国内

保育士の「妊娠順番ルール」は約15%の保育園で存在

一部の保育園に存在する「妊娠順番ルール」

〈私は妻と一緒に園長先生に頭を下げに行きました。「子どもができてすみません」〉 

 2月28日の毎日新聞に名古屋市在住の28才男性のこんな投書が掲載された。男性の妻が保育士を務める保育園では、結婚の時期と妊娠の順番を園長が決めていて、「掟」を破って予定外の妊娠をしたため、男性と妻は園長に謝罪したのだという。しかし、その後も園長は「どうして勝手にルールを破るのよ」と嫌みを言い続け、妻は職場で肩身の狭い思いをしている。そう明かした男性は、最後にこうつぶやく。

〈子どもを育てる職業がこんな環境であるこの国は子育て後進国です〉

 投書を読んだ世の女性からは園長に対する批判の声が相次いだ。

「せっかく授かった命なのにあまりにかわいそうです」(神奈川県・48才会社員)
「謝る必要はない。こんなふうだから少子化が進んじゃうんですよね」(静岡県・54才主婦)

 一方で、この投書を目にして、「もしかして…」と新聞をめくる手を止めたのは、都内に住む会社員の松山愛子さん(仮名・20代)だ。松山さんは5年前まで名古屋市内の認可保育園で保育士として勤務していた。松山さんが語る。

「毎日新聞の投書と同じ保育園かはわかりませんが、実は私が以前働いていた保育園でも似たようなルールがあったんです」

 保育園に就職するまで、ルールについては何も聞かされなかった松山さんだが、仕事を教わるなかで先輩から、「妊娠は年功序列で、既婚者の先輩より先に妊娠してはダメ。加えて園長がすごく怒るから、デキ婚は絶対禁止」と教えられたと言う。

「当時は社会人になったばかりで、“そういうものか”と気にも留めていませんでした。でも、後に私が園長に結婚の報告をした際に、『おめでとう』と言われた直後、『まさかデキ婚じゃないわよね』と念を押されたのを覚えています」(松山さん)

 この園では他にも妊娠に関する「暗黙のルール」が存在した。

「産休に入る時期も重要で、翌年度への引き継ぎをスムーズにするために、3月の年度末から産休を取って5月に出産することを暗黙のうちに求められていました。先輩から『(子づくりは)計画的にね』と言われたこともありました」(松山さん)

 そのため、過去にルールを逸脱した保育士が「悲劇」を味わっていた。2月に予定されていた園の発表会の責任者だった保育士が、同じ月の出産予定で妊娠。それを聞いた園長は激怒し、当の保育士も責任感が強かったため、臨月間際の大きなお腹で行事を取り仕切ったという。そして行事終了後、彼女は病院に直行して出産した──。

「“それくらい妊娠時期は重要である”というメッセージを込めて語り継がれています。保育士は事実上、7~8月の期間限定での子づくりを迫られているわけで、その時期に妊娠できなければ“今年はムリだ”とあきらめていました」(松山さん)

 端から見ると何とも理不尽なルールのように感じるが、松山さんたちは大きな不満を抱かなかったという。

「若い保育士の不満は少なく、むしろ順番が回ってきた保育士には『一刻も早く妊娠して次の人に順番を回さなければならない』というプレッシャーがのしかかっていたようです。決してパワハラではなく、園長は保育士不足のなかで園児の保育環境を維持するために必死だっただけだと、今でも思っています」

 そう語った松山さんは、最後にこう語気を強めた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン