加藤智大一覧

【加藤智大】に関するニュースを集めたページです。

「炎上はビジネス」とまとめサイト管理人(写真はイメージ)
50代まとめサイト管理人「食ってくためには何だってやる」
 ネット検索することを大手検索エンジンGoogleの名前から「ググる」といい、一昔前は、ググるとすぐ目的の情報にたどり着けた。ところが、最近は何を調べても、トレンドブログやまとめサイトと呼ばれる真偽のほどが怪しいものばかりが検索上位を占めるので、目的の情報にたどり着くのに時間やコツが必要となった。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、炎上の自作自演までしてビジネスにいそしむ、50代のまとめサイト管理人についてレポートする。 * * *「誹謗中傷で食ってる俺から言わせてもらうと、この程度で死ぬほうが悪いんですよ」 練馬のファミリー向けマンション、小島高也さん(50代・仮名)は歯に衣着せぬ物言いで、私にベラベラと持論をまくし立てる。幸せそうな家族ばかりが出入りするマンションにアングラ系プロダクションがあるとは誰も思うまい。中小出版社、零細編プロの連中というのは本当にヤバい人材のオンパレードだが、オタク界隈のショップや通販屋、グッズ関係の元社員というのも信じられない人間の宝庫だ。とくに二次元、三次元問わずアダルト関係。私もこの辺のコネクションはツテをたどるのに大変重宝している。小島さんもその一人だ。「ネットの本質ってね、食うか食われるか、殺すか殺されるかだと思ってます。人とつながる優しい世界とか、そんなの信じてる時点で向いてない。優しい世界ですけど、俺みたいな悪人に優しい世界なんです」 悪人と自負する小島さんはこのマンションの一室を事務所にして、いわゆる「まとめサイト」を運営している。まとめサイトとは便宜上の呼び方で明確な定義はないが、小島さんのまとめサイトは匿名掲示板やSNSを恣意的にまとめて報道機関のニュースのように装ったり、アニメやゲームなどの放送や発売があるたびあたかもニュースのように仕立て上げる。もちろん取材対象やコンテンツ元の許可など一切とらず、自分のやりたい放題に記事を作り、検索結果の上位を狙ったSEO対策を繰り返しながらひたすらネットの海に垂れ流している。訴えられたことはもちろん、警察のやっかいになったこともあるそうだ。その辺を武勇伝のように語っていたが、本当のところはどうだろうか。「事件とか事故もアクセスは伸びますけど、やっぱり芸能とオタクが強いですね。とくにスキャンダル」 と、偉そうに記者然と語るが、小島さんの記事は全部パクリの泥棒だ(はっきり言わせてもらう)。小島さんはオタク系ネットサイトのスタッフや同人ショップの通販サイトなどアキバ系の仕事を転々とした後に開業した。一応、肩書は代表取締役。一人社長だが会社を経営していて、執筆の一部は小島さんが「100円ライター」と呼ぶお小遣い稼ぎ程度の素人に書かせるそうだ。1文字1円にも満たない、そんな金額でそんな文章を誰が書きたいのかと思うが、それを仲介するクラウドソーシングサービスもあり、このコロナ禍もあって二束三文でも書きたい素人は見つかるという。「志村(けん)とか岡江久美子とかコロナで死んだ芸能人の伸びはよかった。コロナと関係ないけどテラスハウスの女子プロレスラーも。ああいう人たちが死んじゃうと美味しいです」 美味しいとはどういうことか。私は内心おだやかではなかった。5月23日にお亡くなりになった木村花選手(レスラーとして敬称は選手とする)はスターダムの若手実力派だったが、ルックスでも人気となり、フジテレビの『テラスハウス』にレギュラー出演していた矢先、まだ22歳の若さで亡くなられた。私はお母様の木村響子選手に昔お会いしたことがある。女子プロレス団体のJWPに参戦していた時代の話でもう20年近く前だ。娘さんもプロレスラーになったということで、時が経つのも早いと思ったものだ。そして親子揃って、視聴者の一部からTwitterを中心に誹謗中傷を受けていた。それは「ネットの一部」などと書けないほどの数と、常軌を逸した内容だった。「そういうネットの炎上案件も人気なんです。それを探し出してまとめて面白おかしく記事にする。とくにTwitterはバカの宝庫です」たくさんの炎上用サブアカウントを使う 面白おかしいのか。Twitterがかつて「バカッター」と呼ばれ、多くの事件を引き起こしたことは記憶に新しい。そのたびに発信者とその仲間は身元をさらされ、叩かれた。多くは本人が先に悪いことをしたことが発端だが、あまりに社会的な騒ぎとなり、またその行為がリアル人生に影響を与えることが存分に知れ渡った今、かつてのようなわかりやすいバカッターは減ったそうだ。私もいまさらそんなネタでは動かない。しかし小島さんは違う、なんとまとめサイト側から炎上案件を仕掛けるという。そのツールもかつては某匿名掲示板が中心だったが、現在の主力はTwitterだ。「たくさんの炎上用のサブアカウントを使います。一般人もクソリプ用とか攻撃用って使い分けるんですけど、そんな感じでネタになりそうな、金になりそうな炎上キャラに絡みます。もしくは嘘八百をツイートします。なるべくリツイートしてもらえるような、食いつくようなやつをね」 小島さん以外にも炎上させよう、デマを流そうというアカウントは大量に存在する。人気のキーワードでタイムラインを追ってみれば、数分単位でそんなツイートがひたすらあちこちから流れてくるのが現状だ。あれも商売なのか。「いや、ほとんどはその辺の愉快犯ですよ。金になんなくてもやってる奴なんてそれこそいっぱいいます。あとはアンチ、大半はそれですね」 そういう愉快犯は1980年代後半から1990年代前半にかけて、パソコン通信のBBS(インターネットの掲示板のようなもの)あたりにも少なからずいた。もちろん私はそんなありきたりのネタをいまさら聞きたいわけじゃない。もしや、木村花さんの件も、小島さんが追い詰めた一人なのでは。なぜなら小島さんのまとめサイトには木村さんの性格、嫌い、無理などの言葉が並ぶまとめ記事があったからだ。小島さんの顔が心なしかこわばって見えた。「私はまとめただけですし、外注ライターが見つけて来たネタです。ライターが木村さんに悪意のあるリプを飛ばしてたとしても、私は命令してません」 語気も少し強い。かつて、某キュレーションサイトが命にかかわる医学関係のデマをまとめて大問題になり、一斉に閉鎖した事件があった。残党の一部は大金を手にしていまもシンガポールを中心に暗躍している。そのトカゲの尻尾の中には大手を振って日本で活動している者もいる。時が経つのは早い。ライターが勝手にやったこと、あの時の当初の会社発表や説明とまんま同じだ。納得できない私は「でも小島さんも個人的にサイトと関係なくリプを飛ばしたりもするでしょう」と曖昧な言葉を投げてみた。「そりゃもちろんですよ、私だってテラハは観てましたからね。ムカつくこともありましたよ」 色白で小太りの小島さんの細い一重が眼鏡越しにいっそう細くなる。ムカつくこともあるからなんなのか。私はなんとか平静を装い、どういう人を狙うのかと訪ねた。PVが稼げて記事になる人なら誰でもいいのか。「ファンネル(※護る論陣を張る支持者や仲間)が多い奴はダメですね、批判が殺到しても美味しい炎上は難しいし、うっかりするとこっちが攻撃を受ける。