こうしてスタートした生徒総会。真っ先にステージに上がった生徒が発した議案が、まさかの「定期テストの復活」だった。
「積み重ねテストでは日常的に勉強を続けなくてはいけないので、受験勉強との両立が難しくなる。3年生は定期テスト制に戻してほしい。あらためてアンケートを取るのはどうでしょうか」(2年女子)
「高校に入って急に定期テストをするということが不安。だから、定期テストをやってほしい」(1年女子)
積み重ねテストとは、100点満点の定期テストの代わりに、10点満点の小テストを10回、ないし20点×5回に分けて行うというもの。「ミルフィーユテスト」というかわいらしい愛称がつけられ、週3日程度(1日1単元)、始業前の20分間で実施している。
芳しい点数がとれなくても、後日、敗者復活の「チャレンジ・テスト」も用意されており、通知表の成績には良いほうの点数が反映される仕組みだ。
実は、生徒総会で定期テスト廃止が決まる前から、西郷校長は定期テストの弊害を感じていた。
「100点満点のテストで高得点をとるためには、中間考査なら5教科、期末考査なら9教科の準備を行わなければなりません。部活や塾を抱えている現代の子どもにとって、これは大きな負担です。
しかも定期テストは成績に直結するため、高校進学といった将来にも関わってくる。保護者から過度な期待をかけられ、追い込まれて不安定になる生徒や、学校に来られなくなる生徒もいました。ある意味、昨年の生徒総会での定期テストの廃止議決は、渡りに船でもありました」(西郷校長)
積み重ねテストは単元ごとに勉強できるので、「高得点を取りやすくなった」(3年男子)と、おおむね歓迎する声が多い。だが、「テストは簡単だけど、毎週3回あるから勉強量が多い」(別の3年男子)という声もある。実は、これこそが西郷校長の狙いでもある。
「まるで競馬の予想屋のように、定期テストの予想問題を作成する塾が学区内だけで3つもあります。そこで問題を入手すれば、7割はとれてしまう。これでは本当の学力はつきません。また、定期テストの直前だけ丸暗記して、終わったらすっかり忘れてしまうという悪循環のため、本当の学力が身につきにくいという問題もありました。
一方の積み重ねテストは、実は日頃からコンスタントに勉強をし続ける必要があるため、学力だけでなく勉強する習慣も身につきます。また、学んだことをすぐにテストで確認できるので、学習定着率も上がります」(西郷校長)
実際、積み重ねテストを導入した後、学校全体の学力は顕著に上がっている。「間違いなく世田谷区でトップクラス」と西郷校長は胸を張る。
◆生徒たちが「自分でものを考え、行動する習慣を」