2014年には巨人に移籍し、2015年のシーズンオフに引退を決断。高橋由伸が監督となった巨人の1軍内野守備走塁コーチを3年間務めた。
ノックを打つ立場となった井端にとって、思い出深いのは今や球界を代表する右の大砲となった岡本和真だ。智弁学園時代に一塁手兼投手だった岡本は、いわゆる内野手としては褒められるところがなかった。
「とにかく下手でね。だけど変な癖がついていないから素直にアドバイスを聞き入れてくれた。手がかかったようで、誰よりも手がかからなかった選手です」
井端はノッカーとしての自らを「髙代さんと落合さんを足したタイプ」だと話す。時に選手を気分良く捕球させ、時に選手を徹底的に追い込むのだ。
「守りもバッティングも、体力がなければ技術は向上しない。体力を鍛えるだけでなく、目の体力もつくのがノックだと思います」
173cmの小さな身体で、サムライジャパンの一員として2013年の第3回WBCにも出場した井端の礎となったのがあの若き日に受けたノックだった。
◆取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)