そういうインフルエンサーはネット訴訟にも詳しいから面倒です。あと政治もだめ、ネトウヨ界隈は最近金にならない。それくらいの利用価値しかないんだからがんばって欲しいんですけど、あいつら口ばっかです。だから急に話題になったタレントとか若手の声優、テレビで目立つ素人とかがいいですね。フォロワーが多くても信者は少ない人で、ちょっと反応を見て弱そうだったら完璧ですね。メンタル弱いくせにいちいちレスを返してくるような人です」 弱い人を狙うということか。ファンネルとはフォローしてくれているアカウントの中でもとくに熱心なファン、信者が味方になってリプで反撃することを指すスラングで、よく「あの芸能人叩くと、信者(フォロワー)のファンネル飛んでくるからさー」のように使う。やはり小島さん自身も自作自演で、その複数のアカウントを使って炎上に加担しているのではないか。まとめサイトのネタを作ったり、誘引しているのではないか。「それはありますよ。炎上させるのに焚き木はなくちゃね。クソリプ飛ばしたり複数のアカウントでまとめるために自作自演はしてます。それはまとめサイトの多くがしてますが、違法ではありませんね。これ、女子プロレスラーの話ではないですよ」 違法ではないから何をしてもいいのか、人間を何だと思っているのか。みな生きている生身の人間だ。家族もいる。木村花さんを一生懸命育ててきたお母さんがいる。誰にだっている。なぜ縁もゆかりもない小島さん、いやお前にそんなことをされなければいけないのか。「だからその女子プロレスラーと絡めるのやめてもらえます? だいたいなんで怒ってるんですか? あんたらマスゴミとやってることは一緒ですよ」 泥棒と一緒にされては困る。これまでのオタク業界でも、ルポでも私自身が経験しているが、出版くずれでアングラに染まったようなこの手の人は無敵。社会的に失うものがないから犯罪を起こすことへの抵抗がない、敵が存在しない、そんな無敵の人に何を言っても無理だ。私はこれを記事にしてもいいかと念を押したが、全然問題ないと言う。確かにさっきのキュレーションサイトの事件ではないが、所詮それ未満の規模でしかないまとめサイト管理人など、たとえバレたとしても、世間は小島さん個人への興味などたいしてないだろうし、失うものもたかが知れている。「食ってくためには何だってやりますよ。自分に関係のない奴が死んだって知ったこっちゃありません。誰だってそうじゃないですか? あんたもそうでしょ、かっこつけてバカですか。その女子プロレスラー、死んでありがとうって言って炎上してる奴いるの知ってます? 他にも似たような奴いますよ、そいつのとこ行ったらどうですか? そんな奴、手口が違うだけでいっぱいいますよ、みんな他人のことなんかどうでもいいんですよ、嫌ならネットすんなよ!」「コロナになりました」アカウントもフェイクだらけ 私はこういう人をたくさん見てきた。「死ね」と書いてみたと思えば「叩いた奴を晒せ」と別のアカウントを使ってあおり、自作自演で盛り上げている。思考が言葉になり、言葉が行動になり、行動が習慣になり、習慣は性格になる。そして小島さんの性格が、いま現在の運命につながっている。マザー・テレサの言葉そのままだ。そして「人間がほんとに悪くなると、人を傷つけて喜ぶこと以外に興味を持たなくなる」というゲーテの言葉も思い出す。歴史上の偉人でもこのような人にはお手上げだったのか。どの言葉も真っ当すぎて陳腐に感じるかも知れないが、真正面から受け取ったほうがいい言葉だ。過度のニヒリズムはいずれ死にたくなるからやめておけ。「偉そうに。個人と思ってなめないほうがいいですよ、きっちり”お話”をする人もうちにはついてますから」 それは弁護士だろうか、小島さんは「きっちりお話をする人」と言っていた。この場合は反社(反社会的勢力)、イリーガルな連中のことだ。脅しているつもりか。それでもこれ以上こじれるのはまずい。私はオタク話でごまかし、他愛もない話のままマンションを後にした。かつてのオタク業界、とくにオタク系、アキバ系小売の劣悪な環境や待遇、そして使い捨ての実態は知っているし小島さんもその口だ。同情はするが、だからといって人様の子を誹謗中傷する、扇動するのは間違っているし、それを商売にするのは悪質過ぎる。しかし皮肉なことにコロナで在宅勤務や学校が休みということもあり、PV数は順調だという。たくさんの見る人がいるから、小島さんのような連中にとっても金になる。お手軽でアンモラルな金稼ぎの道具に成り果てたネットビジネス、職を失った中高年や、働くことのままならない子持ちの主婦にまで広がっている。「私はコロナになりました、ってアカウントもうちがやってますからね、実際に取材受けてる本物は別にして、うちも含めてフェイクだらけですよ」 しばらく後、インスタントメッセージで届いたこの内容はもう理解の範疇を超えていた。コロナに乗じて悪質なフェイクを撒き散らし、またまとめて金にするのだろうか。小島さんは金のためと言うが、ルサンチマンも垣間見える。「あんまり深入りしないほうがいいですよ、アングラ系のネット関係者が日本にいなくなる理由、わかるでしょ、それに日本人だけじゃないんだよ」 ときに警告は脅しにエスカレートした。いわゆる「オタクヤクザ」ということか。どれも昔からの脅し文句だ。純粋なファンは知らなくていい世界だが、かつてオタク業界のごく一部だがアニメやゲーム、声優事務所のバックにはヤクザがいた。もちろんすべてがそうではないが、私が経験した中では、アニメの記事を載せるだけで100万円を要求されたり、専属でもないのに「うちの○○に仕事の依頼したのおまえ?」と人気女性絵師絡みで直々に脅しをかけてきたゲーム会社の社長兼組関係者などいくらでもあげられる。裏の顔はホスト狂い、反社の彼氏持ちのアイドル声優だっていた。いま彼女の声を聞く機会はほとんどない。コンプライアンスが厳しくなり、アニメやゲームが巨大産業となるにつれて連中のつけ入る隙は減ったが、オタクヤクザは2000年代以降、より安全で金になるネットに暗躍している。アニメやゲームと違うところは、一般人も加担者として巻き込まれているところか。オタクヤクザについては暴露も含めて本気で書きたいが、有名どころ、有名人も多いので実際に書いたら大変な騒ぎとなるだろう。近年では震災復興、東北絡みのオタク商売がヤバかった。「日野さんも編集長やってたくらいだから、大手同人サークルの貴重なのとか大量に所有してるんでしょ、無料同人サイトやりなよ、儲かるよ」 で、脅したと思えば小島さんからは抱き込みのつもりか違法海賊サイトのお誘いもあった。相手にする価値もない。一般商業の海賊版サイト「漫画村」の事件は摘発されて当然の違法サイトだが、二次創作の同人誌を勝手に頒布しているサイトなどは違法であっても権利者の意向次第のグレーな存在であり、ましてアダルトが大半なのでいまも野放しだ。 世界を見渡せば、東欧やアジアの貧しい小国などは国家規模で違法配信やフェイクニュースを利用した広告ビジネスで稼いでいる。情報系を専攻する貧国の大学生はそれで留学費用を稼ぐ。かつては一攫千金のためのアンモラルだったのが、貧者のセーフティーネットとしてのアンモラルに変わろうとしている。副業がてら小銭稼ぎのフェイクを垂れ流す貧乏サラリーマンや自称自営業など珍しくもない。だからこそ、小島さんもべらべらと得意げに語ってくれたわけだ。