11月初旬、「もんじゃ焼き」の本場として知られる東京都中央区月島で地上50階建てのタワーマンション建設を柱とした大規模な再開発事業がスタートした。すでに月島駅、勝どき駅周辺にはタワマンが建ち並び、風情ある庶民的な街の雰囲気は失われつつあるが、行政やデベロッパー主導の強引なタワマン建設に疑問を投げかけるのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。
* * *
タワーマンションという住形態は、そもそも必要悪である。
タワマンの住形態は、その居住性や耐久性、地震などの災害に対する脆弱性、あるいは人体に与える健康被害、そこで育つ子どもの育成環境などに多くの問題を抱えている。それらについては、2019年に刊行した拙著『限界のタワーマンション(集英社新書)』でつまびらかにした。
しかし、首都圏を中心に建設されるタワマンは増える一方である。仮に、タワマンというものを作ることによる何かのメリットがあるとすれば、それは限られた敷地の上により多くの床面積が創出できるということに尽きる。
つまりは、商業施設やオフィスビルが集中する都心立地に集合住宅を作る場合にこそふさわしい建築形態なのである。
しかし、この国では基本的にタワマンを「作れるところには必ず作る」という現象が見られる。荒漠とした風景が広がる湾岸の埋め立て地にも、地方都市の畑の真ん中にでも、庶民の慎ましくも和やかな暮らしが営まれている下町商店街のど真ん中にでも、タワマンの建設が可能であるならば、ほぼ必然的に建設計画が立案され、実行されてきた。
なぜタワマンが作られるかというと、それを開発分譲するマンションデベロッパーが儲かるからである。タワマンは販売できる床面積が大きい。15階建ての普通のマンションよりも、45階建てのタワマンにすれば販売できる床面積は3倍程度に増える。その分、開発事業における売上高が膨らむのだ。