よく「マンションの価格はいつ下がり始めますか」と聞かれる。需要と供給の関係だけを考えると「今でしょ」という答えになる。しかし、現在の市場はおかしな幻想に支配されている。家賃30年分の価格でも、誰も疑問に思っていない。だから、今すぐ値下がりが始まることはない。
ただ、幻想は幻想だ。所詮は現実ではない。そして、いずれ幻想は消える。それはいつになるのか、という時間の問題だ。誰かが「王様は裸だ」と叫べば、多くの人は幻想から目覚めるかもしれない。私は時にそれを叫んでいるのだが、世間はなかなか目覚めてくれない。
世間が目覚めることになるには強烈なキッカケが必要なのだ。例えばリーマンショックのような出来事だ。朝鮮半島で大きな事件が起きるのもキッカケになりそうだ。2018年中は何も起きなくても、2019年10月に消費税が10%に上がれば、多くの人は現実を見つめ直すかもしれない。
ひとつ言えることは、世間が幻想に包まれているうちに不動産を売却すれば「高く売れる」可能性が高い、ということだ。申し上げた通り、中古マンションは売りと買いがにらみあっている状態だ。しかし、今ならにらみ合っている価格から少しだけ下げれば、買い手は喜んで手を出してくれる。売買が成立するのだ。
しかし、この幻想が消えてしまった後では、現実的な価格でしか買い手がつかなくなってしまう。現実的な価格とは、家賃30年分ではない。せいぜい20年ちょっと分くらいであろうか。つまり、今の局地バブルエリアの価格は3分の2程度まで下がる可能性があるということだ。
売るべき不動産があるのなら、2018年中に売っておくべきだろう。
■文/榊淳司(住宅ジャーナリスト)