もし自動運転技術が実現すれば、踏み間違いの心配も無用になるかもしれないが、自動車業界に詳しいジャーナリスト・福田俊之氏は「実現はずいぶん先になるだろう」と予想する。

「まだ完全な技術は確立されていません。政府は成長戦略のなかで『25年をめどに高速道路での完全自動走行を実現させる』と息巻いていますが、技術的な問題のみならず、法整備などの課題も多い」(福田氏)

 確かに、自動運転技術が進歩すれば、車の運転はさらに楽になるだろう。しかしこれまで述べてきた通り、「操作を楽にする」という発想で生まれたAT車のほうが、「難しい」MT車よりも事故率が高いという現実を忘れてはならない。技術の発達は新たなタイプの事故を生むリスクも孕んでいる。

 前出・森口氏の提案は興味深い。

「MT車で免許を取り、長く乗りこなしてきた高齢者を想定して、『マニュアル限定免許』を考えてもいいのではないか。MT車なら注意力の低下やケアレスミスを防げるし、“運転を楽しみたい”という思いにも応えられる。また、MT車の操作に自信がなくなれば、自然と運転から離れていく。免許の更新期間を短くするより効果があるかもしれません」

 現実的かつ有効な「MT車活用」という選択肢は、高齢ドライバー問題解決の大きな糸口になるはずだ。

※週刊ポスト2017年5月26日号

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