承認欲求の歪み、鬱結した心のはけ口としてのルサンチマンもあるのだろう。このコロナ禍、オタク業界は瀕死の状態だ。実店舗は次々と閉鎖、私にも「会社を辞めました」というオタク業界で働く連中の挨拶メールがよく届く。この業界の雇われの定年は早く、「仕方なくフリー」が大半だ。手っ取り早く小島さんや彼の使う外部スタッフ連中のようなアングラに手を染める人はこれからも増えるだろう。 この取材はもう2ヶ月前のことで、その後に断片的なやり取りはあったものの、他の取材が多忙なことや諸処の面倒事も重なり一時的に放置していた。それを再構成したので時系列がいびつになってしまったこと、中途半端にこうして表出しすることは本意ではないが、伝える意味はあると考える。もっとも、情けない話だがその後の諸事情で書けない揉め事含め、私の手に追えるものではなかったのかもしれない。 人類史上初めて世界中に誰でも悪口を言いたい放題撒き散らせる、ときに他人を自死に至らしめることすら出来る匿名の武器、それで金を稼げる新たな錬金術に、一般人はもちろん、反社会的勢力やその尻尾が手を染めている実態。総務省が誹謗中傷に関する問題に取り組む姿勢を見せたが、せいぜい腹立ち紛れの個人が吊るし上げられるだけで、組織は痛くも痒くもないだろう。この件、途中で「深入りすんな」と別のアングラ系ライターの知り合いからも注意されたが、私が思うよりずっとネットの誹謗中傷やフェイクニュースの根本病理は深く、そして恐ろしいものだった。現状では違法ではないものが大半だが、仮に違法であっても微罪、もしくは民事である。そして悲しいかな、著作権違反のコミックを読み漁る泥棒読者や誹謗中傷のフェイクに面白がって加担者する悪質なユーザーが一定数存在し、こういったアンダーグラウンドな連中のアンモラルな行為を肯定している。これが私たちの手に入れた、輝かしい未来が待っているとされたネット社会とその現実である。●ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。ゲーム誌やアニメ誌のライター、編集人を経てフリーランス。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年、著書『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)上梓。近刊『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)寄草。
2020.08.15 07:00
NEWSポストセブン
子どもへの過度な期待がエスカレート
中学受験で子どもをツブす「教育虐待パパ」の共通点
 中学受験の過度なプレッシャーやストレスから心身に不調をきたし、心療内科に通う“小学生”が急増しているという。昔から教育熱心なのは母親のイメージが強かったが、近年は父親が自分の理想を子どもに押し付け、行き過ぎた指導で子どもをダメにしてしまうケースが目立つ。教育評論家の石川幸夫氏が、そんな「教育虐待」に走る父親の共通点を指摘する。 * * * これまで、中学受験の多くは、母親が主導権を握っていたのですが、この十年で受験には門外漢と言われていた父親の関わりが目立つようになってきました。いわば「父親の母親化」です。 それは、働き方改革に代表されるように女性の社会進出が顕著になり、忙しい母親に代わって、父親もわが子の教育に関心を持たざるを得ない状況に変化してきたからだと考えられます。いまや塾の選定から受験校の選定、そして、塾の送り迎えまで父親が行うことも珍しいことではありません。 小学校、中学校の受験を考える時、まだ子どもたちに判断力や理解力が乏しいため、志望校の選択から準備まで、すべて親の指導で行われます。その親でさえ、学校選択で揉めることが多々あります。主体は子どもであるはずなのですが、私立か国立か、一貫校かで夫婦の対立が起こることもしばしばです。受験に対する意見の違いから離婚にまで至ったケースや、親が望む学校に行かせるために引っ越しをしたり、住民票を移し替えたりするケースもあり、家庭崩壊に陥った家族もあります。 また、最近では、母子家庭や父子家庭の家庭も増え、祖父母の積極的な関わりも新たな傾向として見えてきました。一人の子どもに対する過度な期待が、時に行き過ぎた行動につながってしまうのです。◆教育に熱心な父親のタイプ 私はこれまで、民間教育の現場で幼稚園受験・小学校受験・中学校受験、そして、高校受験に携わってきましたが、実際に受験として父親が深く関わってくる時期が中学受験です。幼児期の受験と違い、父親の存在感を示すことができるからです。それは、学習面や知識など、社会人としてのこれまでの経験を生かせると考えるからでしょう。 わが子の教育に対して熱心な父親のタイプは、おおよそ次の4つに分けられます。(1)学歴こそ低いものの比較的高収入の父親(2)高学歴で、自分の成功体験を子どもに押し付ける父親(3)高学歴でありながら途中挫折した父親(4)学力にコンプレックスを抱え、自分の子に夢をかける父親 高学歴の父親は、子供の学力が平均より高い場合、より学習指導に厳しくなる傾向があります。それは、子どもの学力の高さが、その先の高学歴人生を連想させ、父親の期待感が高まるからと考えられます。 一方、父親が低学歴でも比較的高収入の場合、自分の過去から、子どもには苦労させたくないと、できるだけ早い時期から積極的に習いごとに通わせたり、勉強を無理やり“させる”傾向を示します。もちろん、子どもの教育に熱心な父親はいつの時代でも存在し、わが子に対する当たり前の接し方ともいえます。子どもに目を向けてみても、そんな父親の教育熱心さに応えるように、父親の言動や行動を認め、従順な態度や対応を示します。そのため、一生懸命に勉強します。 しかし、まだ幼い小学生は受験という「ゴール」が本当に自分の望むゴールなのか判断がつきません。成長の途中にある中学受験の怖さはここにあります。このことを父親としても認識しておかなければなりません。親の言うとおりにすることで、子どもは実はそれがとても楽なことだと錯覚します。つまり、自分を支える力、自分を理解する自尊感情が育たないのです。◆教育虐待に走る親のタイプ そして、子どもへの過度な期待がエスカレートし、暴力をふるうなど「教育虐待」にまで至る父親の行動は、わが子に対する期待と愛情のアンバランスから起こると考えられます。 子供の成績から過度な期待を抱き、わが子を思う気持ちが溺愛に代わり、その先に、子どもを自由にコントロールできると勝手に考えてしまうのです。受験を通してわが子を、人格を持つ一人の人間として扱えない父親の姿は、自分の描く理想像を子どもに投影しているだけに過ぎません。 その背景には、父親自身の人生観や、今おかれている社会的立場、過度な人的ストレス、自分の思い描く社会的地位とのギャップなど、複雑な要因が入り交じり、父親の“心の迷走”を感じ取ることができます。すでに、自分自身を冷静に、そして客観的に見られない状態になっており、子どもの受験に関しても自分より身分的・地位的に上の人か、権威ある教育や受験の専門家の意見以外は聞く耳を持たないのが特徴です。 こうした父親に共通する教育方針として、次のような内容が浮かび上がってきました。もちろん、受験だけに固執せず、良い面もありますが、過干渉といわれても仕方のない面は否めません。