「空振り三振OK」のマインド持てるか

「大谷選手のようなバッターになりたい!」、あるいは「メジャーで通用する長距離砲を育てたい!」と思う人がいれば、根鈴氏はどんなアドバイスを送るか。

「フィジカルを鍛えることは、何年も継続して行うべきです。日本人はやらなさすぎる。アメリカで衝撃を受けたのは、ウエイトトレーニングの場で『300できる?(How much bench three hundred?)』という言葉が挨拶のように飛び交っていたことです。

 日本ではペンチプレスで100kgを挙げられるかがひとつの目標になっていますが、アメリカでは300ポンド(=約135kg)。もう基準が違います」

 野球の動きに生きるか生きないかの前に、「アスリートとして全身を鍛えるのは当たり前」という文化を感じたという。

「あと、大谷選手に注目してほしいのは空振り三振の多さです。内野ゴロでも三振でもアウトはアウト。この考えを、日本の人が持てるかどうか。

 よく『ゴロを打てば何かが起きる!』と言いますけど、ゴロを打っているうちは、一生ホームランは出ません。三振したら、『ナイススイング! 次の打席が楽しみだ!』と周りも拍手を送ってあげればいいんです」

 これから、「第二の大谷」が出てくる可能性はどれほどあるか。

「うちの道場には、体が大きくて、バットを振れる未完の大器が通っています。でも、その多くが、自分のチームでは『ゴロを打て』と教わっていて、バッティングに悩んでいる。非常にもったいない。大谷選手の活躍によって、メジャーでホームラン王を獲ることが夢物語ではないことが証明されている。それが一番大きな出来事だと思います」

 この原稿を書いている最中(7月19日)、大谷選手が後半戦の1本目となる34号ホームランを放った。インローのボール気味のスライダーを、バットに縦に入れて、拾い上げた。根鈴氏のフェイスブックに解説コメントが掲載されていた。

「低めのボールに対して、角度と距離を出せるバットの当て方。バットを横にスイングするイメージだけでは不可能な打球です」

 大谷選手のホームランには、従来の日本的な打撃論を変えるだけのメッセージがある。

「第二の大谷」が出てくる可能性はあるか(時事通信フォト)

「第二の大谷」が出てくる可能性はあるか(時事通信フォト)

【プロフィール】
根鈴雄次(ねれい・ゆうじ)/1973年生まれ。日大藤沢高中退後、新宿山吹高を経て、23歳で法政大に進学。リーグ戦でサヨナラ本塁打を打つなど、代打で存在感を見せた。卒業後、単身渡米し、ルーキーリーグから3Aまでプレー。アメリカ、メキシコ、カナダ、オランダ、日本の独立リーグで活躍し、2012年に現役引退。2017年に「根鈴道場」を立ち上げ、若手の指導にあたる。

大利実(おおとし・みのる)/1977年生まれ。成蹊大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て2003年に独立。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、『高校野球界の監督がここまで明かす!投球技術の極意』(カンゼン/7月20日発売)などがある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
5月13日、公職選挙法違反の疑いで家宅捜索を受けた黒川邦彦代表(45)と根本良輔幹事長(29)
《つばさの党にガサ入れ》「捕まらないでしょ」黒川敦彦代表らが CIA音頭に続き5股不倫ヤジ…活動家の「逮捕への覚悟」
NEWSポストセブン
今年は渋野日向子にとってパリ五輪以上に重要な局面が(Getty Images)
【女子ゴルフ・渋野日向子が迎える正念場】“パリ五輪より大事な戦い”に向けて“売れっ子”にコーチングを依頼
週刊ポスト
テレビ朝日に1977年に入社した南美希子さん(左)、2000年入社の石井希和アナ
元テレビ朝日・南美希子さん&石井希和さんが振り返る新人アナウンサー時代 「同期9人と過ごす楽しい毎日」「甲子園リポートの緊張感」
週刊ポスト
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン