宝塚記念一覧

【宝塚記念】に関するニュースを集めたページです。

JRA重賞はGI26勝を含む129勝
蛯名正義氏 馬の能力を信じ距離適性を模索したマリアライトの騎乗体験
 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートする。蛯名氏による週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、馬の距離適正についてお届けする。 * * * 僕が初めてマリアライトに乗ったのは2014年6月末、宝塚記念当日の東京での3歳以上500万下(現1勝クラス)芝1800m。春のクラシックシーズンが終わってからのことです。 このときは勝ったのですが、クラスが上がるとなかなか勝ち切れなくなった。それで長くいい脚を使うタイプだから、久保田貴士先生やスタッフとも相談して、4歳の春から長距離を使うようにしたんです。 最初はうるさくて大変でした。敏感で引っ掛かるので、それをどう落ち着けようかと。馬の性格は、持っている能力も含めていろいろですから、上にあがっていくにはどうしたらいいかというのを考えます。 それには乗ってみてどう感じたかという第一印象、「この馬、よいところある!」って楽しくなるようなインスピレーションを信じます。それで落ち着かせるにはこうしたらいいんじゃないか、それがだめなら別のことをとやっていく。この馬は絶対よくなると信じて根気強くアプローチし続けられるかどうかですかね。 そうしているうちに体がぐっとよくなってきた。そういう調教をしているからよくなったのか、その距離に適性があったのか、ガクッと疲れなくなって、食べているものが身になっていくという感じ。そういうのが同時にタイミングよく来るのかわからないんですけど、とにかくよくなった。 で、中山の2500m、東京の2400mを連勝してオープン入り、秋にエリザベス女王杯を勝つことができました。その後も2500mで結果を出し、翌年の宝塚記念は8番人気での勝利です。やはり牝馬ということで、長距離はどうかと思われていたんでしょう。しかもこのレースはドゥラメンテやキタサンブラックとメンバーが揃っていましたから。 昨年の菊花賞で2着にはいったオーソクレースはマリアライトの初仔。やはり長距離に適性があったということでしょう。 こういう経験は大事に活かしていきたいですね。そのためには使えるレースを使わない勇気も必要になってくる。そういう時に関係者やオーナーに進言し、調教師の責任として決断しなければならない。もちろん休ませれば必ず勝つとは限らないわけで、すごく難しい判断です。 自分の意見が受け入れられないときもありました。デビュー戦からずっと乗って、重賞を勝ってダービーでもいいところまでいった馬がいたけれど、僕自身は長いところの馬ではないと思っていた。それを調教師に言ったらクビになりました(笑)。別に悪口を言ったわけではないんですよ。一気に加速していく馬だったので、東京コースも合わないし、能力をもっと生かすには、短いところの方がいいのではないかと言っただけ。その後のレースを見れば、わかるはずなんですけどね。 クビになったことをどうこう言っているのではないのです。乗り替わりはオーナーの意向もあるのでしょうがないとは思いますが、僕はジョッキーが言うことは参考にしていきたいと思っています。同期や後輩ジョッキーにいろいろ言われそうなんで(笑)。【プロフィール】蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。今年2月で騎手を引退、来年3月に52歳の新人調教師として再スタートする予定。※週刊ポスト2022年2月18・25日号
2022.02.11 19:00
週刊ポスト
「僕は跨がっていただけ」の真意とは
蛯名正義氏49才の決断 退路を断って挑んだ調教師試験の大変さ
 1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝。2001年に全国リーディングを獲得するなど通算2541勝、海外・地方を合わせて2598勝の歴代4位。フジヤマケンザンで日本馬初の海外重賞勝利、エルコンドルパサーのフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートする。蛯名氏による週刊ポスト連載『エビジョー厩舎』から、今回は3度目の正直で合格できた調教師試験の厳しさについてお届けする。 * * * ジョッキーをやめて調教師になるということはあまり考えていなかったんです。やはりカッコいいし、自分が一番やりたかった仕事です。「何歳になったらやめよう」などと思っていたら、できない仕事です。 同期の武豊騎手だけではなく、年上の柴田善臣さんや横山典弘さんも頑張っています。幸い大きなケガもなかったし、僕の場合は体質的に減量で苦しむということもなかった。 45歳の時にも年間100勝できたし、リーディングでも上位にいました。47歳になった年もディーマジェスティで皐月賞、マリアライトで宝塚記念とGIを2つも勝たせてもらったし、3歳クラシックすべてで騎乗依頼をいただいていました。年間で700回以上乗っていたけれど、まだまだエネルギーも残っていたので、ジョッキーのままで終わろうかと思っていました。 ずっとお世話になっていた馬主さんから、やってみたらどうだと背中を押されたのがきっかけです。やはり70歳まで乗ることはできないわけで、でも好きな競馬には関わっていたい。それで、自分がせっかくこんな経験をさせていただいたのだから、それをずっと活かせる場所というと調教師しかないなと。 もしやるのならジョッキーとしてギリギリまでやってボロボロになってから目指すというのは、調教師という仕事に対して失礼だし、調教師になるのが遅くなると、定年(70歳)までが短くなってしまうので、軌道に乗ったところでやめなければいけない。ならば早いうちに切り替えなければと一念発起。49歳の時から騎乗数を減らして、調教師試験の勉強を始めることにしました。 ところがこの「勉強」ってやつが、思っていた以上に大変でした(笑)。 昔は1000勝したジョッキーが調教師になろうとすると1次の筆記試験が免除されて、2次の口頭試問(これはこれでとても難関です)だけでよかった。いまは2000以上勝っていても、まったく優遇措置がない。 1次試験は競馬法や施行規則、調教技術、馬の生理学から厩舎を経営するための労働法まで、とにかく幅広い。最近はパワハラやセクハラについても問われます。 スポーツ選手ってみんなそうだと思いますが、中学を卒業してから勉強というものに向き合っていないんで、何から手を付けていいのか分からない。馬に乗ることに関してはすごく頑張ることができるし、うまく乗るためにどういうトレーニングをしたらいいのか分かるけれど、勉強となるとまるでダメ。まず机の前に座るという習慣をつけることから始めなければならない。しかも年を取ってくると細かい字が読めなくなっていて、答えが云々という前に、問題からして何が書いてあるか分からない(笑)。 2年続けて1次で落ちました。退路を断つじゃないけれど、こっちは競馬に乗るのを削って逃げ道をなくして勉強しているのにあっさり落第。精神的にもギリギリでした。3回続けて落ちたら受けるのをやめようかと思いましたよ。【プロフィール】蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビュー。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートする予定。※週刊ポスト2021年11月19・26日号
2021.11.13 16:00
週刊ポスト
阪神競馬場のパドック
クロノジェネシスは「ドバイ帰り」の宝塚記念ジンクスを打ち破れるか