・幼いころから習い事や塾、スイミングスクールなどに通わせる・約束を守れない場合、体罰を与える。食事をさせない、外に出す等。・口答えは許さない。・見るテレビの制限をする(ニュース番組・健全なアニメなど)・友人との連絡を禁止する。遊びに行くことも、家に招くことも禁止する・毎日の学習の確認をする(テスト結果の報告、学習内容の説明など)・博物館、展覧会などに連れていく・子供とは率先して関わる。遊びも付き合う・成果が上がらない場合、すぐに塾や先生を変える◆子どもと父親「ゴールの違い」 当然のことですが、中学受験は子ども自身の目標であり、入試までの過程には何度も繰り返されるテストがあり、その都度、子どもの頑張りや評価すべき通過点があります。 しかし、父親の考えるゴールには「合格」の二文字しかなく、それ以外はすべて否定的な捉え方をします。模擬試験の結果などはその最たるものです。結果が悪ければ、今まで以上に指導に熱が入ります。そして、子どもの学習時間も深夜まで及び、寝不足で学校の授業にまで支障が出るほどです。 そうした親の厳しすぎる指導で取り組んだ受験は、子ども自身のゴールではなく、合否の結果がすべてという父親のためのゴールともいえます。認知心理学の用語では、学習の結果として表れる成績や、親や先生など周囲からの称賛を目標としたゴールを「パフォーマンスゴール」と呼びます。 本来は、子ども自身が日ごろの努力や受験勉強の成果の積み重ねから学べるゴールでなければなりません。これを「ラーニングゴール」と言います。結局、親の顔色をうかがいながら過度な期待を背負って受験に挑む子どもは、指導のつらさに耐えきれず、自分自身を追い詰めてしまうこともありますし、仮に不合格という結果を突きつけられれば、小さな心にさまざまな重荷となってのしかかります。◆パフォーマンスゴールと自尊感情 2016年に名古屋市で父親が中学受験に挑んでいた小学6年生の子どもを刺し殺すという事件がありましたが、これも、過度な親の受験教育・受験思考から、親の“心の暴走”と見ることができます。 一方、親の過剰な干渉や指導による反動が間違った方向に出てしまう子どももいます。2008年6月に東京・秋葉原で無差別殺傷事件(通り魔殺傷事件)が起こりました。当時25歳だった元派遣社員の男(加藤智大死刑囚)の犯行でしたが、彼は地元の進学校に進むも高校時代に成績不振に陥って挫折します。その後の調査で、犯人の母親がかなり教育熱心で厳しい親であることがわかりました。 犯人は、自己否定感に陥り、将来を悲観して通り魔という暴挙に出ます。親の意のままに育ってきた子は、周囲からは実に「いい子」なのですが、思春期になり、自分を見つめ直していく過程で、自らのゴールを模索し始めます。不登校になる生徒の多くに、こうした「いい子」の存在があります。思春期に至る過程で自己への渇望があるように思います。◆その先にある子どもの心の崩壊 しつけと虐待の違いは、実にはっきりしています。自分の考え方に従わせる行為そのものは指導でもなければしつけでもありません。それは、服従であり、飼育と言います。 コントロールすべきは父親自身の行動や感情で、命令や、時に暴力を用いて従わせること自体をしつけとは決して呼びません。子どもの良き伴走者であるべき父親が、社会で活躍する手本となるべき父親がとるべき行動ではないと思います。自分の描く夢のゴールを、さも、子ども自身が望むゴールと勘違いしている。子どもにとっては、自分自身を見出したゴールではないのです。 子どもたちには、中学受験の先にもたくさんのゴールがあります。それぞれが次のステップとなるよう、学ぶためのゴールです。親は人生の先輩として、子どもの先を歩んでいます。だから、子どものためと思い、自らが子供の人生設計をしてしまうのでしょう。しかし、場合によっては、その道は「これで良いのだろうか」と自分自身で歩まされてきた道かもしれません。たとえ過去において成功例であったとしても、多様化する今の時代にはそぐわずに通用しないパラダイムになっている可能性が大きいのです。
2019.07.06 07:00
NEWSポストセブン
平成20年を振り返る、秋葉原殺傷事件や飯島愛さん逝去など
平成20年を振り返る、秋葉原殺傷事件や飯島愛さん逝去など
 いよいよ残りわずかになった平成の時代。どのような出来事が起こっていたのか? 平成20年(2008年)を振り返る。 リーマン・ショックの影響を受け、日本でも株価は急落。景気の冷え込みも悪化の一途。企業の派遣切りや雇い止めが深刻化したこの年。  4月には75才以上を対象とした後期高齢者医療制度が開始。だが、年金額18万円以上の人からの保険料天引きに「姥捨て山」等の批判が上がった。 中国・四川で死者・行方不明者、約8万人を超える大地震が起こった翌月、日本では岩手・宮城内陸地震が発生。マグニチュード7.2。大規模な土石流が旅館をのみ込むなどの被害で死者・行方不明者は計23人。 休日の白昼。東京・秋葉原のホコ天を惨劇が襲った。6月8日12時半頃、派遣社員の加藤智大(現・死刑囚)がトラックで交差点に突っ込み、通行人5人をはねた後、ナイフで買い物客ら12人を次々に刺した。 この無差別殺傷事件で7人が死亡。10人が重軽傷を負った。現行犯逮捕された加藤は犯行前、ネットの掲示板に犯行予告をほのめかす書き込みをしていたほか、「勝ち組はみんな死ねばいい」等、社会への不満と自分勝手な疎外感を表す言葉を綴っていた。 明るいニュースでは、ノーベル賞(物理学賞に益川敏英氏、南部陽一郎氏と小林誠氏、化学賞に下村脩氏)で日本人4人が初の同時受賞。 芸能界の訃報では名優・緒形拳が肝がんで急逝。また、AV女優からタレントに転身し引退前までバラエティー番組に引っ張りだこだった飯島愛が突然の死。クリスマスイヴの夜、多くのファンが涙した。 大ヒット映画では『崖の上のポニョ』。主題歌を歌唱した大橋のぞみも注目を浴びた。そのほかNHK大河ドラマ『篤姫』も高視聴率。ヒット商品では健康志向が高まり、自宅で運動が楽しめる『Wii Fit』(任天堂)が人気。朝バナナダイエットも話題となった。 この年の流行語は「アラフォー」「蟹工船」「グ~!」など。■平成20年の主な出来事1月22日 中国製餃子中毒事件が発生3月20日 浅田真央が世界フィギアスケート選手権女子シングルで初優勝6月8日 秋葉原無差別殺傷事件が発生6月14日 岩手・宮城内陸地震が発生。死者・行方不明者は計23人8月8日 北京五輪開幕。レスリング女子55kgの吉田沙保里が五輪連覇(16日)9月13日 『H&M』が東京・銀座に日本1号店オープン9月15日 米・『リーマン・ブラザーズ証券』が経営破綻9月24日 福田内閣総辞職、麻生内閣発足10月5日 俳優の緒形拳が死去(享年71)10月10日 ロス疑惑の三浦和義が米・ロサンゼルス市警察署拘置施設内で自殺(享年61)11月4日 米・第44代大統領に民主党のバラク・オバマが当選11月4日 小室哲哉が5億円の詐欺容疑で逮捕12月24日 飯島愛が自宅マンションで孤独死で発見(享年36)12月31日 東京・『新宿コマ劇場』が閉鎖※女性セブン2019年1月31日号
2019.01.22 07:00
女性セブン
秋葉原事件など無差別殺傷事件の犯人の多くはなぜ男なのか?
秋葉原事件など無差別殺傷事件の犯人の多くはなぜ男なのか?
