──ご著書では、理不尽な目に遭わされたときは「きっぱり断りましょう」と学生にアドバイスされています。しかし自分の学生時代のことを思い返しても、なかなか「大人」に断り切れないのではないでしようか。
上西:現実的に難しい場面もあると思いますが、私が調査や授業で学生から聞いた上手な交渉術があります。
まずやっぱり最初が肝心ですね。シフト勤務なら最初にこの曜日の時間しか入れないということを明確にして契約する。そうすれば他のシフトを断りやすいです。その都度ごとにシフトを組む方法だと「なんで土曜日に入れないの?」とか押し切られやすいです。
また職場の仲間と問題意識を共有しておきましょう。「ブラックバイト」という言葉が浸透してきて、学生の問題意識も高まってきました。理不尽な扱いに対して職場の仲間と組んで是正を要求して通った、という話も聞きます。
──最後に親としては、子どものアルバイトのどういうところに気を配ればいいでしようか。
上西:子どもが大学に入ると飲酒や防犯面を心配する保護者は多いですが、アルバイトについては「嫌だったら辞めれば良い」ぐらいの感覚の方がまだいます。ですが私たちの本でも書いた通り、現在のアルバイトにはさまざまな罠が潜んでおり、大学生では対応しきれない手ごわい相手もいます。公的機関や弁護士などの専門家に相談することも必要なときがあります。そういう相談先も「Q&A」に書いておきました。
保護者の方は「子どもがなにかバイトやってる」だけでなく、なんのバイトをどんな状況でしているのか、しっかり把握してください。それは過保護ではなく、働く者の先輩としての役目です。