 上半期の掉尾を飾るGI宝塚記念。上位人気は牝馬が占めることになりそうだ。競馬ライターの東田和美氏が考察した。 * * * ファン投票上位20頭のうち出走するのはわずかに6頭。GⅠ馬は3頭だけと寂しい顔ぶれになったが、その分有力馬は絞り込みやすい。なにしろこのレースは1番人気馬が6連敗中で、その間2、3番人気馬も2回ずつしか馬券にからまず、二桁人気馬が5頭もからんでいる。さらに日本での騎手免許取得以来6年間すべて4番人気までの馬に騎乗していたC・ルメール騎手が一度も馬券対象になっていないという難解なレースだったのだ。 そのルメール騎手が、ファン投票1位でグランプリ3連覇を狙うクロノジェネシスに騎乗。デビューからすべての手綱を取ってきた北村友一騎手が負傷したためだが、秋にさらなる大舞台を意識している陣営としては、先入観なく乗れる騎手を経験するのは貴重。人気の中心となる。 しかし、オークス、ダービー、安田記念と、圧倒的1番人気馬は研究・マークされていたこともあって敗れている。ましてやドバイ帰り。「調教の動きを見る限り、遠征の疲れは残っていない」とのことだが、「見えない疲れ」はないのか。 この2月で調教師を引退した角居勝彦氏は、『さらば愛しき競馬』(小学館新書)の中で、「見えない疲れ」について《開業18年目にして分かったこと》として、こう述べている。《骨格的ダメージは関節に痛みが出るのですぐわかる。ところが筋肉的ダメージは分かりにくい。(中略)まさに季節が変わるくらい後になって出てくることもある》 招待競走であることに加え、賞金も高額なため、日本からはGⅠ未勝利馬も含め多くの馬が3月のドバイに飛ぶ。多くはGⅠ、GⅡを制したような実績馬だが、日本競馬の流れに嵌っているようで嵌っていない。過去10年で前走が3月のドバイでのレースだった馬はのべ11頭いるが、宝塚記念では未勝利。帰国後最初のレースにJRAの重賞を使った馬はのべ32頭いるが、勝ったのは3頭だけなのだ。 ケースは少ないが、むしろ凱旋門賞で健闘したナカヤマフェスタ、オルフェーヴルや、コックスプレートを勝ったリスグラシューなどのように宝塚記念を使って遠征、という方が結果を出している。ちなみにこの3頭はドバイには一度も行っていない。 3冠牝馬ジェンティルドンナは4歳時にドバイシーマCに出走し2着と好走。帰国後の宝塚記念では1番人気に推されたが3着。翌年はドバイシーマCを勝ったが、宝塚記念では9着に敗れている。 サトノクラウンは4歳時に4月末の香港クイーンエリザベスⅡ世C12着→宝塚記念6着というローテーションだったが、5歳春は海外遠征はせず、大阪杯6着の後、宝塚記念を勝った。しかし6歳時はドバイに遠征しシーマC7着からの帰国後に宝塚記念を使ったものの7着に敗れている。 レイデオロは4歳時にドバイシーマCで4着の後はじっくり間を開けて9月のオールカマーで1着。しかし翌年はドバイシーマC(6着)からの帰国初戦が宝塚記念で5着に敗れている。 ダート馬でも4歳時にフェブラリーSを勝ったゴールドドリームがドバイワールドカップに出走(14着)、帰国初戦の帝王賞では7着だった。しかし翌年は、フェブラリーS2着のあと海外へは向かわず、船橋のかしわ記念(5月2日)、帝王賞と交流GⅠを連勝している。 航空機による遠距離輸送に加えて、現地は3月といえども平均気温30度近く。比較的過ごしやすい季節ともいわれるが、ふだんと異なる環境、これまで体験したことのない空気感が馬の心身に影響しないわけがない。 ここは素直に過去20年で8勝2着9回の天皇賞(春)から参戦のカレンブーケドールを軸にする。重賞は未勝利だがGⅠという舞台でコンスタントに力を発揮できるポテンシャルがある。前走も見せ場たっぷり。最後は距離の壁に泣いた格好だが、2200mは合いそうだ。 レイパパレの前走は展開が嵌ったともいえるが、初GⅠであれだけのメンバー相手に勝ち切るのは底力があってこそ。これにもちろんクロノジェネシスを加えた牝馬3頭の上位独占が最有力。 一角を崩すとしたら、天皇賞(春)4着のアリストテレスや大阪杯2着のモズベッロより、このレース連続2着のキセキ。福永騎手がクロノジェネシスの2週前追いに跨って、何かを掴んだかもしれない。妙味に欠けると言われればそれまでだが、今年の宝塚記念はこの6頭をどうやりくりするかだけではないか。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2021.06.26 16:00
NEWSポストセブン
グランアレグリア
安田記念 グランアレグリアは「シーズンGI3走」の壁を乗り越えられるか
 春のマイル王決定戦。最強牝馬に加えて多士済々の面々が揃った。競馬ライターの東田和美氏が考察した。 * * * オークスのソダシ、ダービーのエフフォーリアと単勝1倍台の圧倒的人気馬が続けて敗れた。なので今週もグランアレグリアの「死角」をほじくり出してみる。 2006年以降、重賞級の古馬牝馬のほとんどは、ヴィクトリアマイルを目標にするようになった。広くて紛れが少なく、直線が長くて言い訳ができないコースでの戦いは、前年にクラシック戦線で活躍したエリート牝馬の出走もあり、文字通り女王を決めるレースとしてふさわしいものになった。 牝馬同士とはいえGⅠ。たとえここで好走したとしても、やはり普通の重賞よりはるかに消耗が激しいはずだ。 昨年までのヴィクトリアマイル15回の勝ち馬のうち、安田記念へ駒を進めたのはわずかに5頭。連勝したのはウオッカただ1頭だ。ヴィクトリアマイルに出走し、中2週で安田記念に向かった馬ものべ25頭のみ。ヴィクトリアマイルでは【5 4 3 13】で19頭が掲示板に載り、二桁着順はわずかに2頭だったが、安田記念では【2 3 1 19】。ヴィクトリアマイルで惜しい競馬をして、安田記念で勝ったのもウオッカただ1頭で、二桁着順馬は10頭。3冠牝馬アパパネも、GⅠ8勝のアーモンドアイも連勝はかなわなかった。牡馬相手という以上に、頂上を狙う馬ばかりが集まるGⅠ連戦の過酷さを物語っている。 秋の中距離路線では天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念というGⅠ3走が最強馬の王道だった。牝馬ではブエナビスタが4歳時と5歳時に、ジェンティルドンナが5歳時に、1シーズンで上記GⅠを3走しているが、いずれも1勝ずつに終わっている。なおブエナビスタは3歳春に桜花賞とオークスを勝っているが、GⅠを3走した3歳秋と、4、5歳春の各シーズンは1勝止まりだった。これだけGⅠに出走するのは凄いことなのだが、勝つのはもっと大変なのだ。 またウオッカは3歳の春に桜花賞、ダービー、宝塚記念と使ってうち1勝。秋には秋華賞、(エリザベス女王杯は取消)ジャパンカップ、有馬記念と使ったが1つも勝てなかった。ようやく5歳春、ドバイデューティフリーを皮切りに、ヴィクトリアマイル、安田記念と2勝をあげた。近年1シーズンにGⅠを3回使って2勝した牝馬はウオッカだけ。リスグラシューやアーモンドアイは、1シーズン2走までしか使っていない。 グランアレグリアは2歳時3歳時にそれぞれ3走のみ、4歳時は春秋2走ずつと大事に使われてきた。2歳秋にはサウジアラビアロイヤルカップを勝ったが、阪神ジュベナイルフィリーズには1週足りないからと朝日杯フューチュリティステークスを使ったほど。3歳秋もスプリンターズステークスを自重して阪神カップのみ。4歳になった昨年春もヴィクトリアマイルをスキップして安田記念に駒を進め、ヴィクトリアマイルを経てきたアーモンドアイを破った。 それがこの春は今回がGⅠ3走目、しかも初めての2000m大阪杯からのスタート。ヴィクトリアマイルからの中20日というレース間隔はこれまでで最も短い。 もちろん平成の名伯楽・藤沢和雄調教師のこと、馬にとって無理があるローテーションは組まないし、状態に少しでも気になるところがあれば白紙に戻したはず。ほんの少しの「見えない疲労」も見逃さないはずで、出走してくるからにはなんら問題がないはずだ。 しかし、短距離GⅠを総なめにしたグランアレグリアは、今年中距離路線へ進出を公言していた。ならば、今年の最大目標は天皇賞(秋)のはず。そのためには暑い時期に行なわれる阪神競馬場内回りの宝塚記念など使わず、早めに休養に出すというプランでヴィクトリアマイルを含めた1シーズンGⅠ3走というローテーションを組んだのではないか。大きく崩れることは考えにくいが、それなら「目標はまだ先」だ。 ところでNHKマイルカップの勝ち馬はのべ28頭が安田記念に出走しているが、勝った馬は1頭もいない。しかし安田記念の勝ち馬のうち、3歳春にNHKマイルカップに出走していたという馬は5頭もいる。最高着順は3歳で勝ったリアルインパクトの3着で、エアジハードは8着、アグネスデジタルは7着、ジャスタウェイは6着だった。マイルに適性ありと見込まれながら、本格化には少し時間がかかったのだろう。昨年の覇者グランアレグリアもNHKマイルカップでは5着(降着)だった。 2年前のNHKマイルカップで直線大外から飛んできたケイデンスコールが忘れられない。4歳時は様々な距離を走って結果が出なかったが、その経験を糧に今年は別馬のようになった。鞍上も内心期するところがありそうだ。 そのNHKマイルカップで内を縫うように抜けてきたカテドラルも要チェック。こちらもやや足踏みしたが、ようやく手の合う鞍上に出会ったような印象。3歳馬シュネルマイスターはNHKマイルカップを勝っているが、3歳での出走といえばリアルインパクト、4キロ差は大きい。 日高の馬ではダノンプレミアム。デビューからGⅠを含む4連勝という素質馬に復活の兆しが見える。安田記念では2年連続して二桁着順に沈んでいるのが気になるが、朝日杯フューチュリティステークス以来のGⅠ勝ちとなれば、あのアドマイヤコジーンとまったく同じ快記録だ。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2021.06.05 16:00
