配達は単独行動だが、ドライバー同士で情報交換することも

 自転車は私物を使うことにしたので、準備完了。履歴書も面接も研修もなく、いきなり仕事が始まった。これでいいのかと思ったが、人命を預かるわけでもなし、多少のミスは折込済みで実地訓練する方が早いのだろう。

“聖地”とされる六本木でアプリを開き、「出発」ボタンを押してしばらく待つと、アラームが鳴った。注文が入ったのだ。10秒ほどのカウントダウンが始まり、やるかやらないか即座に判断を求められる。受注すると、飲食店の店名や住所が表示され、取りに行けと指示された。

 店で商品を受け取ると、今度は地図上で2キロほど離れた地点にマンション名が表示された。配達先が判明したので、アプリに指示されるがまま自転車を漕ぎ始めた。

 給料は1回の配達で都内は基本給が390円。お店から配達先へ運んでいる間は1キロ60円が加算され、そこからウーバー社への手数料10%が差し引かれて手取り額が決まる。時給換算すると1000~1500円、どんなに頑張っても2000円が限界だろう。月収40万円を稼ぐ猛者もいるそうだが、それには朝から晩まで自転車を漕ぎまくる体力と根性が必要だ。タクシー業界では長距離客が歓迎されるが、ウーバーイーツでは「ロングピック(店が遠い)」、「ロングドロップ(配達先が遠い)」はむしろ敬遠される。短距離で回数を稼ぐほうが、効率的なのだ。

 需要が増える雨の日はチャンスだが、労働環境は地獄。ジャージ姿で配達していたら全身ズブ濡れになり、ブレーキの利かない坂道で何度もスリップの恐怖を味わった。大学生の配達員が事故死したニュースが脳裏をよぎり、同時にコールセンターの事務的な説明を思い出す。

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