一方、自主映画ならではの良さについてはこう語る。
「『シュシュシュの娘』では福田さんが演じている主人公が中盤で変貌するというか、ある特殊なステージに突入していくんですけど、ああいうストーリーは商業映画だとなかなか企画が通せないと思いますね。ジャンルをガラッと変えることで驚きをもたらすような展開なんです。商業映画だと色々な人の意見が入って角が取れてしまうので、そういった角がある状態のままゴロッと出せるのが自主映画の良さだと思います。
政治風刺的なシーンも自主映画ならではといいますか。2020年に撮影した映画のドキュメンタルな側面、その当時の出来事が刻まれているといいなと思って入れました。商業映画になると自主規制も入ってきて、『このワードはやめておきましょう』という意見も出てくるんですけど、今回は僕だけが考えてやっているので止める人がいない。怒られたら僕のせい(笑)。自主映画はそういうすごくわかりやすい世界ですね」(入江監督)
入江監督「純粋に面白い映画がミニシアターの応援になる」
『シュシュシュの娘』では、公文書改竄や移民排斥、桜を見る会、あるいは緑色の上着を羽織った“小池市政”等々、政治や社会問題を風刺したシーンがユーモアたっぷりに描かれている。だがそれは単なる政権批判ではなく、むしろ娯楽作を追求した結果だという。
「去年から続いているミニシアターの自主規制はとても厳しくて、補償金も全然出ていない。だから各映画館が自分たちの判断で休業したり客席を減らしたりしなければならなくて。本当はもっと文化事業に対して国や地方自治体から補償があるべきだと個人的には思っています。
けれど、ただでさえ大変な現実で、生活が苦しい人も多い中で、映画館に行ってそういう説教臭いことを観せられるのは嫌じゃないですか。その意味では痛快な娯楽作を狙っているので、観終わった方には『スカッとした!』と言っていただけることがよくあります」(入江監督)