NEWSポストセブン
阪神競馬場のパドック
「春の天皇賞は牝馬不毛」データの裏 カレンブーケドールは大丈夫か
 牝馬だから割り引き、そんな空気はないどころか積極的に買い、がセオリーともなりそうなのが昨今である。競馬ライターの東田和美氏が分析した。 * * * 昨年は古馬の牡牝混合の芝GⅠ10戦のうち9戦で牝馬が勝ったが、天皇賞(春)だけはフィエールマンが連覇して牡馬の面目を保った。なにしろこのレースで牝馬が最後に勝ったのは1953年。グレード制が導入されてから23頭が出走して6着が最高だという。究極のスタミナを要求される3200mでは、キレで勝負する牝馬は圧倒的に分が悪いということなのか。 ところで牡牝混合の芝GⅠで牝馬が圧倒的に強かったのは実は昨年だけ。2019年は3勝、2018年はJCのアーモンドアイのみ、2017年はゼロだ。昨年たまたま強い牝馬が全盛期を迎えていたということなのか。 そもそも牝馬は、GⅠに限らず重賞レースで好走するようならば引退後の繁殖入りは確実。牧場に戻っても大事にされ、優秀な牡馬と交配されることがほぼ約束されるし、生まれてきた子も牡牝かかわらず高値が付くし、デビュー時には話題にもなる。ここでジェンダー論を持ち出すつもりはないが、競走人生の先に見えるものが違うのは明らか。牝馬は傷がつかないうちに「いいお嫁さん」になることが幸せだという考え方だ。 平成に入っても1997年にエアグルーヴが天皇賞(秋)を勝つまで、牝馬が勝ったGⅠはすべてマイル以下だった。花嫁道具として強力なのは、男勝りの勝負強さやスタミナではなく、スピードや一瞬のキレだった。 しかし、素質を見せたら引退して嫁入り、それでいいのだろうか、という機運が出てきたのが四半世紀ほど前から。古馬牝馬の競走生活がもう少し長くてもいいのではないか、賞金が世界一と言われて久しい日本競馬、とくに1億に達するGⅠで勝って稼ぎたい。このころから数を増やしてきたクラブ会員が良血馬に出資しようとすると、牝馬にしか手が出ないことも多いので、オープン入り後にさっさと引退されては、まったくうまみがない――1996年、それまで4歳(現3歳)限定だったエリザベス女王杯が古馬にも開放され、10年後の2006年には春のGⅠヴィクトリアマイルが創設された。 これにより、実績を積んできた古牝馬は、春ヴィクトリアマイル、秋エリザベス女王杯という目標ができた。「牝馬路線の充実」を掲げた番組編成にはサークル内からも歓迎の声が上がった。 でも、これって、人間でいえば、既得権益を守りたい男たちが、女同士の闘いの場を設けたっていう印象。エリザベスとヴィクトリアでいいだろう、他は男に任せておけばいいというように感じられたというのは、うがった見方だろうか。 天皇賞(春)に直結する前哨戦としてはまず3000mの阪神大賞典で、平成以降では12勝2着9回3着15回とダントツ。このレースでは牝馬の優勝が1度もないが、出走馬も少なく、ここ10年ではわずかに4頭。そのなかで2015年に5歳牝馬デニムアンドルビーが2着に入っている。 次が大阪杯組で7勝2着4回3着4回。今年は大阪杯からの出走はないが、過去10年で牝馬の出走は12頭。それで3勝もしている。GⅠになったことで、天皇賞の前哨戦という意味合いは薄まり、香港QEⅡ世Cや宝塚記念へ向かうことも多くなった。2015年のラキシスや、昨年の1、2着牝馬も次走は宝塚記念だった。 もう1つが日経賞で、6勝2着10回3着8回。今年はウインマリリン、カレンブーケドールと牝馬が1、2着を占めた。牝馬が2500mの日経賞を勝ったのは、1988年以来33年ぶりというが、こちらだって出走頭数が少ない。過去10年でわずかに8頭。そのなかで2016年にはマリアライトが3着、今回1、2着というから確率的には悪くない。 もちろん距離適性はあるだろうが、ヴィクトリアマイルを目指す牝馬は、これらの中長距離レースを使う必要がなかったというだけだ。 で、天皇賞(春)に出走した牝馬だが、GⅠで牡馬と対等以上に戦っていたのは、イクノディクタスとデニムアンドルビーぐらい。前者はメジロマックイーンやライスシャワーを、後者はゴールドシップやキズナを相手にしなければならなかった。 他の牝馬はどちらかといえば、長距離適性を見込んでのチャレンジという印象。2005年のアドマイヤグルーヴは天皇賞(秋)3着こそあるが、牝馬戦での活躍馬という印象。エリザベス女王杯連覇だが、1週待ってJCに向かうことはなかった。 できればクロノジェネシスはこちらに出てきてほしかったが、今年の牡馬陣相手なら3歳時にエリザベス女王杯ではなくJCを選んで2着だったカレンブーケドールも実績で負けていない。先頃QEⅡ世Cを勝ったラヴズオンリーユーと同タイム2着だったオークス以後はすべて2000m以上のレース。昨年はドバイシーマクラシックのため現地入りしたが中止となり、休養を余儀なくされた。復帰戦のオールカマーでは、向正面で早めに仕掛け、直線抜け出したがゴール直前で差されて2着。伝説の一戦となった昨年のJCは、あわや3強の一角に食い込むハナ差4着。勝ち切れないもどかしさはあるが、3200mになって本領を発揮する可能性は十分。2周目が内回りなので、前半折り合いさえつけば、終いはしぶとく伸びてくる。 日経賞でそのカレンブーケドールを振り切ったウインマリリンも長い距離では底を見せていない。オークスでは三冠牝馬からコンマ1秒。2000mや2200mでは距離不足だったのではないかとも感じられる。 牡馬では、有馬記念の大敗に目をつぶってオーソリティ、定番菊花賞馬のワールドプレミア。3000m以上の走り方を覚えたようなシロニイは、テレビで見ていても一目でポジションが分かるので応援しやすい。もう1頭の牝馬メロディーレーンは心の中で応援する。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2021.05.01 16:00
NEWSポストセブン
元GIジョッキー安田康彦にいったい何が…(2001年の宝塚記念)
元GIジョッキー安田康彦が「西成でドヤ街生活」を告白
“牝馬三冠”デアリングタクト、“クラシック三冠”コントレイル、そして“GI芝最多8勝”アーモンドアイと歴代最強クラスの名馬たちが揃う現在の競馬界。 だが、この盛り上がりに脇目も振らずに働く元GIジョッキーがいる。安田康彦(48)。1999年秋華賞では12番人気でGI初優勝、2001年の宝塚記念ではメイショウドトウに騎乗して当時最強と言われたテイエムオペラオーに勝つなど“穴男”として人気を博した男の姿は大阪・西成にあった。「ドヤ街に住んで日雇いの仕事をしていました。朝5時にセンター(西成労働福祉センター)付近に手配師のバンが止まっていて、日給1万円ほど。コロナ禍でも仕事は意外とありました」(安田氏、以下同) 安田氏は2006年に引退。翌年に泥酔状態でコンビニ店員へ絡み、恐喝容疑で逮捕された。その後、海外放浪を経てタイで生活していたが貯金が底を尽き、日本へ出稼ぎに来る生活を繰り返していた。「4月末に日本に帰ってきましたが、工場がストップして働き口がない。日雇いの仕事ならと思い、西成に行ったんです。ドヤ街は一泊1000円ほどで3畳の部屋にベッドだけでしたが、エアコンがあったので快適でした。仕事は工事現場での単純作業が主で、現場の人から素性を聞かれることもなく気楽でした」 仕事にありつけるのは3日に1回。仕事がない日は、飲み歩きもせず、ただ時間が過ぎるのを待った。タイで暮らす6歳の息子のためだという。「妻に毎月3万5000円の仕送りをしないと息子と電話させてもらえない。息子がいなかったら死んでいますよ(笑い)。この時勢だからタイに戻れないのが寂しいです」 最近は愛知県郊外に“出稼ぎ”し、時給1000円強の工場の夜勤で食いつないでいる。最後に、古巣の盛り上がりについてこう語る。「競馬界の人と連絡は取っていませんが、レースは定期的に観ていて、ユーチューブで予想をしています。秋華賞や菊花賞では三冠馬を本命に、2着、3着に来た穴馬も抜擢していました」“穴男”の相馬眼は健在だ。※週刊ポスト2020年11月20日号
