◆従来のたばこに似せている
技術はずいぶんと斬新なのに、スティックの外観はなぜか「紙巻たばこ」そっくり。口にくわえる部分には白い紙が巻かれフィルターもある。画期的な新商品なのだから、形や質感をガラリと変えてもよかったのでは?「いや、実は敢えて従来のたばこに似せているのです」と同社小池蘭氏(37)は言った。
「持った時の指の感覚、バランス、口にあたる感触、一本を吸うのにかかる時間、パッケージのフィルムの開け方まで、従来のたばこからできる限り離れないように設計しています」
従来のたばこと同じでは、新しい顧客が増えないのでは? と質問すると小池氏はこう続けた。今吸っていない方々にアイコスを勧めるつもりは全くありません、と。
「紙巻たばこを吸っている方々に、違和感なくアイコスに移行していただきたいのです。煙で迷惑をかけたくない、たばこをやめる意思のない方々に、代替となる提案をと思っています」
たしかにアイコスへシフトしたユーザーからは「肩身の狭い思いが軽くなった」「他人に煙を吸わせずにすむ」という声が聞かれる。その一方で、「吸い終わる度に充電が必要で、続けて吸えないのが面倒」という不満の声も多い。
もう一つ、興味深い点がある。それは、テストマーケティングと本格的な販売が、「日本」からスタートしたことだ。世界広しといえども、なぜ日本だったのか。「感性が細やかで清潔好き、煙や灰を気にする国民性。と同時に革新的な製品を受け入れる素地がある。日本はテストに最適でした」と小池氏。
発売後は予想以上の反響で、300万台突破のスピードに本社も驚いているという。生産が追いつかない現状が「想定以上」のヒットぶりを物語っている。日本では飲食店等商業施設で禁煙化が進むが、「アイコスはOK」と受け入れる場所が現時点で何と1万か所にも上るという。