 過去の無差別連続殺傷事件を振り返る。 新幹線殺傷事件の小島一朗をはじめ、附属池田小児童殺傷事件の宅間守、神戸連続児童殺傷事件の少年A、土浦連続殺傷事件の金川真大元死刑囚、秋葉原通り魔事件の加藤智大死刑囚、そして、相模原障害者施設殺傷事件の植松聖被告…。 日本中を震撼させる犯行に及んだ犯人はいずれも男性だった。 無差別の凶悪犯罪に及んでしまう心理に、性差は関係するのか。犯罪心理学に詳しい筑波大学人間系教授の原田隆之さんが解説する。「確かに過去の無差別殺傷事件の犯人は圧倒的に男性が多い。理由として考えられるのは、男性ホルモンに含まれる『テストステロン』という物質です」「テストステロン」には骨や筋肉の強化や性機能の維持など、男性にとって重要な役割を持つ一方で、攻撃性や粗暴さを高める面も持っている。「もちろん、男性であることそのものが犯罪に結びつくわけでは決してありません。大きな犯罪が起きる背景には、家庭不和やアルコール乱用など、さまざまな要因がある。その中の1つを取り出してあげつらうのは危険です。犯人のパーソナリティーや置かれた環境、脳の状態など、生物学的な面と心理学的な面の両方から分析することが求められています」(原田さん)※女性セブン2018年7月12日号
2018.07.02 07:00
女性セブン
秋葉原事件・加藤智大の父「10年という節目の数字に意味ない」
秋葉原事件・加藤智大の父「10年という節目の数字に意味ない」
 児童虐待など「親の資格」を問われるような事件が頻発する一方で、子供の罪に向き合い、極限の生活をしている親がいる。10年前に秋葉原通り魔事件を起こした加藤智大死刑囚(35才)の父親(60才)である。 青森県青森市の閑静な住宅街の中で、事件発生以来引っ越すこともなく暮らしている加藤死刑囚の父。「近所づきあいが一切なく、話すこともない」「夜でも電気すらつけていない。本当に生きているのかと思うこともある」「ろうそくを灯して生活しているらしい」 近隣住人がこう口を揃えるように、他者とかかわらずに生きることを選んだ父親は、地域内ではいまだ“異質の存在”として浮いていた。「でも、そうやって社会から離れつつ、町内会費だけはちゃんと納めてくれるんです。せめてもの償いなのでしょうか…」(近隣住人) 加藤死刑囚の弟は2014年に自殺し、母親は事件後に入院した。事件を境に、文字通り崩壊した家族の人生。仕事から帰宅した父親に話を聞いた。──事件から10年という節目を迎えました。「とくにお話しすることはありません。誰にも、なにも、話さないように暮らしていますので」──どのような思いで事件当日を迎えましたか?「いや、なにも…」──昨今、同じような連続殺傷事件も起きています。「…」 うつむきながら沈黙する父親だが、次の質問を向けると、応対が変わった。──10年経って、今でも事件を思い出すことはありますか?「…10年って、みなさんはそうやって節目、節目、と言いたがりますよね。でもね、私にとって10年経った、などという数字はなんの意味もないんです。私だけでなく、被害者のかたがたも含めて」──今年はとくにそういった報道が多かったですが?「いえ、新聞やテレビなどの報道は、一切なにも見ないようにしています」──息子さんとはお会いしていないのですか?「会っていないです」──それはなぜ?「…」──弁護団とも会っていないのですか?「はい、会っていません」 そう話すと、頭を下げて自宅に戻っていった。呪いたくなるほど重い運命を背負いながら、それでも生きる親の姿がそこにあった。※女性セブン2018年7月12日号
2018.06.29 07:00
女性セブン
佐藤優と片山杜秀が語る朝鮮国連軍、田母神論文、秋葉原事件
佐藤優と片山杜秀が語る朝鮮国連軍、田母神論文、秋葉原事件
 作家の佐藤優氏と思想史研究家の片山杜秀氏が「平成史」を語り合うシリーズ。今回は、2008年(平成20年)~2011年(平成23年)の出来事を振り返る。2人は、不満を抱く人間の憎しみの対象が個から“場”に変化したと語り合った。佐藤:昨年11月、トランプがアメリカ大統領になってはじめて来日しました。注目すべきは、横田基地に降り立ったことです。なぜ羽田空港ではなかったのか。話は11年前に遡ります。2007年11月にキャンプ座間に置かれていた朝鮮国連軍(※注1)の後方司令部を横田基地に移した。実はいまだに朝鮮戦争時に組織された多国籍軍の後方司令部が日本に置かれているんです。【注1/1950年6月の朝鮮戦争で創設された多国籍軍。本部はソウル。後方司令部は横田基地に置かれる。豪空軍所属の司令官ら3名が後方司令部に常駐。英、仏など8カ国の在京大使館に、連絡将校として駐在武官も駐留。】片山:とすると北朝鮮は、トランプが国連軍を激励しにきたと考えるのでは。佐藤:だから横田で行ったトランプ演説は北朝鮮を激しく刺激しました。片山:北が朝鮮戦争の休戦協定を破ったら、横田が真っ先に攻撃対象になる危険性があるということですね。しかし国連軍後方司令部という肝腎の話は日本ではまったく報じられなかったのではありませんか。佐藤:メディアを含めて、そこに気付いた人はほとんどいなかった。いえ、そもそも朝鮮国連軍が日本に駐在している事実すら知らない人が多いんです。 一方で、興味深いのは、外務省のHPで、こっそりと朝鮮国連軍の存在や移転のニュースが広報されていること。積極的にアナウンスはしないけれど、黙っていることのリスクも承知している。あとで、知っているのになぜ言わなかったんだ、との誹りを受けたくないんですよ。古巣だから、彼らの習性はよくわかります。後方司令部が横田に移転した翌年の2008年にも日米安保に一石を投じる出来事が起きています。 10月に発覚した田母神論文問題(※注2)です。航空幕僚長の田母神俊雄さんが、アパグループが主催する懸賞論文の最優秀賞に選ばれた。彼の論文は日中関係の文脈で注目を集めましたが、実は反米主義者の田母神さんが航空自衛隊のトップだったことが内外に明らかになってしまったことが、更迭の原因です。【注2/田母神俊雄航空幕僚長が「日中戦争は侵略戦争ではない」「日米戦争はアメリカによる謀略」「日本は集団的自衛権を容認すべき」などとする論文を発表。政府見解に反するとして更迭された。】片山:田母神さんの歴史観は自衛官としても異色でした。独学で築いた彼の歴史観を評価したアパの元谷外志雄さんとは、どんな方なんですか?佐藤:一度だけ対談をしたことがあります。元谷さんは藤誠志(ふじせいじ)というペンネームで言論活動を行っています。すごい迫力の人ですよ。しかも安倍さんとも親しかった。かつては表には出てこなかったタイプの元谷さんや田母神さんがこの時期に権力の中枢にアクセスしはじめた。◆権力に簡単に近づける片山:昨年騒動になった森友、加計学園の問題にも通じますね。自民党の古き良き昭和もちろん弊害も多かったでしょうが、かつての人間関係の中心は、学校の同窓会であり、政治家なら後援会であり、血縁・地縁であり、良くも悪くも見通しがよかった。でも平成に入ると、その秩序が機能しなくなってくる。政治家も政党も企業も学校すら流動化して背景が見えにくくなる。個人と個人との地下でのつながりが実は権力に影響を及ぼしている。佐藤:制度化されたキャリアを歩んでこなかった人たちも簡単に権力に近づいていけるようになった。おっしゃるように平成を語る上で欠かせない変化といえるかもしれません。片山:それは小選挙区比例代表並立制の影響が大きい。そこに新規の政党の登場が絡む。地盤も看板もなく、前歴も分からない人物が突然当選して表舞台に登場する。その後、不祥事が起きてみんなはじめて知るのです。「そんな政治家がいたのか」と。 政界だけでなく、一般社会も同じですね。誰も知らない派遣社員がいつの間にか職場にいて、気がついたらいなくなっている。