それでは、新日鉄住金の徴用工裁判で問題になった朝鮮人徴用労働者は、韓国でどう認識されているのか。韓国では、日本統治時代に朝鮮半島から日本に渡り労働者として働いていた朝鮮人たちは、騙されたか、あるいは強制的に連れていかれた人たちだと認識されている。小学校の歴史教育を皮切りに大学を卒業するまで繰り返し教えられる重要トピックであるばかりか、マスコミも事あるごとに強制動員の悲劇を強調する記事を掲載する。強制動員を題材にしたドラマや映画が韓国人の心理に及ぼした影響も少なくないだろう。
韓国では、近代の欧米諸国がアフリカで行った奴隷狩りと同様のやり口で日本による労働力の動員が行われ、多くの朝鮮人労働者たちが日本に連行されたと説明されている。なおかつ、日本の労働現場では殴打などの暴力、暴言、虐待、そして飢えにさらされていたと語り継がれている。
次の引用は2018年9月9日、テレビ局MBCで放送された時事番組『ストレート』の一部である。ここに出演している司会者と記者たちの対話こそが、現在の韓国社会が抱いている日本統治時代の「徴用」に対するイメージをよく表している。
〈司会者1:はい、今日『ストレート』(番組名)がお伝えする内容は韓国現代史を通観し、今も続いている日帝強占期(日本統治時代)に残酷な労役を強いられた徴用被害者に関する話です。
司会者2:強制徴用被害者たちは日本の炭鉱や工場にしょっぴいていかれ、奴隷のような環境で過ごしました。
司会者1:その、強制徴用と言えば、私は「軍艦島」という映画がまず思い浮かびます。(中略)狭い坑道で飢えや虐待に耐えながら強制労役を強いられていた姿。映画を見ながら本当に息が詰まるようで、残酷に思いました。
記者:お話しになった映画、軍艦島として有名な、この端島は日帝の代表的な強制徴用の場所の中の一つです。ここだけでなく日帝強占期の日本戦犯企業は戦争物資を生産し続けるために朝鮮半島の少年、少女たちまで連れて行き、労働力を搾取しました〉
朝鮮人徴用者についての韓国人の認識は一言でいえば、「慰安婦の男性バージョン」である。慰安婦と異なるのは、男性であるために「性」の代わりに「労働力」を搾取された点で、それ以外、つまり強制連行、監禁、暴力、賃金の搾取などについてはほぼ同じであったと認識されているのだ。