完成披露試写会での一コマ


「子供たちとはお互いに心を開いて家族のように接していました。一緒に過ごす時間の中で、私も本当に母親のような気分になれた。今だからこそ演じられた部分もあったと思います。彼女たちといると、何かあったら助けてあげたいという気持ちになるんです。もし何か困ったことがあったらウチへきて、ごはんを食べて泊まっていってね、って。私は料理が好きなので、2人が食べたいものをたくさん作ってあげたい」

 撮影中にはそんな娘たちやスタッフを想い、50人分の中華スープを作って現場へ差し入れた。普段は自宅の家庭菜園でトマトや枝豆を育て、旬の食材を使った和食を食卓に並べる。料理上手で家庭的な一面を見せるが、実は苦手な家事もあるのだとか。

「お洋服の収納が苦手です。洗濯してたたんでも、きれいにしまえなくて結局ハンガーにかけちゃう。でも全部はかけられなくて悩んでしまう。何かいい方法はないかなと思って、家事の本を読むんですよ。『きれいな収納法』とか、『効率のいい家事の仕方』とか(笑い)。こっそり本で研究しています」

 今は家庭を軸に女優業を極めたいと考えている。

「これまでは女優が自分の中心で、仕事以外の私はどうなんだろう、10年後20年後はどうなるんだろう、とすごく考えていました。でも今は家庭というベースがあるので、女優としてだけの人生じゃない。ひとりの人間として日々を歩んでいくことで、結果として素敵な未来に近づけるのかなと思っています」

 最近はあまり先のことばかりを考えなくなったという、37歳にして芸歴20年超のベテラン女優は、人間・田中麗奈に戻れる場所を手に入れたことで、さらに広く深く、様々な女性の人生を演じていくことになるのだろう。

【PROFILE】たなか・れな/1980年5月22日生まれ、福岡県出身。1998年公開の映画『がんばっていきまっしょい』で初主演を果たすと、日本アカデミー賞新人俳優賞など各賞新人賞を総なめに。以後、女優として映画、ドラマ、舞台で活躍。浅野忠信とW主演を務める映画『幼な子われらに生まれ』が公開中のほか、9月15日~11月3日上演の舞台『劇団☆新感線「髑髏城の七人」Season風』に出演する。

●撮影/鈴木ゴータ ●取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2017年9月8日号

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