佐藤:非正規雇用の問題は第2次小泉内閣下に遡ります。規制緩和が雇用政策にも及び、派遣労働が原則自由化された。その結果、2008年9月のリーマン・ショックが引き起こした不況で派遣切りが問題になり、年末には日比谷公園に年越し派遣村(※注3)が開設された。【注3/派遣切りや雇い止めにあった失業者の宿泊所。2008年の年末から年始にかけて日比谷公園に開設された。入村者は500人を超えた。】片山:派遣問題の延長線上に、同年6月の秋葉原事件(※注4)もあるのでしょう。【注4/2008年6月、元派遣社員の男が17人を殺傷した無差別通り魔事件。ネット上の掲示板に犯行を賞賛するコメントが多数寄せられた。】佐藤:秋葉原にトラックで突っ込んだ加藤智大は「みんな不幸になればいい」と考えた。人生の幸、不幸に顔や学歴は関係ない。すべては運だ、と。運が悪ければどうなるか、証明しようと凶行に走ったのです。片山:戦前、社会に対する不満を抱く人間は、原敬や団琢磨など権力を持つ特定の誰かを狙った。しかしいまは権力のシンボルが存在しないから特定の個人に収斂しない。 憎しみの対象は、豊かに暮らしていそうな人。楽しく生きていそうな人。その象徴が秋葉原だった。ターゲットは個ではなく“場”です。その意味では昨年立て続けに起こったパリのシャンゼリゼ通りや、マンチェスターのコンサート会場で起きたテロとの共通点も見いだせますね。●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。※SAPIO 2018年1・2月号
2018.02.04 07:00
SAPIO
波紋呼ぶ元少年Aの手記「せめて名前出すべきだった」の声も
波紋呼ぶ元少年Aの手記「せめて名前出すべきだった」の声も
 1997年に発生した神戸連続児童殺傷事件。犯人として逮捕された当時14才の少年Aによる手記『絶歌』(太田出版)が発売された。手記の出版を知らされていなかった被害者遺族たちは、怒りに震えた。殺害された土師淳(はせ・じゅん)くん(享年11)の両親は6月10日、こんなコメントを出した。「彼に大事な子供の命を奪われた遺族としては、以前から、彼がメディアに出すようなことはしてほしくないと伝えていましたが、私たちの思いは完全に無視されてしまいました。なぜ、このようにさらに私たちを苦しめることをしようとするのか、全く理解できません。(中略) もし、少しでも遺族に対して悪いことをしたという気持ちがあるのなら、今すぐに、出版を中止し、本を回収してほしいと思っています」 さらにある情報番組に出演した際には、「子供は2度殺された」と語っている。 当時、Aに腹部を刺されながらも一命を取り留めた被害者の少女(当時9才)の母親が、かつて女性セブンに話した悲痛の叫びがよみがえる。「娘はいまだに静かな場所を一人で歩けません。テレビドラマを見ていても、殺人の場面になると悲鳴を上げて泣き出します。トラウマが消えないんです。二度と出てこないでほしいと、心から思います」 事件の後遺症に悩む被害者家族にとって、Aの手記は正気を保てる内容ではない。手記の発売後、アマゾンでは瞬く間に900件超のレビューが書き込まれ、大いに荒れた。《あまりのおぞましさに寒気がする》《世に出してはいけない本》《書店でも子供の目の触れる所に置くべきではない》 世の母親たちからも非難の声が噴出した。「淳くんと同じ年頃の娘を持つ身として、この手記の出版は理解できません。私は幼児虐待のニュースを見るだけで心を痛め、チャンネルを変えてしまうほどです。親ってそういうものです。子供の殺害の描写まで細かく書くなんて、もし遺族が読んだらどうなってしまうか…。“遺族のかたに心からお詫び申し上げます”と言いながら、彼は本当のところでは、何も反省していないんでしょう」(40才主婦)「自分が注目されたいだけの単なる自己満足でしかない。遺族を悲しみのどん底に突き落としておいて、自分は印税で大金を得るなんて許せません。今からでも発売中止にするべきです」(38才主婦)「市橋達也や加藤智大とか、遺族の許可なく獄中手記を出した殺人鬼は何人もいるので、手記を出すこと自体は問題ないと思います。ただ、せめて名前は出すべきだった。事件当時は未成年だったかもしれないけど、今はもう32才なんだから」(45才主婦)※女性セブン2015年7月2日号
2015.06.18 07:00
女性セブン
凶悪犯が酒鬼薔薇聖斗に憧れ宅間守や加藤智大に憧れない理由
凶悪犯が酒鬼薔薇聖斗に憧れ宅間守や加藤智大に憧れない理由
 千葉県柏市で起きた連続通り魔事件の竹井聖寿(せいじゅ)容疑者(24才)は、ネットで尊敬する人として、神戸連続児童殺傷事件(1997年)の「酒鬼薔薇聖斗」の名前を挙げていた。しかし、この通り魔犯だけではなく、数多くの犯人たちも、彼への憧れを口にしている。 なぜ、彼らはこうも酒鬼薔薇に憧れるのか。精神科医の和田秀樹氏は、その背景として、格差社会とネット文化を指摘する。「現代の格差社会において、竹井容疑者のような無職や非正規社員の人たちは、現実に背を向けてネットの世界に逃げ込みやすい。鬱屈した彼らの中には、社会への恨みを抱く一方で、“おれだってデカいことができるんだ!”という自己顕示欲が人一倍強い人が出てきてしまうんです」 そうして、いつしかネット住人の中に“殺人”という手段で世間の注目を集めて自分を認めてもらおうとする過激な人間が出てきた。 そんな彼らにとって、最も記憶に残る、センセーショナルな殺人犯というのが――「酒鬼薔薇なんです。竹井容疑者も含め、酒鬼薔薇を崇拝する人々は、皆、小さい頃にあの事件をテレビで見て、日本中が騒然となった様子を肌で感じた世代です。彼らにとって酒鬼薔薇は“時代の寵児”なんです。 同じ凶悪殺人犯でも大阪の宅間守死刑囚(2004年執行)や秋葉原の加藤智大被告が崇拝の対象になることが少ないのは、少年ではないうえ、名前も写真も公表されているからでしょう。 酒鬼薔薇は若い世代にとって猟奇殺人の“元祖”なうえ、本名も顔写真も公開されておらず、そのことが彼らにとって、ある種の“神秘性”を感じさせる結果になってしまったのでしょう」(前出・和田氏)※女性セブン2014年3月27日号
2014.03.15 07:00
女性セブン
高齢者による犯罪が増加 理由に「絆欠ける社会的な孤立」も
高齢者による犯罪が増加 理由に「絆欠ける社会的な孤立」も
 今の日本に顕著な傾向として、高齢者による犯罪が増えているという。65才以上の高齢犯罪者は、1992年の統計と比べると、2012年の暴行罪は約58倍、傷害罪は10倍に増加している。殺人を犯す高齢者もこの20年間で増加しており、2012年の検挙者数は148人に達する。その理由のひとつが孤立だというのだ。 犯罪に詳しい慶応大学法学部の太田達也教授が言う。「一般的には経済格差や福祉の遅れが主要な要因とされますが、私はそれだけでなく“社会的な孤立”が犯罪を助長していると思います。実際に調査をすると、犯罪を犯す高齢者は独居世帯や夫婦だけの世帯が多く、家族の支援や絆に欠けている人が多かった。こうした孤立が高齢者を犯罪に向かわせていると考えられます」 実はどの世代でも、この“喪失感”が犯罪を助長している。 2008年6月に起きた「秋葉原通り魔事件」(7人死亡、10人負傷)も、この“喪失感”によって引き起こされている。事件を起こした加藤智大被告(30才)は、ネット上のトラブルから掲示板での交流が断たれ、さらに仕事と職場の友人を失うことで社会的な絆を断ち切られると思いこんだ。事件後、手記で次のように心情を吐露している。〈孤立とは、社会との接点を失う、社会的な死のことです〉(加藤智大著、批評社『解』より引用) そして、心の通い合わない母親の存在が事件の遠因であるとも綴る。母親への口答えすら許されなかった彼は、他者とのトラブル時に、相談や口喧嘩という当たり前の解決策さえ持ち合わせていなかったことが窺える。加藤被告はこうも綴る。〈もし私が人に相談していたなら、事件は回避された可能性があります〉(同引用) 他人や地域との交流が人の心を育て、人殺しを瀬戸際で止める“最後のブレーキ”となると東京工業大学名誉教授(犯罪精神医学)の影山任佐名誉教授は主張する。「人間関係が希薄だとちょっとした刺激が引き金になり、重大犯罪にいたります。身の回りに支えてくれる人間関係があり、将来に向けての人生行路がしっかりしていれば、殺人事件は起きない。ギリギリのところで殺人を防ぐことができるのです」 わが身に降りかかるかもしれない殺人事件をいかに防ぐのか。それはあなたの周囲にもいる、殺人予備軍の人物を孤立させないことにある。しかし、一方でそうした危ない人物との接触を避けることもリスク回避のうえで欠かせない。相矛盾する極めて難しい対応が、今、私たちに突きつけられている。※女性セブン2013年10月10日号
