「私は筋を通して辞めたつもりですし、辞めた理由も決して引き抜きではありません。『寺谷にこにこ保育園』には10年勤めましたが、その中で代表と育児法をめぐって意見の食い違いがあり、心機一転して新しい場所で仕事をしたいと思っていました。
そんな時に『鶴見中央はなかご保育園』の募集を知って、転職しただけです。一緒に転園した他の保育士たちも無理矢理引き連れていった訳ではなく、私と同じ気持ちで、新しい場所で働きたかったのだと思います」
たとえ引き抜きではなかったとしても、園長らの行動によって子供たちや保護者に大きな負担が強いられていることは紛れもない事実だ。4月から市内の別の保育園に転園した4才児の母が憤る。
「新しい保育園は『寺谷にこにこ保育園』よりも自宅から遠いうえ、子供は転園を受け入れることができていない。元の園に帰りたいと思うあまり、教室を飛び出してしまったり、お散歩先の公園から走って出て行こうとしたり…。『いつになったら元の保育園に戻れるの?』『〇〇ちゃんにはいつ会えるの?』と聞かれるたびに胸が痛みます」
転園先で悩みを抱えているのはこの親子だけではない。「寺谷にこにこ保育園」関係者が言う。
「37人が転園したということは、37世帯に影響が出たということです。これまで通っていた保育園から転園するのは、親子ともども負担が増す。子供が情緒不安定になって、そばについていなければならず仕事を辞めざるを得なくなったお母さんの話や、子供のことで言い合いになって夫婦関係が破綻し離婚に至ったご夫婦の話を聞きました」
また、保育園が縮小する旨を伝える説明会でも、保護者たちには前園長に対して、ぬぐいきれぬ不信感が残った。前出の母親が言う。
「私たちは閉園することを1か月前の3月に知らされたんです。驚き、これからどうなるんだろうと不安になる私たちを見ても、園長は一言も口を開かなかった。私たちが『園長に経緯を聞きたい』と申し出ても、それに応えてくれることはありませんでした。そればかりか、閉園前最後の1週間に至っては『過労で入院した』と言って園に来ることもなかった」
行政の管理下にある認可保育園にもかかわらず、ここまで大きな騒動になったのはなぜなのか。長年保育園問題を取材してきたジャーナリストの猪熊弘子氏が言う。