──若手議員は「草案」を理解できていないし、「安倍私案」も読売新聞で読んだだけ。そんな実情で秋の臨時国会に改憲案を提出とは拙速ではないか。
石破:以前から私は、1日も早く改正したいと考えている。安倍総理も私も戦争を知らない世代だが、空襲の戦火の中を逃げ惑ったり、原爆でご自身が被ばくしたり家族を失ったりされた方々がまだご存命のうちに、納得頂けるような憲法改正をしなければならないと思っている。
ただし、早く改正することと議論を粗略にすることとは違う。時間がないなら集中的に討論すればいい。私が知る自民党の伝統は、米価の決定や政治改革などで議論が沸騰した時は議員全員で口角泡を飛ばして明け方3時や4時まで議論し、次の日も朝8時から続け、いったん決まったら、異論なしに結束して賛成する。それが党の活力につながった。
今、国会議員は夏祭りとか選挙区回りで忙しいかもしれないが、憲法改正は重要な政治課題だ。自民党はこの夏に「禁足令(※注)」を出して全国会議員を1週間くらい東京に集め、総裁の案であろうと草案であろうと、とことん議論すればいい。議論のプロセスを国民に見せることで憲法改正の本気度が伝わり、信頼回復にもつながるはずだ。
(※注)/党が所属国会議員に対して国会から離れることを禁止し、定められた採決や議論に参加することを命じること。禁足令を破ると党から懲罰を受けることもある。