半年前、欧州のプロ棋士と勝負した際に使ったハードウエアは、1202台のCPUと176台のGPU(グラフィカル・プロセシング・ユニット)で並列処理させたという。
大量のデータを蓄積し、豊富なITインフラを惜しげもなく使える状況が必要というわけだ。消費電力もばかにならない。要は現在のところ、囲碁はトッププロの実力を持ったソフトウエアを利用するのはほぼ不可能なのだ。
【将来のために対策を】
とはいえ、囲碁ソフトに詳しい大橋拓文六段は自身のブログで、「あと1年もすればプロレベルの囲碁AIが数多く登場するのは間違いなく、2年以内でプロレベルの囲碁AIが普通のPCで使えるようになるでしょう」と予言(!?)している。囲碁界としても今のうちに対策などを考えておく必要はあるだろう。
日本国内だけの将棋でもこれだけ大変なのだ。国際棋戦があり、他国との対局が避けられない囲碁界は、より一層の準備が必要になる。棋士としても疑われない状況を作ってもらえるほうがありがたいと思うはずである。
●ないとう・ゆきこ/囲碁観戦記者・ライター。神奈川県出身。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。各種囲碁誌などに取材記事、エッセイ等執筆。著書に『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ」(水曜社)、『囲碁の人ってどんなヒト?』(マイナビ出版)。