2020.11.08 07:00
週刊ポスト
東京競馬場
秋の天皇賞 満を持して直線勝負に賭けるキセキを狙ってみる
 府中の芝2000メートルは数々のドラマが繰り広げられたきた舞台だ。競馬ライターの東田和美氏が考察した。 * * * ここを勝てば史上最多のGⅠ8勝目となる5歳牝馬アーモンドアイは、3歳春のオークスから9戦連続GⅠに出走してすべてオッズ1倍台、うち6回はその人気に応えている。実績馬が集結するこのレースで単勝1倍台になった馬は、平成以降6回あって、勝ったのは昨年のこの馬が初めてだ。 強さを見つけたヴィクトリアマイルから中2週で臨んだ安田記念では、グランアレグリアの強襲に屈した。これはアーモンドアイが目標にされたからこそで、「敗因」を探るというほどでもないし、ここで改めて、その強さを論じる必要もない。「自信の◎」などというのはかえって失礼だ。 ただし、菊花賞のコントレイルほど「絶対」ではない、と思う。菊花賞出走のGⅠ馬は、コントレイルだけだったが、今回は他に5頭もいる。平成以降の31回中19回は、すでにGⅠ馬となっている馬が勝っている。なかでもクラシックホースはダービー馬が5勝、皐月賞馬が4勝、オークス馬も3勝と、3歳時にGⅠを制した馬が強い。 しかし菊花賞馬がこのレースを勝ったのは1989(平成元)年のスーパークリークと2017年のキタサンブラックだけ。そもそも出走したことがあるのは半数の16頭(19回)で2勝2着2回3着1回。キタサンブラックは1番人気での勝利だったが、18着降着のメジロマックイーンや三冠馬ナリタブライアンなど、1番人気に推された他の5頭は馬券圏内にすら入っていない。かつては菊花賞馬にとって鬼門ともいえるレースだった。 近年は事情が違う。2400m以上のGⅠを勝つような馬は、走りなれた東京コースではなく、パリの凱旋門賞に向かっていったのだ。 その先駆けとなったのは2001年の菊花賞馬マンハッタンカフェ。3歳の夏に1000万下(2勝クラス)を勝って菊花賞に参戦し、ジャングルポケットなどを破って優勝、暮れの有馬記念、翌春の天皇賞(秋)と連勝して渡欧した(凱旋門賞では13着)。その後は、ディープインパクト、オルフェーヴル、ゴールドシップ、サトノダイヤモンドと菊花賞を含むGⅠ2勝以上を挙げている馬は、秋の東京ではなくパリを目指した。いまさら天皇賞を勝つより、もっと魅力的なレースがあるということを、日本人に知らしめてくれた。凱旋門賞当日の空気を吸って、日本の競馬ファンに一夜の夢を観させてくれた。ファンも凱旋門賞という選択に感謝したはずだ。《オークスから毎レース後、熱中症のような症状が現れはじめた。》《レース後のケアや体調の変化、長距離輸送のリスク、負担重量、タフで特殊な馬場を総合的に考えての決断に至った。》(国枝栄『覚悟の競馬論』講談社現代新書) 調教師の「決断」までの葛藤が手に取るようにわかる。ホースマンとして愛馬のことを考えればこその尊い「決断」だ。部外者がどうこういうことではないし、凱旋門賞に出ていなくても最強馬なのかもしれない。逆に、その時代の日本最強馬でなくても、凱旋門賞に出ているケースもある。 アーモンドアイが出ていれば、と日本の競馬ファンは痛切に思った。調教師も《本音を言わせてもらえば、アーモンドアイを凱旋門賞に出走させてあげたかった》(同上)。勝ち負けになる日本のGⅠレースに背を向けてでも出走したいのが凱旋門賞なのに、それが果たせなかった無念が伝わってくる。 もちろん、馬には自分が凱旋門賞に出たのだという自負はないし、出ていないという負い目もない。凱旋門賞に出た馬の方が強いということもないのだろう。しかし、武豊という騎手は誰よりもその重みを知っており、角居勝彦という調教師もまた最高の目標として意識し、2度にわたってその舞台を踏んでいる。 軸は昨年の凱旋門賞で日本馬として最先着したキセキ。 一昨年のJCではハイペースで逃げてアーモンドアイの世界レコードをアシストし、今年の天皇賞(春)では、2周目のスタンド前で大きく外に膨らみながら先頭に躍り出てしまうちぐはぐなレースでフィエールマンに連覇を許し、宝塚記念ではクロノジェネシスに6馬身ちぎられた。前走の京都大賞典でも、アーモンドアイと同じ勝負服を捕まえきれず、3年前の菊花賞以来、勝ち星から遠ざかっている。 しかし天皇賞(春)で、キセキの掛かり癖に手を焼いた鞍上は、宝塚記念で「タメればキレる」ことを確信。その意を受けた代打騎乗の浜中騎手は前走で最後方に控えてタメをつくった。今回は再びパリから戻った武豊騎手が手綱を取る。2400mを2分20秒9という時計で2着に逃げ粘った馬が、今回は満を持して直線勝負に賭ける。「じっくりタメをつくる」といえば角居厩舎のポリシーともいえる調教方針。来年2月で勇退するG1 26勝の名伯楽が、ホースマン人生の集大成ともいえる仕上げをしてくるはずだ。 相手筆頭はもちろんアーモンドアイだが、2019年にこのレースではなくパリに行くことを選んだ菊花賞馬フィエールマン、3歳で有馬記念を制したブラストワンピースにも敬意を表したい。そしてもう1頭、凱旋門賞馬の産駒クロノジェネシス・・・・来年の秋こそは、自由な選択ができるようになってほしいものだ。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2020.10.31 16:00
NEWSポストセブン
競馬を続けるためには「馬券を買う姿勢」が重要だという
札幌記念 洋芝適性ありそうなハービンジャー産駒を狙いたい
 一流馬が参戦してくることで知られる、最も格付けの高い夏重賞・札幌記念(GII)。競馬ライターの東田和美氏が考察した。 * * * 昨年はブラストワンピースとフィエールマンがここをステップに凱旋門賞を目指していた。2014年もハープスターとゴールドシップが同じようにここからパリに向かったことで、札幌競馬場のリニューアルオープンはこれ以上ない盛り上がりとなった。それらにくらべると今年はメンバー的にも今一つ、という声が聞かれる。ラッキーライラックはGⅠ3勝だが前走宝塚記念では6着に敗れており、マカヒキが回避。他のGⅠ馬2頭も近走は勝ち負けからは遠ざかっている。出走はフルゲートに満たない12頭。このレース6勝の武豊騎手や川田、福永、松山といったリーディング上位騎手の参戦もない。 近年は凱旋門賞など秋のGⅠへのステップレースとしての意味あいが強い。GⅡになってからの23回の勝ち馬のうち11頭が次走に天皇賞(秋)を選んでおり、2016年2着だったモーリスを含めれば4頭が勝っている。1番人気馬が7勝2着7回3着4回と堅実だが、ここ8年勝っていないのは、有力馬の目標は先、ということなのではないか。ラッキーライラックにしても、GⅠ舞台での打倒アーモンドアイこそが悲願であるはずだ。 前走函館記念を使った馬が6勝で2着7回3着7回と最多だが、これは札幌記念である程度の結果を出し一段上のステージに上がろうかという馬たちがそのステップレースにしたり、洋芝適性を見込んでセットで臨んできたりしたケースが多いからだろう。2017年の覇者サクラアンプルールのように函館記念9着から巻き返した例もあるが、札幌記念で3着以内に入った馬のうち11頭は、函館記念でも馬券圏内に入っている。 次に馬券に絡んでいるのは宝塚記念、安田記念からの参戦で、秋に向けて手ごたえを掴んでおきたい実績馬。合わせて13頭が馬券圏内にはいっているが、うち8頭が前走のGⅠでも掲示板に載っている。 さすがにGⅠ昇格が望まれている1着賞金7000万円のレース。勝ち馬のうち20頭、2着馬も18頭までが重賞を勝っている。今年も12頭のうち8頭が重賞勝ち馬だ。