◆権力に簡単に近づける

片山:昨年騒動になった森友、加計学園の問題にも通じますね。自民党の古き良き昭和もちろん弊害も多かったでしょうが、かつての人間関係の中心は、学校の同窓会であり、政治家なら後援会であり、血縁・地縁であり、良くも悪くも見通しがよかった。でも平成に入ると、その秩序が機能しなくなってくる。政治家も政党も企業も学校すら流動化して背景が見えにくくなる。個人と個人との地下でのつながりが実は権力に影響を及ぼしている。

佐藤:制度化されたキャリアを歩んでこなかった人たちも簡単に権力に近づいていけるようになった。おっしゃるように平成を語る上で欠かせない変化といえるかもしれません。

片山:それは小選挙区比例代表並立制の影響が大きい。そこに新規の政党の登場が絡む。地盤も看板もなく、前歴も分からない人物が突然当選して表舞台に登場する。その後、不祥事が起きてみんなはじめて知るのです。「そんな政治家がいたのか」と。

 政界だけでなく、一般社会も同じですね。誰も知らない派遣社員がいつの間にか職場にいて、気がついたらいなくなっている。

佐藤:非正規雇用の問題は第2次小泉内閣下に遡ります。規制緩和が雇用政策にも及び、派遣労働が原則自由化された。その結果、2008年9月のリーマン・ショックが引き起こした不況で派遣切りが問題になり、年末には日比谷公園に年越し派遣村(※注3)が開設された。

【注3/派遣切りや雇い止めにあった失業者の宿泊所。2008年の年末から年始にかけて日比谷公園に開設された。入村者は500人を超えた。】

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