しかし、次第にいかにキャッチが儲かるか、というシステムに変貌していき、現在では、キャッチが客を連れてくることが前提となっている「プチぼったくり」の店舗ばかりになってしまったのだ。ここに、客をもてなすなどの意図は全くなく、あるのはキャッチと店が、いかに客から搾取できるか、という詐欺師めいた発想だけである。
また、キャッチが関わる“プチぼったくり”店が周囲に増えたことによって、真面目に営業をしていた別の店舗が多額の損害を被ったり、閉店に追い込まれてしまうこともある。新宿・歌舞伎調の雑居ビルで居酒屋を経営する深沢氏は、紛れもなくその被害者だ。
「一時期ネットで騒がれた“歌舞伎町のぼったくり店”が、うちのビルの三階と五階にありました。実際に訪れてみると、客単価は恐ろしく高く、ありえないようなチャージ料にメシはマズイどころか、注文してから30分以上こない……。悪評はすぐに広まったものの、関係のないうちの店や、別のテナントまで“ぼったくり店では?”と噂が立ってしまい、売り上げが激減。ぼったくり店が出て行ってからなんとか回復しましたが、連中のせいで店を畳んだオーナーも一人や二人ではありません」
このように、我々消費者にとっては百害あって一利なし、とも言える悪質なキャッチであるが、取り締まりを強化しても減らない理由については前述した通り。キャッチらと結託した悪質な飲食店も、店名を変え、人を変え、何度も何度も消費者を騙そうとやってくる。
「キャッチにはついていかなければ大丈夫」と、単純なことのようにも思えるが、酔っ払った勢いや、めぼしい店が満席で入れなかったり、店を探すのが面倒な時など、ついつい甘言に乗ってしまう可能性もある。また、本格的なぼったくりではなく、あくまで「プチぼったくり」なために、被害に遭った客も、ちょっと失敗したな、などと考えてシステムそのものを疑ったり、警察や行政などへ訴えることまではしない。せいぜい、SNSで不満を漏らす程度だ。
実際に、レシートの画像を被害に遭った客がSNSで公開したことがきっかけで、閉店に追い込まれた店舗もある。その投稿では、キャッチからは「一人2600円のコースあります」という大手グルメ情報サイトと同じ条件を提示されたが、2人のはずなのに飲み放題を5人ぶんつけられ、「お通し」「席料」の人数も増やされ、さらにチャージ料金が別途計上されて高額になっていることに抗議したが、店から出さないと店員にすごまれ、逃れるために支払ったという体験が語られていた。不当だとは思っても、支払えない金額ではないのも「プチぼったくり」店舗に特徴的な巧妙さだ。SNS拡散によって激しい抗議を受けた店舗は、HPと店舗を実に手際よく閉鎖して雲隠れを果たした。
こうして店舗が消えることもあるが、現実に存在する「プチぼったくり」の店の数に比べれば、世間で悪評が立つ店は砂浜の砂一粒程度でしかない。悪質な飲食店は、看板を掛け替えてすぐに同じことを繰り返し、今尚営業している店舗が複数存在している。
忘年会シーズンを控え、キャッチやキャッチと結託した飲食店がまた活発に動き出すはず。不法行為を働く連中が、あなたを満足させるような店に案内してくれるのか? 詐欺師によって提供される酒、食べ物をあなたは口にすることができるのか? 冷静に考えれば、誰でもわかるはずだ。読者の皆さん、ご注意を。