◆加熱式たばこに「乗り換え」のお誘い

「紙巻たばこからアイコスへぜひ切り替えていただきたい」

 昨年11月末、PMIの最高執行責任者アンドレ・カランザポラス氏が「脱紙巻たばこ」と受け取れる宣言をして世界中を驚かせた。だがもし、本当に紙巻たばこ愛用者がいなくなってしまったら? たばこメーカーとしては大打撃ではないのか?

「いや、それも成人喫煙者の選択。ただし、WHOは今後も10億人が喫煙を続けると推定しています。であれば、より害が少ない可能性のある製品を提供することが社会的な意義であり現実的な提案だと思います」(水越氏)

 毎年大量に生まれる商品。新しいユーザーを獲得しようと各社は必死。新市場を開拓すべく東奔西走している。しかし、アイコスのアプローチは全く違う。ターゲットは「既存の」ユーザーだ。

 目指すは、ユーザーの横ずれ。いわば「乗り換えマーケティング」だ。大切なのは、たばこを否定せず、吸うことの満足感を最大限再現していくこと。手に持った感覚、吸う動作、くゆらす儀式性。同時に、リスクを軽減する新技術を投入し社会との共存の可能性をさぐり続けること。たばこに限らない。リスクのある所に、ヒットの種となるリスクリダクション技術開発の余地は眠っている。

 アイコスというヒット商品は様々な業界に向かって「乗り換えマーケティング」のヒントを投げかけている。

※SAPIO2017年4月号

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