さらに、三重大学教授で神経内科医の冨本秀和氏らが2007年に行なった研究によると、アルツハイマー病患者の脳では、健常者と比べて毛細血管が29%も減少していたことが分かっている。毛細血管がゴースト血管化することで“脳のゴミ”と呼ばれるアルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ」が脳に蓄積しやすくなると考えられている。
つまり、“かかとの上げ下げ”によって血管のゴースト化を防げば、ある程度、加齢とともにリスクが増すのは仕方がないと考えられてきた骨粗鬆症や認知症の予防にもつながり得るわけだ。この2つの疾患は、寝たきりリスクを上げる主要因であり、その予防が健康寿命を延ばすことにつながってくる。高倉氏は「対策はとにかく早めに始めたほうがいい」とも付け加える。
「ゴースト化した毛細血管でも、すぐに血流が甦れば復活させることができる。しかし、ゴースト化した状態が長く続き、血管の細胞が完全に死滅してしまうと、同じ場所に血管を蘇生させることは非常に難しい。ゴースト化から消滅までのタイムリミットは正確には分かっていませんが、早めに対策をしたほうがいいことは確かです」
“かかとの上げ下げ”という手軽で簡単な方法で改善が期待できるだけに、「加齢」「糖分や脂肪分の過剰摂取」といったリスク因子に心当たりがある人は、すぐにでも始めてみたほうがいいという指摘である
※週刊ポスト2018年4月20日号