当時の佐々木広人編集長は「マナーを守るつもりがないカメラマンは、読者としていりません」という厳しい姿勢を見せていた。
そうした方針は、現在も受け継がれている。今年1月に発売された『アサヒカメラ』最新号でも、「激論!撮り鉄マナー」にページを大きく割く。
「『アサヒカメラ』では、毎年一回は鉄道特集を組み、その中で撮り鉄のマナー問題を扱ってきました。マナーを守ることの重要性を訴え続けてきましたが、繰り返してマナーの問題を取り上げることは意味があると思っています。毎年、カメラを始める人はたくさんいます。そうした初心者・入門者に対してマナーアップを訴え、初心者・入門者がマナーを守っていけば、それはカメラ業界全体の意識向上にもつながるからです」
と話すのは、前任の佐々木編集長からバトンを受け取った現編集長・伏見美雪さんだ。
撮影者のマナー問題は、撮り鉄だけに限った話ではない。風景・動物・花木などでも、一部の不届き者によるマナー違反は問題視されている。
しかし、SNSなどで槍玉にあがるのは、圧倒的に撮り鉄が多い。撮り鉄ばかりマナーが悪いと指弾される背景には、どういった事情があるのか?
「風景や自然、動物、人物の撮影に比べると、鉄道は安全や定時運行にも関わる問題です。ひとたび事故が起きてしまえば、取り返しがつかない事態になります。しかも、鉄道の駅など人目につきやすい場所で撮り鉄は撮影をしています。それらの事情から、撮り鉄はどうしても目立ちやすいのです。そのため、世間の目が厳しくなるのだと思います」(同)
撮り鉄が批判の的になりやすい背景には、一ヶ所に大挙して押し寄せるという行動にも理由がありそうだ。
例えば、今年1月は山手線からE231系が引退することになり、JR東日本はヘッドマークをつけたE231系のサヨナラ運転を実施した。このサヨナラ運転を撮影するべく、多くの撮り鉄が山手線沿線の撮影名所に殺到した。群れをなした撮り鉄は、傍目から異様にも映る。電車に乗りたいだけの人にとって、撮り鉄は邪魔者と感じるだろう。カメラや三脚も、一般の乗客には、凶器に見えなくもない。まして、撮り鉄から「撮影の邪魔をするな!」「ここを歩くな。どけ!」などと罵声を浴びせられた経験があれば、撮り鉄は恐怖でしかない。