2013.10.02 16:00
女性セブン
秋葉原無差別殺傷事件犯の生い立ちや事件前の日常を追った本
秋葉原無差別殺傷事件犯の生い立ちや事件前の日常を追った本
【書籍紹介】『秋葉原事件 加藤智大の軌跡』中島岳志・著/朝日文庫/735円 2008年に秋葉原で起こった無差別殺傷事件。犯人の生い立ちから事件発生直前の彼の日常までを、丹念にかつ淡々と追い続けたノンフィクション。犯人の動機や事件の原因を性急に求めるのではなく、事件が起こったこの社会について考えさせてくれる。※週刊ポスト2013年7月12日号
2013.07.01 16:00
週刊ポスト
市川海老蔵、内柴正人、市橋達也、加藤智大の裁判の様子とは
市川海老蔵、内柴正人、市橋達也、加藤智大の裁判の様子とは
 東京地裁では数多くの裁判が行われている。その傍聴は無料でできるが、世間の注目度が高い裁判のときには、抽選のために長い列を作って傍聴券を求める。裁判というのはどれも陰影に富み、奥行きが深いと前置きしたうえで、著名人の裁判の様子を作家の山藤章一郎氏が報告する。 * * * マニアにいわせると、傍聴人の数は近年、激増しているという。年金暮らし、早期リタイア組、主婦グループ、ニート、学生。殊に、著名人の裁判は希望者がふくれあがり、抽選になる。〈司法統計〉によれば、東京地裁が1年に受け付ける事件の数は、刑事が1万と少し、民事は13万件を超す。それだけの数の人生の現実が眼前に突き出されて、好奇を掻きたてられる。 少し日が経った法廷だが。市川海老蔵殴打・初公判──。被告人と同席していた証人がなまなましく答える。「海老蔵さんも立ち上がり、テーブルの灰皿を持ったまま(被告人の)胸倉を掴みました」 証人は「おまえいい加減にしろ」と海老蔵に詰め寄る。(すると)「海老蔵さんが(私の)鼻の下あたりをめがけ、何もいわずにチョーパンしてきました」 検察官が、「チョーパンは頭突きのこと」と説明し、それほどすごい衝撃があったのかと問う。「ボクシングのフラッシュダウンみたいな。拳と同じくらいでした」 アテネ、北京両オリンピック男子柔道金メダリスト、内柴正人被告の〈準強姦罪〉初公判──。傍聴席の視界をさえぎる衝立の奥で、防犯カメラの映像再生を操作する音が聞こえている。「データーが重いんで」と手間取る検察官の声も。 内柴被告は直立不動の姿勢で、被告人席の小型モニターにじっと視線を向けている。再生が始まった。だが、傍聴席に映像は流れない。代わりに、女性の笑い声が聞こえる。「キャハキャハ」ひびく。傍聴席に、しわぶきも、息を飲む音もない。「キャハキャハ」また「キャハキャハ」。 つづいて、検察官は女被害者の友人たちの供述調書を読む。「部屋で寝ていたら被害者(A子さん)が来ました。目を真っ赤にして『うち、やられたわ』といいました」だが、対する弁護人は「(A子とは)合意の上だった」と申し立てる。「被害者は、性的興奮からあえぎ声をあげていました」廊下から部屋のドアがノックされ、「(内柴被告人は)性交を途中でやめ」「また性交を再開した」。 翌日のバスの中で(A子は)友人に「『めちゃへたやったんやけどな』などと苦笑して話しました」と、むきだしである。 もうひとつ、英国人女性殺害・市橋達也被告初公判(千葉地裁)の傍聴席もリアルだった。市橋の使ったコンドームなどの映像がモニターに映しだされた。 最近の法廷は、機器を使って生き生きと審理していく。コンドーム1個についていた精子のDNA型が、市橋被告のものと一致した。また、被害女性の細胞もついていたと、映像を示しながら検察官が告げる。強姦のコンドームである。傍聴席の被害者の母が、両目に手、指を押し当てる。震えが止まらない。 検察はさらに殺害現場の遺留物を映しだしながら、説明していく。 被害者の髪、粘着テープ……廷内に、凄惨が拡がる。母ばかりか父も嗚咽をこらえる。傍聴席が涙することは多い。 秋葉原で無差別に7人を殺害した加藤智大の公判──。 現場に遭遇した人物が証言に立った。多くの証人が加藤被告とのあいだにガード板を要求したが、この人は堂々と姿を現わし、一瞬、傍聴席にどよめきが起きた。 血まみれの人が仆(たお)れている脇で、男(加藤)がダガーナイフを突きつけてきた。周りは死者、負傷者の血の海で、大勢が叫びをあげ、男は返り血を浴びて走りまわっている。パトカーはまだ来ない。白昼の修羅だった。 そしてその場面を見い出して、この証人は静かに泣き声をあげた。私はなにもできなかった。なぜ勇気がなかったのか。ひとりも助けられず、その場にいた自分は何をやっていたのかと。「現場にはあの時以来、行ってなかったんですが、今日、ここに来る前に、現場に……(泣き崩れる)あんだけの人を助けられなかったお詫びを、自分なりにしてきたつもりで」 傍聴席にすすり泣きが拡がった。※週刊ポスト2013年7月5日号
2013.06.29 07:00
週刊ポスト
秋葉原事件・加藤の本低調なのは内容身勝手だからと香山リカ
秋葉原事件・加藤の本低調なのは内容身勝手だからと香山リカ
【書評】『解』(加藤智大/批評社/1785円)【評者】香山リカ(精神科医) 17人が殺傷され、世間を震撼させた「秋葉原無差別殺傷事件」。その犯人で死刑判決を受け、現在控訴中である加藤智大の著作『解』が出版されたが、市橋達也被告の手記とは違い、ほとんど話題になっていない。なぜか。それは、内容があまりに身勝手で、かつ理解不能だからだ。 唯一のよりどころとしていたネット掲示板で、加藤は「不細工スレの主」という独自キャラを確立させ、そこで活発に他者とやり取りもしていた。ところがあるとき、そこに「成りすまし」が登場し、自分に対する書き込みに勝手に返信しているのを発見した。 加藤は大きな衝撃を受け、「私は私でなくなってしまって」いるという感覚に陥り、自分は「殺された」とまで感じる。そこで感じた怒りこそが、自分を無差別殺人に駆り立てた、と加藤は説明する。相手を裁くために「心理的な痛み」を与えよう、と事件を思い立つ。 またそこに至る心理的過程には、「自分が絶対に正しい」という価値観など独善的で厳格な両親とくに母親からの影響が大きい、と加藤は自己分析している。「成りすましを裁くための犯行」といった突拍子もない思いつき、また自分の問題点をすべて母親からの影響と分析する態度を追っていくうちに、読者はたまらない不快感を覚え、おそらくは途中で本を閉じてしまうだろう。 しかし、考えるべきことはいくつもある。まず、本当に精神鑑定は必要なかったのか、ということだ。もちろん、これほどの犯罪となれば「責任能力なし」という結論はありえないことはわかるが、それは鑑定を回避する理由にはならないはずだ。彼が執拗に語る「成りすまし」は本当に存在したのか、妄想あるいは多重人格のひとつである可能性はなかったのか。 そしてもし鑑定の結果、問題がないとしたら、ここまでの孤独、空虚、自暴自棄はどこから来るのか、も考える必要がある。「彼はあまりに特異なモンスター」では決してすまされないような問題がここにはある。私はそう考える。※週刊ポスト2012年9月14日号