ただしGⅡになって以後の23回でGⅠ馬として勝ったのはエアグルーヴ(2勝)、セイウンスカイ、テイエムオーシャン、ファインモーション、フサイチパンドラ、ハープスター、ブラストワンピースの7頭。ジャングルポケット、ゴールドシップ、モーリスやフィエールマンは勝てなかった。勝った7頭のうち5頭が牝馬だ。 軸は人気でも前走安田記念4着のGⅠ牝馬ノームコア。ヴィクトリアマイルではコンマ7秒離されていたアーモンドアイとの差を、コンマ1秒まで詰めており、昨年のヴィクトリアマイルではラッキーライラックを破っている。横山典騎手はこのレース2勝2着2回3着4回と好相性だ。 北海道での競馬が初めてということで洋芝適性については陣営も慎重だが、ハービンジャー産駒は昨年の覇者ブラストワンピース、2016年3着のモズカッチャンと頭数が少ないわりに結果を出している。祖父の大種牡馬デインヒル産駒もエアエミネムとファインモーションも当然のように勝っている。 相手はドレッドノータス、ペルシアンナイトというハービンジャー産駒2頭に、函館記念で復活したアドマイヤジャスタと重賞未勝利でも北海道で4勝のポンデザール。ラッキーライラックはもちろん有力だが3連単の2、3着付けぐらいしか妙味がないだろう。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2020.08.22 16:00
NEWSポストセブン
今年の秋は「1勝クラス」が最大7レース組まれていた
夏の福島競馬の名物重賞・七夕賞は「小倉巧者」も狙い目
 荒れるレースを好機と捉えるか敬遠するか。競馬ファンも二分されるところだが、予想の観点からすれば面白さしかないはずである。競馬ライターの東田和美氏が七夕賞(GIII)を分析した。 * * * 平成以降1番人気がわずか4勝。5番人気以下が15勝もしており、馬連が3桁(100円台)だったのは、わずかに1回。過去10年だけでも馬連万馬券は4回、3連単の百万馬券が2回出ている福島の名物重賞、一筋縄ではいかない。 もちろん、この時期古馬一線級の出走はない。ここでの勝利が初の重賞勝ちだったという馬が16頭だが、ツインターボなど3頭はこのレースの前に福島の重賞を勝っている。 今年の出走馬も11頭が福島コースを走ったことがあり、8頭が勝利をあげている。1戦1勝馬2頭を含めて「5頭が連対率10割」と伝えているメディアもあった。ヴァンケドミンゴなどは、関西馬でありながら全4勝すべてが福島でのものだ。  しかしこのレース、言われているほど“福島巧者”の天下とも思えない。福島競馬場で行なわれた過去20回で見ても、福島に勝ち鞍がある馬の勝利は6回。2007年のサンバレンティンが前年の福島記念を含む2勝をあげていたが、あとは1勝しているだけだ。 勝ち馬を眺めてみると、むしろ7頭に小倉競馬場での勝ち鞍があることに気づく。なかでも2005年に小倉三冠(小倉大賞典、北九州記念、小倉記念)などを勝ったメイショウカイドウは【8 1 2 3】という驚異的な小倉実績を引っ提げて2006年7月の福島に初見参、59キロを背負いながら前走でGⅡ金鯱賞を勝った1番人気のコンゴウリキシオーなどを退けている。その他2010年のドモナラズは小倉で2勝、2014年のメイショウナルトも小倉記念など3勝。2016年のアルバートドックも小倉大賞典の覇者だ。 福島も小倉もメイン開催は猛暑の時季。小回りでほぼ平坦、直線が1mしか違わないこともあって、適性馬が同じというイメージが関係者にはある。そういえば競馬場の規模や空気感もなんとなく似ている気がしないだろうか。 しかし美浦の所属馬にとって小倉競馬場はあまりに遠い。冬の開催では芝のレースを求めて遠征・滞在することもあるが、夏場の長距離輸送はリスクが高すぎる。東西格差の最大原因ともいわれている所以だ。 一方、栗東サイドにしてみれば、東京や中山より距離的には長くなるが、交通量が比較的少ない北陸道から磐越道というルート使うため、輸送が大変という意識はあまりない。 事実、七夕賞はここ10年だけでも関西馬が7勝しているが、小倉記念はずっと関東馬の勝利がない。2006年から1200mになった北九州記念はスプリンターズSの前哨戦という意味合いも出てきたため2016年に関東馬が勝っているが、それ以外は出走馬もほとんどいない。 ヒンドゥタイムズは今回がオープン入り初戦。これまで2000mばかり9走して5着以下がなく、新馬勝ち直後の2戦目にはGⅢ京成杯に挑んで2着とクビ差3着。昨夏の小倉2勝クラスでは1番人気に推されながら2着だったが、勝ち馬とは同タイムで、小回りを苦にした印象はなかった。今回が初めての福島。東京や中山で連を外していることから、陣営では輸送を課題にあげているが、むしろこのキャリアにもかかわらず、どこへ行っても崩れないと評価すべきではないか。 1番人気に支持された前走京都3勝クラスの下鴨Sでは道中じっくり足を貯め、直線あっさり抜け出して勝った。2着馬は次戦を勝ってオープン入り、3着馬も格上挑戦で重賞を勝っているようになかなか高レベルのレースだった。今回はこのレースより2㌔軽い55㌔、斎藤崇厩舎と北村友一騎手という、上がり馬コンビでの初重賞制覇に期待する。 ちなみにオープン初戦が七夕賞という馬はあまり多くはなく、今回も出走するソールインパクトが2年前に3着に来たぐらいで、勝ち馬となると2008年のミヤビランベリまで遡らなければならない。ちなみにこの馬は翌年も勝っており、函館以外すべての競馬場で走っている。 相手も小倉経験馬から。2年前の宝塚記念3着で、小倉での実績もあるノーブルマーズが今年に入って復調気配。アウトライアーズは小倉でも福島でも勝ち鞍があり、福島の重賞を2勝している丸田騎手とのコンビ復活が不気味。人気馬ではジナンボーが小倉の空気をさりげに吸っている。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2020.07.11 16:00
NEWSポストセブン
昨年の宝塚記念に出走したキセキ。右は角居調教師
フルゲートで大混戦の宝塚記念 同厩舎複数頭出しは狙えるか
 今年の春のグランプリは多士済々フルゲートでの決戦となった。競馬ライターの東田和美氏が分析する。 * * * 異なる路線を歩んできた馬が一堂に会するのが宝塚記念本来の醍醐味。そんなことで同一厩舎による複数頭出しが多い。GⅠのわりにフルゲートになることが少なく、阪神内回りの2200mということで、多少まぎれもある。春競馬のクライマックスでオーナーの意向もあり、GⅠ路線を歩んでこなかったオープン馬でも「出られるのなら」と出走に踏み切るケースもあるようだ。わが出資馬も、かつて準オープンの分際で出走したことがあるぐらいだ。 宝塚記念での同厩舎複数頭出しはこれまで27厩舎が40回。池江泰寿厩舎は2011年の5頭出しを含めて5回とダントツ。複数頭出しを2回以上経験しているのは、平成以降では橋田厩舎と橋口弘次郎厩舎が3回、藤沢和厩舎、音無厩舎、角居厩舎が2回ずつ。 2頭出しとなると、担当馬の違う厩務員や助手同士がギクシャクして、厩舎内での人間関係が悪くなるのでは、と勘繰ってしまいそうだが、いまは多くの厩舎が「チーム」として機能している。GⅠに2頭出しするような厩舎は当該週の他のレースにも多くの出走馬が控えており、それぞれが勝利を目指しているので厩舎内の競争意識がマイナスに働くことはないのだろう。かつてGⅠ複数頭出しについてある調教師に聞いたところ「大変なのは取材への対応」というなんとも切実な答えが返ってきた。 複数頭出しで宝塚記念を勝ったケースは平成以降で5回(カッコ内は別の出走馬の成績)。二ノ宮厩舎以外は、いずれも「複数頭出しの常連」である。1998年 橋田厩舎  サイレンススズカ(ゴーイングスズカ4着)2010年 二ノ宮厩舎 ナカヤマフェスタ(アクシオン15着)2012年 池江厩舎  オルフェーヴル(マウントシャスタ5着、トゥザグローリー12着)2015年 池江厩舎  ラブリーデイ(トーセンスターダム12着、オーシャンブルー14着)2018年 音無厩舎  ミッキーロケット(ダンビュライト5着) 今年も複数頭出しの経験がある角居厩舎が3頭、音無厩舎が2頭出走。とくに角居厩舎は、藤沢和厩舎に次ぐJRAGⅠ26勝だが、宝塚記念は数少ない未勝利GⅠ。これまでのべ13頭が出走しながら2着が3回。昨年もキセキが1番人気に推されながら、道中ではリスグラシューにマークされ、最後は突き放される悔しい結果だった。来年2月いっぱいでの引退を表明しているため、今年が最後のチャンスになる。 しかも今年は1番人気が予想されるサートゥルナーリアと、昨年の1番人気馬キセキというGⅠ馬2頭。もう1頭も初GⅠの天皇賞(春)で5着と健闘したトーセンカンビーナで、けっして「出られるなら」ということだけで挑んできたわけではない。 宝塚記念の同厩舎複数頭出しで2頭が3着以内に入ったのは、1967年にタイヨウとアポオンワードという武田文吾厩舎所属馬の1着3着があるだけ。しかし当時はワイドも3連複・3連単もなかった。 馬券はサートゥルナーリアとキセキの3連単2頭軸マルチ。相手は大阪杯組のGⅠ馬を中心にグランプリに強い池添のモズベッロ、ワンツースリーに夢を託してトーセンカンビーナも入れておく。 ちなみに同厩舎や同馬主の2頭出しは人気薄を狙えと言われるが、宝塚記念に限って言えば、人気薄の方が上位に来たのは40回のうち15回と半数以下。2勝2着3回3着1回は微妙な結果だが、9回は“下克上”でも馬券には絡んでいない。複数頭出しの意図を見極める必要がある。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2020.06.27 16:00
