そうした中、韓国にとって致命傷となりかねないのが今年10月に期限を迎える中韓通貨スワップ協定の中断だ。在韓ジャーナリスト・藤原修平氏が語る。

「韓国が他国と締結するスワップは、二国間、多国間を合わせ14兆円規模。その中で、中韓スワップは6.3兆円と断トツの大きさです。韓国の柳一鎬・副首相兼企画財政相は『中韓スワップが頓挫しても経済は揺るがない』と強気ですが、米国金利が引き上げられる中、日本に続き中国とのスワップが中断すれば、自国通貨が弱い韓国は命綱を失うことになります」

 中国政府は昨年11月の韓流コンテンツ締め出し(*)を皮切りに、THAADの配備用地を提供したロッテの不買運動を扇動。畳みかけるように団体旅行禁止措置を実行し、韓国への攻勢を強めていった。報復による韓国の経済損失は最小で8800億円(韓国・IBK経済研究所)との試算もある。

【*THAAD配備の報復として、昨秋以降、中国での韓流番組、ドラマ、映画の放送・上映が禁止に。また、韓国芸能人、タレント、ピアニストやオペラ歌手の中国での活動も厳しく制限されるようになった】

「次期大統領候補の文在寅氏はTHAAD配備に消極的ですが、5月の韓国大統領選までに米軍が配備を完了すれば、白紙撤回は事実上不可能です。政権交代後も韓国が中国からの圧力を受け続けることに変わりはなく、経済報復がやがて現代やサムスンなどの大企業に飛び火することも十分に考えられる。韓国経済は極めて深刻な事態を迎える可能性が高いと言えます」(藤原氏)

 韓国の生殺与奪権は中国が握っている。

※SAPIO2017年5月号

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