2012.09.08 07:00
週刊ポスト
加藤智大被告 秋葉原で殺傷事件を起こした理由を説明した
加藤智大被告 秋葉原で殺傷事件を起こした理由を説明した
 世間を震撼させた秋葉原17人殺傷事件。同事件の被告・加藤智大は拘置所で獄中手記を綴っていた。週刊ポスト取材班は加藤被告本人が事件の全貌とそこに至るまでの胸中を綴った手記『解』(批評社)を出版予定という情報を得て、関係者への取材を開始。そして7月中旬に発刊予定という手記を独占入手した。 * * * ネット上のトラブルがなぜ現実世界の無差別殺傷事件に繋がるのか。その点を、加藤被告はこう述べている。 〈ひとつ言えるのは掲示板でのトラブルだったから、ということです。成りすましらはどこの誰なのか、全くわかりません。(中略)成りすましらはどこの誰なのかわからないために、殴るといった直接の物理攻撃も、にらむといった直接の心理攻撃も、不可能で、何かを通して、間接的に攻撃をするしかなかった、ということです。 (中略)そこで、何故私が大事件を起こしたのかに心当たりのある成りすましらは、「ヤバい」「大変なことになった」「俺のところにも警察が来るかも」「マスコミにバレたらどうしよう」「何か責任をとらされるのか」等と、焦り・罪悪感・不安・恐怖といった心理的な痛みを感じることになるはずでした〉  大事件の舞台として選ばれたのは秋葉原だった。 〈無差別殺傷事件だったのは、近年大きく報道されていた事件として記憶していたのが無差別殺傷事件だったからだと思われます。その事件の凶器がナイフだったから、私もナイフを思い浮かべたのだと思います。(中略)日曜日なのは秋葉原の歩行者天国が思い浮かんだからで、秋葉原なのは、大事件は大都市、大都市は東京、東京でよく知っているのは秋葉原、という連想だったと思います〉※週刊ポスト2012年7月20・27日号
2012.07.18 07:01
週刊ポスト
秋葉殺傷加藤 動機は「掲示板の嫌がらせやめてほしかった」
秋葉殺傷加藤 動機は「掲示板の嫌がらせやめてほしかった」
 加藤智大被告は2008年6月に東京・秋葉原で17人を殺傷(7人死亡、10人負傷)した罪に問われ、1審で死刑判決とされた。被告側は「死刑は重すぎる」と主張して控訴。だが第2審では姿を見せぬまま結審を迎え、判決は9月12日に下る。  なぜ加藤被告は「無差別殺人」という「狂気」を宿したのか。その心の闇を解く鍵が、加藤被告本人が拘置所で綴った獄中手記にあった――。週刊ポスト取材班は加藤被告本人が事件の全貌とそこに至るまでの胸中を綴った手記『解』(批評社)を出版予定という情報を得て、関係者への取材を開始。そして7月中旬に発刊予定という手記を独占入手した。 * * * 加藤被告は、全国で職を転々としてきた。埼玉の自動車工場、茨城の住宅関連部品会社、静岡の自動車工場……。派遣労働を繰り返していたという事実、そして事件発生が退職直後ということで、就職氷河期に悩む若者の「鬱屈」についての議論が喚起された。だが、事件の背景に「格差社会の歪み」があるのではないか、との見立てに対し、加藤被告は公判で一貫して否定している。犯行動機についてはこう主張し続けた。 「ネット掲示板上の成りすましなどの嫌がらせをやめて欲しいとアピールしたかった」  加藤被告が憎悪の対象とする「成りすまし」とは、加藤被告が利用したネット上の掲示板において、加藤被告を装いコメントを書き込むユーザーを指している。  加藤被告にとって、掲示板とはネット上における“ただの”ツールではない。  公判では一部分しか表にでなかった事件の核心部が手記には綴られている。 〈掲示板と私の関係については、依存、と一言で片づけてしまうことはできません。(中略)全ての空白を掲示板で埋めてしまうような使い方をしていた、と説明します。空白とは、孤立している時間です。孤立とは、社会との接点を失う、社会的な死のことです〉 “社会的な死”を加藤被告が最初に意識したのは、茨城の工場で派遣労働をしていた2006年のことだった。激務が続き、このままでは友人との交流を続けられなくなると工場を辞めた。 〈その結果、仕事を失ったことで、私と社会との接点はひとつも無くなりました。孤立です〉  加藤被告は手記の中で、肉体的な死よりも社会的な死の方が恐怖であると述べている。そして社会的な死から逃れるために、自殺を考えたこともあったという。※週刊ポスト2012年7月20・27日号
2012.07.17 07:00
週刊ポスト
秋葉原事件加藤被告「はねた後のことは覚えていない」と告白
秋葉原事件加藤被告「はねた後のことは覚えていない」と告白
 加藤智大被告は2008年6月に東京・秋葉原で17人を殺傷(7人死亡、10人負傷)した罪に問われ、1審で死刑判決とされた。被告側は「死刑は重すぎる」と主張して控訴。だが第2審では姿を見せぬまま結審を迎え、判決は9月12日に下る。  なぜ加藤被告は「無差別殺人」という「狂気」を宿したのか。その心の闇を解く鍵が、加藤被告本人が拘置所で綴った獄中手記にあった――。週刊ポスト取材班は加藤被告本人が事件の全貌とそこに至るまでの胸中を綴った手記『解』(批評社)を出版予定という情報を得て、関係者への取材を開始。そして7月中旬に発刊予定という手記を独占入手した。 * * * 秋葉原での惨劇の直前、加藤被告は歩行者天国の入り口となる交差点に差し掛かるたび逡巡して駅前を巡回したという。 加藤被告が「後戻りはできない」と考えたのには二つの理由がある。一つはネット上のトラブルがきっかけとなり、掲示板での交流ができなくなったこと。もう一つが事件3日前、加藤被告は静岡の自動車製造工場を辞め、職場の友人を失ったことだ。手記にはこう書かれている。 〈仕事を失ったのは、「ツナギ事件」が原因でした。一言でいえば、いつものパターンです。5日の朝、工場に出勤すると、ロッカーに私のツナギがありませんでした。共用ロッカーで、20着くらいの同じ色・形のツナギが掛かっていますが、それまで半年以上、普通に毎日見つけていたのですから、この日に限って見落とすことなどあり得ません。(中略)ツナギを隠されるという嫌がらせが私に入力された時にはもう無断帰宅が頭の中に出力されていて、そのまま怒りにまかせて、すぐに行動になりました。(中略)工場を出て駅に向かって歩いている間、「またやってしまった」と、泣きたい気分でした〉  加藤被告の自己反省はすぐに憤慨へと変わる。職場の友人から「ツナギあったよ」とメールが届いたのだ。 〈再びもやもやしたものが出てきました。それはつまり、犯人がこっそりツナギを戻してそしらぬ顔をしているということだからです。(中略)ツナギをこっそり戻してそしらぬ顔をしているという間違った考え方には、無断退職することで対応することが思い浮かび(中略)「もう工場には行かない」と、すっぱりと自分から切り落としてしまいました〉  自分の居場所はこの世界にはない。交差点を前にして、改めてそのことに思い至った加藤被告が運転するトラックは、赤信号を無視して人混みの中へ突入する。 〈人をはねた後のことは、覚えていません。気づくと私は、トラックで走っていました。人をはねたことはわかっています。罪悪感、後悔も残っています。それでいっぱいでした〉※週刊ポスト2012年7月20・27日号
2012.07.16 07:00
週刊ポスト

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