「特にインスタントラーメンのスープには、昆布、かつおぶし、帆立など、さまざまな食材のエキスが含まれています。これらのエキスは人工的に作られた調味料(アミノ酸など)と同様の『旨み成分』です。人の味覚は、この刺激の強い旨みに慣れてしまうと、天然のかつおぶしや煮干しで取っただしでは満足できなくなり、人工的に作られたエキスの味を“もっと食べたい”と求めるようになります」
インスタントでなければ構わないかというと、そうではない。店で食べるラーメンの中毒性について、糖尿病専門医の市原由美江さんが指摘する。
「しょうゆや塩など、いろいろな味がありますが、なかでもリスクが高いのは『とんこつラーメン』です。とんこつは豚の背脂を煮込んだスープが特徴ですが、動物性脂肪と麺に含まれる糖質を一緒に摂ると、血糖値が急激に上がります。すると、血糖値を下げるためにすい臓からインスリンが分泌される。
しかし、今度は血糖値が下がりすぎて、脳がすぐに空腹を感じ、本当にお腹が空いているわけではないのに食べたい欲求が抑えられなくなります」
動物性脂肪と糖質の摂りすぎは肥満の原因となり、あらゆる生活習慣病を引き起こす恐れがある。ラーメンが日本の「国民食」と呼ばれるゆえんは、その中毒性の高さゆえかもしれない。
とはいえ、依存性の高いものだからといって、一度食べただけでは食物依存症にはならない。大切なのは、習慣化しないことだ。大西さんはいう。
「カップラーメンを毎日食べていたら依存リスクは高まりますが、逆に言えば、回数が少なければ依存リスクは減少します。嗜好品として週1回程度なら食べても問題ありません」(大西さん)
危険な食べ物を食べる頻度を減らし、果物や野菜など原形が見えるものを多く食べることが中毒から逃れるコツだ。管理栄養士の麻生れいみさんが言う。
「加工食品の中毒になっている人は、自然の状態の食材をなるべく手を加えずに調理し、よく噛んで味を理解できるようになるトレーニングが必要です。
また、加工食品は栄養が極端に偏っているため、加工食品を好んで食べる人は栄養不足のことが多い。体に足りない栄養を求めて食欲が働きますが、さらに加工食品を食べても栄養不足は改善されません。そういう人は、サプリメントなどで不足した栄養を補給すると、中毒状態から抜け出せることもある」
※女性セブン2021年9月2日号