個人視聴率の調査自体は1997年から行われていたが、昨年春からビデオリサーチの発表の主体がようやく世帯から個人に切り替わった。
「ここ数年でYouTubeやAmazon Primeなどネットの動画メディアが一気に台頭し、テレビ局の尻に火が付きました。世帯視聴率を重視していくと、50歳以上の視聴者を取りに行く番組作りになる。今は若者のテレビ離れが進んでいるし、人口が多くてテレビの好きな層に訴えかけた方が数字を取れますからね。
しかし、いわゆるM3(男50歳以上)、F3(女50歳以上)はあまり購買意欲を持っておらず、スポンサーになってくれる企業が少ない。だから、世帯でも個人全体でもなく、テレビ局は独自に49歳以下を“コアターゲット”に定めたのです。TBSは“ファミリーコア” で4歳から49歳ですが、日本テレビとフジテレビは13歳から49歳まで、日テレは“コアターゲット”、フジは“キー特性”と呼んでいます。このように局によって、若干基準が異なりますし、名称も統一されていない。ビデオリサーチも“コア視聴率”を一般には発表していない。だから、ややこしいと言えば、ややこしい」
業界内ではもはや“コア視聴率”が常識にもかかわらず、松本が不満を漏らしたように、いまだに世帯視聴率で図るメディアが出てくるのはどうしてなのか。
「ビデオリサーチが基本的に世帯と個人全体しか発表しないからでしょうね。それなら、馴染みがあって、高い数字の出る世帯を取り上げようと考えるのでは。それに、最近は局内で『視聴率の情報を外部に漏らさないように』という指令が出ているんですよ。数字が低いと叩かれると思って、ピリピリしている。実は、これが逆効果になっている面もあると思います」
業界内の話題にもかかわらず、松本のツイートには数万の『いいね』が付いているように、社会は視聴率に関心が高い。