ロシアW杯ベルギー戦、得点した原口は槙野に向かって飛びついた(Imaginechina/時事通信フォト)

 この時期、日本代表経験もあるベテラン選手が「元気は変わりましたね。“おはようございます”が言えるようになった。昔は首を振りながら“ちぃーっす”でしたから(笑)」と明かしていたから、確かに原口は変わり始めたのだろう。

 ただ、人間そんなに急に変わるものでもない。その後も原口は小さなトラブルをたびたび起こしている。

 2012年9月、国立での柏戦では交代直後に感情を露わにしてベンチでひと悶着。2013年の6月には練習中に不満を表し、クーラーボックスを蹴り上げるなどして練習が中断。メディアを騒がせた。

 この時期の監督だったミハイロ・ペトロヴィッチは、組織的なコンビネーションを重視する指揮官であり、ドリブル突破が得意な原口にとって、適正ポジションが少ないシステムということも相まって、ストレスがたまる時だったのかも知れない。

 だが、ペトロヴィッチは原口をかばった。

「試合後に原口とは話をしましたし、なぜ交代させたということ、あるいは私は監督であるとともに彼に人間性というものも学んでほしいと思っている人間として、選手として、人として、自分のふるまいがどうであったかということを彼と話しました。彼はそれを十分に理解し、行なった行為について後悔し、反省しています」(2012年10月7日の試合後会見=オフィシャルHPより)

「元気という選手は決して悪い人間ではありません。彼は非常に純粋であり素直な人間です。時として感情の高ぶりを自分で抑えられないことは事実ですが、どんな人間にもいい部分とそうでない部分があると思います。彼はそういった自分の情熱的な部分を抑えられるように、できるだけそれをコントロールできるようになっていってほしいと思いますし、これから努力するべきだと思います」
「どんな人間にも間違いはあると思います。その間違いから学んでくれれば私はいいと思います。我々も家族として彼をサポートできれば」
「若い選手に間違いがあったとしても、我々はその間違いを正してあげたいと思います」(2013年6月22日の試合後会見=オフィシャルHPより)

 心の内面までを見透かされたような数々の言葉は、原口の胸に突き刺さったのだろう。いずれのケースでも原口は即座に謝罪し、チームメイトもそれを受け入れた。

 2014年、原口はドイツブンデスリーガのヘルタベルリンへの移籍が決まった。壮行試合となった6月1日のナビスコカップ名古屋戦。後半15分、原口のフリーキックのこぼれ球をゴールに押し込んだ槙野は、すかさずユニフォームを脱ぎ捨てた。あらわれた赤いアンダーシャツの背中には原口の背番号9。前面には「浦和→ドイツ=ロシアW杯 バイバイ泣き虫ゲンキ!!元気!!」の文字が。教育係からのちょっと辛口な激励メッセージだった。

 海を渡った原口は格段に成長した。いつしか素行について物議を醸すようなことはなくなっていった。

 2016年10月、13年ぶりにレッズがナビスコカップを獲った。数日後、クラブハウスには祝福の赤い花束が贈られた。原口が手配したものだった。

 槙野は花の写真を添えて、インスタグラムで嬉しそうに報告した。

〈ここまで出来るようになったとは、教育係として本当に嬉しいよ!!! 俺が2012年に浦和に来て原口元気というヤンチャな選手の教育係になった。そんな男が時間を重ねるとたくましく、強く変わっていった。

 人前でスピーチをし、結婚もし、人にありがとうも言えるようになり、エレベーターの開くボタンも押せるようになり、先輩のご飯にも「ご馳走様になりました」まで言えるようになった。本当に嬉しかった。今は日本を代表する選手までになった。泣き虫元気が、ここまで大きくなった〉

 最大限の賛辞だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト