でもそういった日常で、母親の方も自意識を強くしていく。子育てというフィールドで、母親として闘っているから、いかにいい母親であるかを認めてもらうために、子供が園児ならば、極端なほどキャラ弁に凝ったり、友達との交流のためホームパーティーを開き頑張るんです。そうして他人と比べるなかで自ずとママカーストに巻き込まれる。子供のためと思ってやっていますが、実は自身の承認欲求と区別がつかなくなっていたりします」(深沢さん)
イクメンが叫ばれて久しいが、実際問題、子育ての現場では相変わらず主体は母親。社会も人々の意識もこんなに変わっているのになぜなんだろう。6月に母親になった作家の山崎ナオコーラさん(38才)は、これまでの「固定観念が強固だから」と分析している。
「世間に流通している母親像というものが、すごく堅牢というか、がっちりあるように思います。例えば離乳食を作るなら完璧に手作りしなくちゃいけないとか、仕事よりも常に子供を優先させなくちゃいけないとか、高い声で子守歌を歌うとか。『母親なんだからこれをしなくちゃ』というものがあまりに多い。母子手帳、ママバッグとか、ママサポートとか、母親の責任を感じさせるものもあまりにあふれているように思います」
そうしたプレッシャーから変に力んでしまったり、理想を高く持ちすぎてつらくなっているという人があまりに増えている――山崎さんはそう思って、現在WEB上で『母ではなくて、親になる』という連載をしている。
「『親』と思ったらそこまでやらないかもしれないのに、『母親だから』という理由で、完璧主義になっちゃう部分があるように思うんですよね。また『母親だから』となると、『ちょっと外に向けてアピールしなくちゃ』という部分も出てくるような気がします。
男の人も親になりたがっているから、育児に熱心な人はたくさんいるけれども、『母親になろう』と思っている人みたいな力みはないですよね。単純に子供といい関係を築いたり、子供の世話が楽しいと思って行動する。親になるっていうのは、妊娠や出産など特別な経験をしなければなれないものではないと思うんです。結局、人間関係は1対1。母親対子供となると、そこに父親がいなくちゃいけなくなる。だから、親対子供と考えれば、もっとシンプルに生きられるように思います」(山崎さん)
※女性セブン2017年1月1日号