スポーツ報知は鏡山理事(元関脇・多賀竜)が貴乃花部屋を訪問していた頃の紙面で、「貴乃花親方が送検後に貴ノ岩聴取許可も居留守か」(12月12日付)、「貴乃花親方が鏡山親方を完全無視 決着は越年か」(12月14日付)などと、貴乃花親方の非協力的姿勢を批判している。
サンスポは、やはり貴乃花親方が聴取拒否を続けていた時期に、「非常識FAXで仰天言い訳!」(12月14日付)、「貴乃花親方の“弁解書”を協会重視せず 出席者“非協力的だった責任重く”」(12月23日付)など、相撲協会側の視点に軸足を置いた。担当記者のコラムでも、「貴乃花親方の“偏屈”な相撲道はもうけっこう “理事解任”も致し方ない」(12月19日付)と、かなり手厳しい。
スポーツ報知の専属解説者は協会ナンバー2(事業部長)の尾車親方(元大関・琴風)。サンスポの専属解説は主流派の出羽海一門の次期理事候補といわれる藤島親方(元大関・武双山)。いずれも八角理事長(元横綱・北勝海)を支える協会本部常勤の親方である。また、理事会で八角理事長の隣に座る広岡勲氏(相撲協会理事補佐・危機管理担当)は報知OBだ。
貴乃花親方の理事解任提案が決議された臨時理事会の翌日(29日)の各紙面は、まさに「貴乃花vs相撲協会」の代理戦争の様相を呈した。サンスポは「理事会中も変わらず無言」と貴乃花親方の姿勢に批判的で、スポーツ報知は「協会が弁明を全否定」「全会一致で初厳罰」とやはり同様の立ち位置だった。また、同日に発表された、元顧問に対する協会の訴訟提起(不正に利益を得ていたとして損害賠償を求める内容)にも触れ、その元顧問が「貴乃花一門のパーティにも出席」した人物であると言及した。
対照的にスポニチは、貴乃花親方の理事解任提案の決定内容と同時に、「協会の対応に問題がなかったわけではない」という高野利雄・危機管理委員会委員長の苦言を報じた。また、記者のコラムでは、「被害者側の親方と加害者側の親方がなぜ同じ扱いなのか」と批判している。
貴乃花の理事解任は1月4日の臨時評議員会で正式決定されるが、初場所後には理事選が控えており、貴乃花と相撲協会の対立構図が深まるのは必至だ。そうした中でスポーツ紙の貴乃花擁護、貴乃花批判とも、さらに熱を帯びてくるだろう。その際には、報じられた内容だけでなく、「どのメディアが報じたのか」にも注目すれば、この問題の根深さがより理解できるはずだ。