スポーツセダンの進化形
ステアフィールも興味深かった。スカイラインはステアリングにバイワイヤ方式を採用している。ステアリングがシャフトで転舵機構と直結されておらず、どういう舵の切り方をしたかをコンピュータが判定し、モーターで前輪の舵角を決めるというものだ。
ダイレクトに転舵機構とつながっていないと、路面からのキックバックが伝わらないのではないか、いろいろな道路を走るうちに人間の生理に反した制御が顔を出すことがあるのではないか──これまで筆者はスカイラインをテストコースを含め短距離試乗しかしておらず、その部分については疑念を払拭できずにいた。
しかし、今回の700kmあまりのドライブの中ではネガティブ要素を感じるどころか、機構は関係なしに素直に良いとしか思わなかった。どういうカラクリなのかは知らないが路面の状況やアンダーステアの度合いなどのインフォメーションは豊かに伝わってくるし、もちろん「あれっ?」と思うような動きなどひとつもない。
バイワイヤは自動運転を部分的にクルマに入れていくうえで今後重要になるであろう技術のひとつだが、それがスポーツセダンをコントロールする楽しみをいささかも損なわない水準に仕上げられていたのは非常に印象的であった。
3リットルV型6気筒ターボエンジン+パドルシフト付き7速ATのパワートレインは、速さの点では申し分ない。何しろ405馬力もあるのだから、あらゆる局面で不足を感じることなどあろうはずがない。驚くほどの速さである。
ただ、スロットルボディのプログラムやトラクションコントロール、横滑り防止装置などのセッティングをかなり安全側に振ってあるようで、405馬力をパワーセーブなしにドーンと発揮させるようなどう猛さは感じられなかった。
エンジン音も荒々しさ皆無。燃焼音はさすがに爆圧が高そうな雰囲気を醸しているが、金属の摺動音は驚くほど少なく、ルロロロロロ…という感じの澄んだサウンドである。エンジンルームからの遮音性が優れていることもあって、フルブーストでの加速時もエンジンサウンドは遠くから聞こえてくるかのようだった。半面、ビィーン、キィーンといった迫力サウンドを期待すると肩透かしを食う。