NEWSポストセブン
無観客で開催された中山競馬(2020年3月1日)
皐月賞は「人気薄のディープ産駒」が激走する、と考えてみた
 牡馬クラシック第一弾・皐月賞。今年は実に5頭の無敗馬を含めた激突となるだけにファンの注目度も大きい。競馬ライターの東田和美氏が考察した。 * * * 昨年12月に2歳GⅠを勝った2頭、サリオスとコントレイルに加え、弥生賞を勝った評判馬サトノフラッグとの「3強」と言われているが、すんなりと決まるのだろうか。 近年「3強」といわれたのが2016年。きさらぎ賞から直行だったルメール騎乗の3戦3勝サトノダイヤモンドが2.7倍の1番人気。デビュー2戦目で朝日杯FSを制したM・デムーロ騎乗のリオンディーズが2.8倍の2番人気。弥生賞まで3連勝の川田騎乗マカヒキが3.7倍で3番人気。4番人気以下は単勝16倍以上だった。 リオンディーズこそ屈腱炎で早く引退したが、ディープ産駒2頭はその後クラシックホースとなっている。4番人気4着のエアスピネルはダービー4着、菊花賞3着で古馬になってからGⅢを2勝。5番人気8着のロードクロノスは秋に京成杯AH、2年後にスワンSを勝っている。その他2018年の宝塚記念を勝ったミッキーロケット(13着)、昨年京都大賞典を勝ったドレッドノータス(15着)、今年のダイヤモンドSを単勝325倍の16番人気で勝ったミライヘノツバサなんかも出ていた(12着)。 しかしこのレース、勝ったのは8番人気のディープ産駒ディーマジェスティだった。未勝利脱出は3戦目、次のホープフルSは出走取消、一息入れた共同通信杯の勝利は6番人気ということもあり、ややフロック視されていたのかもしれない。 このレース、マカヒキは2着、サトノダイヤモンドは3着と結果的にディープ産駒が上位を独占。他のディープ産駒では6番人気マウントロブソンが人気通りの6着、7番人気アドマイヤダイオウが9着だったが、抽選をくぐり抜けて出走にこぎつけた15番人気のウムブルフが10着に踏ん張った。 皐月賞はディープ産駒より、ステイゴールド系のほうがより良績を残しているとの指摘もある。ステイ自体はディープ産駒と同じ2勝だが、オルフェーヴル産駒のエポカドーロも勝っているぞ、というわけだ。だが、ステイ(オルフェーヴル)産駒は2、3着が一度もない。一方、ディープ産駒は2着3回3着4回。 とはいえ、人気のディープ産駒2頭からでは、よほど軍資金が豊富でなければ、休業補償にもならない。しかも皐月賞に限っては、人気になった時に勝ち切れていないのだ。これまで31頭が出走し、3番人気以内に推されたのは11回あるが〈0 3 2 6 〉で、半数以上が馬券圏外。 一方、勝ったディーマジェスティは8番人気、2017年のアルアインは9番人気だ。2例だけなので、人気薄でこそ狙い、と言えるほどではないが、人気薄でも侮れないとは言える。初年度産駒で3着にはいったダノンバラードも8番人気だった。 レースを引っ張るのは重馬場での勝ち鞍もある“サンナンボー”のラインベックあたりか。大舞台で偉大な両親の血が騒ぎだすかもしれないが、無理なく前につけられそうなのが、好枠を引いたレクセランスだ。すみれSは小頭数のことも多く、皐月賞と縁がないのが気になるが、フサイチコンコルドはここからダービー馬になった。 川田騎手が競馬を教えての3連勝だが、今年は土日の移動ができないため、北村友騎手へ乗り替わった。愛馬を手放した形の川田からモタレ癖の矯正法などきっちり聞き出したことだろう。高松宮記念と大阪杯での悔しさを晴らすことを期待したい。皐月賞の余韻が残る最終レースには、フランケル産駒で5戦3勝の姉エクセランフィーユがスタンバイしている。●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2020.04.18 16:00
NEWSポストセブン
舞台は中山競馬場
豪華メンバーの有馬記念 あえてGI未勝利馬を狙ってみる理由
 おそらく今年で最も盛り上がるレースになりそうな第64回有馬記念。予想をぶつけ合うのもまた楽しい時間だ。競馬ライターの東田和美氏は大胆に狙う。 * * * GⅠ馬11頭中7頭が2019年のGⅠを勝っており、合計22のGⅠを制している。これはジェンティルドンナが勝った14年の10頭26勝と肩を並べる豪華さ。平成以降、有馬記念にGⅠ馬が8頭以上顔を揃えたのは9回。様々な路線を経てきた実績馬による頂上決戦かと思いきや、実は3着までにGⅠ未勝利馬が必ず1頭は入っている。 トウカイテイオーが1年ぶりの出走で勝った1993年は、2着の菊花賞馬ビワハヤヒデ他、JC馬レガシーワールド、天皇賞(春)のライスシャワー、ダービー馬ウィニングチケット、牝馬2冠のベガという豪華メンバーだったが、3着はナイスネイチャ。“ブロンズコレクター”の名にふさわしく、有馬記念3年連続3着という快挙を達成した。 サクラローレルが勝った1996年は14頭中9頭がGⅠ馬、うち8頭は同年の制覇だったにもかかわらず、2着マーベラスサンデー、3着マイネルブリッジ、4着ロイヤルタッチはGⅠ未勝利。その他GⅠ馬が9頭出走した2002年、8頭出走した2008年はともに2、3着がGⅠ未勝利馬だった。   前出の2014年も、宝塚記念でGⅠ5勝目をあげたゴールドシップ、JCで2つ目のGⅠを勝ったエピファネイア、ドバイDFを勝つなど世界1位にランクされたジャスタウェイが上位人気に名を連ねていたが、2着は皐月賞、ダービーでは健闘したものの、前走の菊花賞で16着に大敗していたトゥザワールドだった。 もっとも伏兵馬の食い込みは、有馬記念にはつきもの。30回のうち1番人気は13勝2着7回と強さを見せているが、馬券圏内の3着までが1~5番人気で収まったのは7回。12回は二桁人気馬が絡んでいる。2016、2017年は1~3着をGⅠ馬が独占したが、その前16年間は、必ず非GⅠ馬が馬券圏内に入っている。 藤沢和雄調教師は著書『GⅠの勝ち方』(小学館)で、余力を残すローテーションが必要だと前置きして、2007年のマツリダゴッホ(9番人気)の勝利をこう分析している。《マツリダゴッホは天皇賞で惨敗した。普通は「こんなはずじゃない」とジャパンカップを使いたくなるが、そこを我慢して、得意な中山コースの有馬記念に照準を合わせて調整してきた》。これに対し、1番人気で8着に敗れたメイショウサムソンは、春大阪杯(1着)から天皇賞(1着)、宝塚記念(2着)と使い、凱旋門賞はインフルエンザ騒動で断念。秋は天皇賞(1着)、JC(3着)と走り、《人間が考えるほど余力が残っていなかったのかもしれない》。 また、この年の有馬記念では、牝馬ながらダービー馬となり、JCでも古馬相手に健闘したウオッカが、3番人気11着と大敗している。これについて角居調教師は中山2500mが合わなかったと断言。2008年、2009年もGⅠ勝ちを重ねてファン投票でも1位に選出され、年度代表馬にもなったウオッカだが、角居師は有馬記念を使わなかった。 一方、GⅠ未勝利ながら、2006年2着、2007年5着だった《ポップロックのような器用な馬には有馬は合う》《適性だな、と思います》(小学館新書『競馬感性の法則』)と指摘している。東西を代表する二人の調教師が、有馬記念では「格」よりも「状態」や「適性」がカギになることがあると言っている。 とはいえ、過去GⅠ未勝利馬が勝ったのは平成以降6回だけだし、その時出走していたGⅠ馬はすべて7頭以下。もちろん勝った馬は能力があったのだが、有馬記念を回避したGⅠ馬が多かったのも一因。昨年もGⅠでは馬券圏内にすら入ったことがないブラストワンピースが勝ったが、2018年中にGⅠを勝ったのは2頭だけだった。 逆に言えば、年を越せば同じような距離の、相手関係が楽になるAJCC杯や日経新春杯が控えているにもかかわらず、これだけのGⅠ馬が出走を表明しているレースに挑むのは、「状態」がすこぶるよく、「適性」もあるという陣営の自信があってのことではないのか。 上位人気のGⅠ馬に敬意を表しつつ、スティッフェリオがその一角に食い込むことを期待する。天皇賞(秋)で12着に敗れた段階で、音無調教師は「小回りの方がいい」と有馬出走のプランを立てて調整してきた。 1998年には11番人気ながらセイウンスカイやエアグルーヴを抑えて3着にはいったステイゴールドの産駒は、ここ10年で4勝2着1回3着2回。好枠を引き当てたGⅠ未勝利の丸山騎手に、ゴール前で「そのまま!」と声援を送りたい。●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2019.12.21 16:00
NEWSポストセブン
2018年のジャパンカップを制したアーモンドアイ
秋天は「ノーザンファームの運動会」 各種ワンツー決着を考察
 一騎打ちは競馬の醍醐味だがそうそう固くはおさまらないのはファンならよく知るところ。競馬ライター・東田和美氏が秋の天皇賞について考察した。 * * * アーモンドアイ、サートゥルナーリアというロードカナロア産駒2頭に人気が集まっているが、このレースで同じ種牡馬産駒のワンツーは平成以降5回。うち4回はサンデーサイレンス、あと1回はディープインパクト産駒だ。この2頭は他のGⅠでもワンツーを決めたことが何度かあるし、ディープ産駒は今年だけで天皇賞(春)、オークス、ダービー、菊花賞と4回もワンツーを達成している。 サンデーサイレンス系ではダンスインザダーク産駒やステイゴールド産駒のワンツーもあった。サンデー系以外ではブライアンズタイム産駒のワンツーも複数回あるが、キングカメハメハ産駒のGⅠでのワンツーは、2015年朝日杯フューチュリティSのリオンディーズとエアスピネルだけ。古馬GⅠでは一度もない。キングカメハメハ産駒はこのレース2勝でその時の2着馬はともにディープインパクト産駒。2着3着には1回も来ていない。 今回は「社台グループの運動会」というより「ノーザンファームの運動会」。2強を含む7頭のGⅠ馬など10頭が出走する。過去7勝2着5回3着8回。一方、社台ファームの生産馬は4勝だが、2着馬はノーザンファームより多い9回で連対数も上回っている。ノーザンファーム、社台ファームともにワンツーは1回しかないが、社台グループのワンツーは9回もある。 GⅠの中では堅い決着が多い方だが、1、2番人気で収まったのは5回。このときの馬連はいずれも3桁だが、それ以外は1000円以上ついている。1番人気は9勝2着6回、2番人気は4勝2着6回、3番人気は5勝しているものの2着がなく、むしろ4番人気が9連対、5番人気が8連対している。 牝馬は4勝2着4回3着3回。ワンツー決着は言わずと知れた2008年のウオッカ、ダイワスカーレット。ただ1回きりだから語り継がれる。 3歳馬の挑戦は31頭で2勝2着4回3着3回。4歳馬は155頭中14勝2着13回3着13回、5歳馬は157頭12勝2着11回3着11回(2000年以前は現在の馬齢で集計)。3歳馬は勝率ではともかく連対率、複勝率ともに4歳馬、5歳馬を上回るがワンツーはない。4歳馬同士のワンツーは7回、5歳馬同士が5回ある。 勝ち馬の前走を見ると毎日王冠からの参戦が11頭、京都大賞典と宝塚記念からが5頭、札幌記念からが4頭。このうち前走でも勝っているのは毎日王冠5頭、京都大賞典3頭、札幌記念3頭。宝塚記念組5頭は敗戦からの巻き返しだ。それ以外の5頭は福島民報杯のレッツゴーターキン、新潟記念のオフサイドトラップ、南部杯のアグネスデジタル、神戸新聞杯のシンボリクリスエス、オールカマーのレイデオロとすべて勝っている、つまり1着馬30頭のうち半数以上の16頭が連勝している。 2着馬も毎日王冠10頭、宝塚記念5頭、京都大賞典とオールカマーが4頭で、前走勝っているのが10頭。 1990年代前半は毎日王冠組のワンツーが4回あったが1996年以降はゼロ。1999年が京都大賞典組、2004年と2017年に宝塚記念組のワンツーがあるだけだ。 そして天皇賞(秋)と言えば、藤沢和雄厩舎が6勝もしていることで知られており、2004年にはゼンノロブロイとダンスインザムードでワンツーを達成している。ならば今回は、同厩舎同馬主同種牡馬同生産牧場で共にダービー馬、ワグネリアンとマカヒキのワンツーの馬券を買ってみるということでどうでしょうか。●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2019.10.26 16:00
NEWSポストセブン
ディアンドルの鞍上は藤岡佑介騎手の予定
スプリンターズS 3歳牝馬ディアンドルは伸びしろ十分
 いよいよ秋のGIシリーズが開幕する。幸先よくスタートダッシュを決めたいものだ。競馬歴40年のライター・東田和美氏がスプリンターズSの狙い目について考察する。 * * * スプリンターズSが4回中山最終日に行われるようになったのは2000年から。3歳馬の出走は19年間で26頭しかおらず、成績は〈1 1 2 22〉、勝ったのは2007年のアストンマーチャンだけだ。1400mまでの重賞3勝で迎えた桜花賞で2番人気7着に敗れた後、スプリント路線に切り替え、夏の北九州記念(6着)を経ての参戦だった。 昨年11番人気で2着に入ったのがラブカンプー。フィーリーズレビュー、アーリントンCに敗れた後スプリント路線に向かい、葵Sの2着で手ごたえをつかみ、アイビスSD2着、北九州記念3着、セントウルS2着と好戦してのぞんだ(なぜこんなに人気がなかったのだろう)。 2016年の3着馬ソルヴェイグも牝馬。桜花賞17着の後、スプリント路線に向かい、函館SS(1着)キーンランドC4着から挑戦。いずれもクラシック戦線に乗りかけながら跳ね返され、距離を短縮して臨んでいる。 今年の3歳馬もノーワンは桜花賞で11着、NHKマイルCでも長かったかというのがイベリス、ハッピーアワー、ファンタジストの3頭。いずれも距離を短縮しての挑戦となる。 そんな中、ディアンドルはデビュー2戦目の未勝利戦から重賞の葵Sまで1200m戦を5連勝。古馬との初対決となった前走北九州記念でも2着。2歳時に3勝しながら、クラシック路線には目もくれず、スプリント路線を突っ走ってきた。 ルーラーシップ産駒といえば、キセキやリオンリオン、オークス2着のリリーノーブルなど、自身がそうだったように中長距離で活躍するイメージがある(ただしセイウンコウセイやファインニードル、ハクサンムーンの父はJCと宝塚記念のアドマイヤムーンだ)。3世代目の今年の3歳が秋GⅠのトライアルでも結果を出し、サイヤーランキングでも5位につけている。なにしろ母はエアグルーヴ。ガーサント、ノーザンテースト、トニービンと、社台Gの歴史を辿るような血を受け継いでおり、サンデー系牝馬との配合で生まれる産駒は、キングカメハメハのように多彩な産駒を送り出すのだろう。 ディアンドルは2歳春に入厩したものの、左前の骨瘤の状態を気にしていたため、短い距離での使い出しになったが、いまではまったく気にならなくなった。GⅠ初挑戦なのがどうかと言われているが、そもそも3歳馬が初めて出られる1200mのGⅠがこのレース。持ちタイムがないことが懸念されているが、追い切りでは「目一杯追えばどれだけ動いていたのかと考えると本当に怖いぐらい」(シルク・ホースクラブHP)とのことで、伸びしろは十分。牝馬らしからぬ馬格、53キロも魅力だ。 北九州記念の1着馬ダイメイプリンセスが、セントウルSで6着。そのセントウルSで2、3着の3歳馬をねじ伏せて圧勝したタワーオブロンドンが、キーンランドCではダノンスマッシュに敗れている。そのダノンスマッシュは高松宮記念でミスターメロディとセイウンコウセイの後塵を拝し、そのミスターメロディはセントウルSで、セイウンコウセイはキーンランドCで・・・・そう考えると、過去のレース結果で比較するのはいかがなものか。 ここ3回のラグビーW杯の年は、2007年アストンマーチャン、2011年カレンチャン、2015年ストレイトガールと牝馬が勝っている。前日の日本対アイルランド戦の余韻が残る中、新たなヒロインの誕生に期待したい。●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2019.09.28 16:00
NEWSポストセブン
種牡馬としても抜群の実績を残すディープインパクト
ディープインパクトの後継種牡馬 どれも決め手に欠ける実情
 訃報は突然だった。日本競馬の歴史にその名を刻んだディープインパクトの「血」について、ライターの東田和美氏が考察する。 * * * 7月30日に急逝したディープインパクトは、競走成績もさることながら、種牡馬としての実績も抜群だった。初産駒が2010年にデビューすると、2011年には3歳世代だけでリーディングサイアーの2位につけ、2012年には難なく1位になり、その後はずっとリーディングトップに君臨している。 2018年は英2000ギニーをサクソンウォリアー、仏ダービーをスタディオブマンが制して日本のみならず欧州でもクラシックホースを輩出。内外で41頭の産駒が60以上のGIを勝っている。日本では5頭がダービー馬となるなど、16頭のクラシックホースを世に送り出している。GII、GIII勝ち馬は70頭近くになり、産駒の獲得賞金はゆうに500億円を超え、種付け料は4000万円だった。 今年はキングカメハメハも種牡馬を引退したが、こちらはすでにロードカナロア、ルーラーシップというサイアーランキングでベスト10に入るような後継種牡馬がいる。とくにロードカナロアの今年の産駒は母親名を列挙するだけでため息が出てくる。ノーザンファーム(NF)産ではブエナビスタ、ジェンティルドンナ、メジャーエンブレム、マリアライト、ハーブスター、さらにジンジャーパンチとルージュバックの母子。社台ファーム産でもダイワスカーレット、サンテミリオン、追分ファームのレジネッタなど、そうそうたる面々だ。種付け料も1500万円となり、数年のうちにリーディングサイアーの座に就くのは間違いなさそうだ。 ドゥラメンテはキングカメハメハ産駒というより、社台グループの力が結集したような種牡馬だが、当歳市場でも人気だったし、来年産まれてくる産駒も多い。志半ばで引退した良血リオンディーズもマイル中心に活躍馬が出てきそうだ。その他、ホッコータルマエ、ラブリーデイなどさまざまなタイプの後継種牡馬がいる。地方ではトゥザワールドやペルシャザール産駒が頑張っている。 一方、ディープインパクトの代表産駒はと聞かれて出てくるのは、まずジェンティルドンナ。牝馬三冠、JC連覇などGIを7勝、獲得賞金ランキングで歴代3位にあたる17億円は、父ディープを凌ぐ。しかし、それ以外の産駒はGI2勝まで。牡馬はJCの勝ち馬がなく、ダービー馬は5頭いるが、他のGI勝利がない。ステイゴールド産駒のオルフェーヴルやゴールドシップの活躍に比べれば物足りないといわざるを得ない。 ジェンティルドンナをはじめ、JC勝ちのショウナンパンドラや、宝塚記念勝ちのマリアライト、ドバイでも勝っているヴィブロスなど牝馬の活躍が印象深い。彼女らは引退後繁殖牝馬として、サンデー系以外の種牡馬の名声を高めていく。 ディープインパクト自身の種牡馬としての能力は疑うべくもない。産駒はコンスタントに勝ち上がるし、底知れぬパフォーマンスを見せることはある。ただ、それも「やっぱりディープの子だなあ」ということで納得できるもので、ディープ自身に感じた衝撃以上のものを持った牡馬は、いまのところ出ていないし、種牡馬として衝撃的な実績も出せていない。以下、順に見ていこう。 2012年のダービー馬ディープブリランテの2018年のサイアーランキングは26位。重賞2勝のセダブリランテスがいるものの、フジキセキ産駒のキンシャサノキセキ(12位)や、ステイゴールド産駒のオルフェーヴル(13位)、ネオユニヴァース産駒のヴィクトワールピサ(18位)の後塵を拝している。今年のNF産にはシンハディーバとの子がいるものの社台G産全体の頭数は少なく、頭打ち感は否めない。 競走成績としては京都新聞杯を勝っただけのトーセンホマレボシだが、初年度産駒のミッキースワローがセントライト記念を勝った。近親には活躍馬が多いが、2018年の種牡馬ランクは51位。出走頭数が多い(94頭)わりに勝ち星は多くない。 初年度産駒が重賞を勝って順調なスタートを切ったのが2013年のダービー馬キズナ。セレクトセールでは1歳馬のアドマイヤキラメキが2500万円からはじまって1億3000万円まで値を上げたが、セレクトセール当歳の上場馬はNFからの3頭だけで落札価格もあまり伸びなかった。社台Gで今年産まれたのは20頭ほどだが日高では80頭以上。ビアンフェのようにさまざまタイプの産駒が出てくるかもしれない。 セレクトセールの落札価格でキズナを上回った感があったミッキーアイルはスプリント部門で旋風を巻き起こす可能性を秘めている。クラシック向きではないということで価格は控えめだが、種付け料も150万円。サンデーサイレンス系の新たな潮流になるかもしれない。 スピルバーグ産駒はいまのところまるで目立っていないが、ディープ産駒でただ1頭、天皇賞(秋)を勝っている。クラブ募集時では人気だった藤沢和雄厩舎の管理馬コースタルチャートなど、社台サラブレッドクラブ所属3頭の2歳馬の活躍しだいだ。“長男”ともいうべきリアルインパクトは、やっと今年初年度産駒デビューしたばかり。すでに5勝を挙げているが、セレクトセール当歳には上場がなかった。3歳で安田記念を勝った後は13戦勝利なし、7歳まで走って30戦5勝、二桁着順だったことも多かったことで、信頼性に欠けるのだろうか。今年の産駒も20頭ほどだ。 今年初産駒が80頭近く誕生したサトノアラジンは種付け料の100万円は魅力的で、スピードに特化した馬が出てくるかもしれない。しかし、競走成績にムラがあったことが印象を悪くしているのか、セレクトセールでの落札価格も思ったほど伸びず、オーナーたちの期待が感じられなかった。 シルバーステートは、レコード2回を含む5戦4勝ながら重賞未勝利なので種付け料は80万円。今年は日高地方を中心に100頭以上が産まれており、NFで12頭、追分Fで4頭が生まれ、うち3頭がセレクトセールに上場され、ローエキスキーズは1000万円からのスタートながら、7400万円までせり上がった。こういう馬が種牡馬として成功すると、ディープインパクト系の枝葉がぐっと広がっていくのだが。 ということで、ディープ直子の面々が後継種牡馬として名乗りを上げるには、どれも現時点で決め手に欠けるのが実情だ。 ディープインパクトの父サンデーサイレンス(SS)は1995年にリーディングサイアーとなり、5年後の2000年には産駒フジキセキがリーディング6位にランク。2002年に9位に入ったのがダンスインザダーク。SS自身は2002年に死亡するが、その後2007年までリーディングサイアーとして君臨した。 その偉大さを実感させたのは、むしろ死亡後。ダンスインザダークが2004年には2位になって親子ワンツーを達成。2005年にはスペシャルウィーク、2007年、つまり死後5年目にはアグネスタキオンとアドマイヤベガも台頭、1位SSで2位以下10位までに産駒5頭がランクインした。その後も、マンハッタンカフェやネオユニヴァース、ダイワメジャーやステイゴールド、ハーツクライなどが好成績を収め、ベスト10のうち8頭をSS産駒が占めるまでになったのは、死して13年後の2015年だ。 そう考えれば、ディープ産駒が後継種牡馬として名乗りを上げるのもまだまだこれからなのかもしれない。なにより、ディープ自身がSS晩年の産駒にして最高傑作といわれている。しばらくは、ハーツクライやダイワメジャーといった、SS直子につないでもらって、強力な後継者の出現を待てばいいのだ。しばらくはそういう視点でディープ産駒の新馬戦を見ていきたいと思う。●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
2019.08.03 07:00
NEWSポストセブン

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