スポーツ

安田記念 グランアレグリアは「シーズンGI3走」の壁を乗り越えられるか

グランアレグリア

大坂杯では苦杯もビクトリアマイルは圧勝したグランアレグリア

 春のマイル王決定戦。最強牝馬に加えて多士済々の面々が揃った。競馬ライターの東田和美氏が考察した。

 * * *
 オークスのソダシ、ダービーのエフフォーリアと単勝1倍台の圧倒的人気馬が続けて敗れた。なので今週もグランアレグリアの「死角」をほじくり出してみる。

 2006年以降、重賞級の古馬牝馬のほとんどは、ヴィクトリアマイルを目標にするようになった。広くて紛れが少なく、直線が長くて言い訳ができないコースでの戦いは、前年にクラシック戦線で活躍したエリート牝馬の出走もあり、文字通り女王を決めるレースとしてふさわしいものになった。

 牝馬同士とはいえGⅠ。たとえここで好走したとしても、やはり普通の重賞よりはるかに消耗が激しいはずだ。

 昨年までのヴィクトリアマイル15回の勝ち馬のうち、安田記念へ駒を進めたのはわずかに5頭。連勝したのはウオッカただ1頭だ。ヴィクトリアマイルに出走し、中2週で安田記念に向かった馬ものべ25頭のみ。ヴィクトリアマイルでは【5 4 3 13】で19頭が掲示板に載り、二桁着順はわずかに2頭だったが、安田記念では【2 3 1 19】。ヴィクトリアマイルで惜しい競馬をして、安田記念で勝ったのもウオッカただ1頭で、二桁着順馬は10頭。3冠牝馬アパパネも、GⅠ8勝のアーモンドアイも連勝はかなわなかった。牡馬相手という以上に、頂上を狙う馬ばかりが集まるGⅠ連戦の過酷さを物語っている。

 秋の中距離路線では天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念というGⅠ3走が最強馬の王道だった。牝馬ではブエナビスタが4歳時と5歳時に、ジェンティルドンナが5歳時に、1シーズンで上記GⅠを3走しているが、いずれも1勝ずつに終わっている。なおブエナビスタは3歳春に桜花賞とオークスを勝っているが、GⅠを3走した3歳秋と、4、5歳春の各シーズンは1勝止まりだった。これだけGⅠに出走するのは凄いことなのだが、勝つのはもっと大変なのだ。

 またウオッカは3歳の春に桜花賞、ダービー、宝塚記念と使ってうち1勝。秋には秋華賞、(エリザベス女王杯は取消)ジャパンカップ、有馬記念と使ったが1つも勝てなかった。ようやく5歳春、ドバイデューティフリーを皮切りに、ヴィクトリアマイル、安田記念と2勝をあげた。近年1シーズンにGⅠを3回使って2勝した牝馬はウオッカだけ。リスグラシューやアーモンドアイは、1シーズン2走までしか使っていない。

 グランアレグリアは2歳時3歳時にそれぞれ3走のみ、4歳時は春秋2走ずつと大事に使われてきた。2歳秋にはサウジアラビアロイヤルカップを勝ったが、阪神ジュベナイルフィリーズには1週足りないからと朝日杯フューチュリティステークスを使ったほど。3歳秋もスプリンターズステークスを自重して阪神カップのみ。4歳になった昨年春もヴィクトリアマイルをスキップして安田記念に駒を進め、ヴィクトリアマイルを経てきたアーモンドアイを破った。

 それがこの春は今回がGⅠ3走目、しかも初めての2000m大阪杯からのスタート。ヴィクトリアマイルからの中20日というレース間隔はこれまでで最も短い。

 もちろん平成の名伯楽・藤沢和雄調教師のこと、馬にとって無理があるローテーションは組まないし、状態に少しでも気になるところがあれば白紙に戻したはず。ほんの少しの「見えない疲労」も見逃さないはずで、出走してくるからにはなんら問題がないはずだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン