ビジネス

コロナ禍の「勝ち組企業」はなぜ北海道発祥ばかりなのか

調剤大手「アイン」の軌跡

 ニトリHDやツルハHD、DCMHDだけではない。コスト競争力を武器に調剤薬局のアインホールディングスも全国区にのし上がってきた。ここではアインHDが調剤薬局で最大手に成り上がるまでの軌跡を探ってみよう。

 創業は1980年。大谷喜一社長が28歳の時だ。ドラッグストアが出発点だったが、その後、家電量販店やホームセンターに進出して多角化に失敗。1997年4月期に20億円近い最終赤字を出し、リストラに追われた。その最中にメインバンクの拓銀が破綻。大谷氏は「頭の中が真っ白になった」と回想している。

 約27億円の債権を引き継いだ北洋銀行からは「借金を直ぐ返せ」と矢の催促だった。幸い北海道銀行に借金を肩代わりしてもらい一命はとりとめたが、大谷氏は自力での再建を目指す決意を固める。

 臨床検査事業は利益が出ていたが成長性を考え、見切りをつけた。そして、1993年に参入した調剤薬局に賭けることにした。国が医薬分業政策を推進したことで、全国各地の病院のそばに「門前薬局」と呼ばれる調剤薬局が誕生していた時期だ。

 スピーディーに全国展開を目指す早道がM&Aだった。M&Aには軍資金が必要だが、拓銀の倒産を目のあたりにした大谷氏には、「銀行に依存する恐さ」が身に染みていた。

 そのため安易な借り入れはせず、親交があったイトーヨーカ堂の創業者、伊藤雅俊氏の「店舗の高い収益力こそが最大の担保」という、キャッシュフロー(現金収支)重視の経営手法をバイブルにした。調剤業務の自動化や家賃、人件費の見直しを進め、店舗効率の向上に心血を注いだのである。

 2002年、今川薬品(茨城県つくば市)と合併したことが、大きな転機となった。今川薬品の44店が加わったことで、合計130店。一躍、調剤薬局業界のトップ企業となった。

 大谷氏は今川薬品の社長をアインファーマシーズの代表取締役会長に起用した。M&Aで買収された企業の社長が、買収した会社の代表取締役会長に就任するということで、大きな話題となった。アインによる今川のM&Aは調剤薬局業界の友好的買収の先駆けとなった。

関連記事

トピックス

手指のこわばりなど体調不安を抱えられている(5月、奈良県奈良市
美智子さま「皇位継承問題に口出し」報道の波紋 女性皇族を巡る議論に水を差す結果に雅子さまは静かにお怒りか
女性セブン
ちあきなおみ、デビュー55周年で全シングル&アルバム楽曲がサブスク解禁 元マネジャー「ファンの声が彼女の心を動かした」
ちあきなおみ、デビュー55周年で全シングル&アルバム楽曲がサブスク解禁 元マネジャー「ファンの声が彼女の心を動かした」
女性セブン
菅原一秀(首相官邸公式サイトより)と岡安弥生(セント・フォース公式サイトより)
《室井佑月はタワマンから家賃5万円ボロビルに》「政治家の妻になると仕事が激減する」で菅原一秀前議員と結婚した岡安弥生アナはどうなる?
NEWSポストセブン
「マッコリお兄さん」というあだ名だった瀬川容疑者
《川口・タクシー運転手銃撃》68歳容疑者のあだ名は「マッコリお兄さん」韓国パブで“豪遊”も恐れられていた「凶暴な性格」
NEWSポストセブン
民主党政権交代直後の政権で官房長官を務めた平野博文氏
【「年間約12億円」官房機密費の謎】平野博文・元官房長官 民主党政権でも使途が公開できなかった理由「自分なりに使い道の検証ができなかった」
週刊ポスト
『EXPO 2025 大阪・関西万博』のプロデューサーも務める小橋賢児さん
《人気絶頂で姿を消した俳優・小橋賢児の現在》「すべてが嘘のように感じて」“新聞配達”“彼女からの三行半”引きこもり生活でわかったこと
NEWSポストセブン
NEWS7から姿を消した川崎アナ
《局内結婚報道も》NHK“エース候補”女子アナが「ニュース7」から姿を消した真相「社内トラブルで心が折れた」夫婦揃って“番組降板”の理由
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【厳戒態勢】「組長がついた餅を我先に口に」「樽酒は愛知の有名蔵元」六代目山口組機関紙でわかった「ハイブランド餅つき」の全容
NEWSポストセブン
今シーズンから4人体制に
《ロコ・ソラーレの功労者メンバーが電撃脱退》五輪メダル獲得に貢献のカーリング娘がチームを去った背景
NEWSポストセブン
真美子夫人とデコピンが観戦するためか
大谷翔平、巨額契約に盛り込まれた「ドジャースタジアムのスイートルーム1室確保」の条件、真美子夫人とデコピンが観戦するためか
女性セブン
「滝沢歌舞伎」でも9人での海外公演は叶わなかった
Snow Man、弾丸日程で“バルセロナ極秘集結”舞台裏 9人の強い直談判に応えてスケジュール調整、「新しい自分たちを見せたい」という決意
女性セブン
亡くなったシャニさん(本人のSNSより)
《黒ずんだネックレスが…》ハマスに連れ去られた22歳女性、両親のもとに戻ってきた「遺品」が発する“無言のメッセージ”
NEWSポストセブン